ふるさと納税の返礼品は3割以下が必須に!? 総務省VS自治体の行く末は?

「返戻品は寄付金の3割以内に」と、ふるさと納税の見直しを検討するニュースが話題を呼び、いまだに返戻品をめぐる“ふるさと納税騒動”は世間を騒がせています。「返礼品は今後どうなるのか心配になった」という声だけでなく、3割以内を守る自治体と無視する自治体の不公平感も増しているという意見も聞こえてきます。今後、返戻品の楽しみはなくなってしまうのでしょうか。詳しく解説します。

ふるさと納税とは?

ふるさと納税は、自分が選んだ自治体に寄付(ふるさと納税)を行った場合、2,000円を超えた部分の所得税と住民税が控除される制度です。年収や家族構成により2,000円の寄付で済む上限の額は決まっています。例えば年収500万円で独身や夫婦共働きの方であれば、6万1,000円が上限額の目安です。具体的には6万1,000円を寄付すると2,000円を差し引いた59,000円が所得税、住民税から差し引かれます。年収に応じた上限額の目安は、総務省のホームページからご確認ください。

何も返戻品をもらわなくても、税金の控除だけでメリットがある制度です。しかし、寄付金を集めたい自治体側の返戻品競争が過熱し、納税者にとっては2,000円の負担で豪華な地場産品を送ってもらえる、まるでインターネットショッピングの様相となっています。総務省は、返戻品の競争が行き過ぎることなく、ふるさと納税の本来の目的である、自身のふるさとや応援したい自治体に寄付をし、その寄付金が地方創生につながる使い道となるよう、自治体に見直しを求めています。

還元率3割以下を守らない自治体は制度から除外される?

2015年4月、総務省が全国の自治体に「返戻品にお得感を出しすぎないように」と通知を出して以来、「返戻品のあり方」について毎年通知が行われています。ふるさとに何ら関係のない商品券、旅行券といった金券類や電化製品、家具、アクセサリー、時計のように換金性や資産性が高いものは返戻品としないこと。返戻品を寄付の額の3割以内とすることなどが求められています。

総務省が2018年9月11日に発表した調査結果によると、通知前の2016年度には返戻割合が3割超の自治体が1,156団体と全体の約65%を占めていましたが、2018年9月1日時点では246団体と全体の約14%に減りました。返戻品の見直しを行った自治体は確実に増えており、2018年11月1日時点で返戻率が3割を超える自治体は25団体と激減しています。

返戻割合3割超の団体数の推移      

出所:「ふるさと納税に係る返礼品の送付状況についての調査(平成30年11月1日時点)」総務省自治税務局 資料P1より

総務省の通知を無視した自治体のふるさと納税はどうなっている?

2018年6月の聞き取り調査の結果「返戻品の割合が3割超、地場産品以外の返戻品、2018年8月までに見直しの意向なし、2017年度受入額が10億円以上」として公表されていた自治体は以下の12団体です。9月には見直し意向の調査結果も発表されました。

2018年9月総務省発表資料より筆者作成

度重なる通知にも関わらず、地場産品以外の返戻品、返戻割合3割超の返戻品を続けてきた自治体が公表されました。特に2017年度のふるさと納税受入額が135億円とトップだった泉佐野市に対し野田聖子総務大臣が「一部の突出した自治体の行動でふるさと納税が目指していた姿が失われてしまう。泉佐野市は最初の志を思い出してほしい」と名指しで指摘をしました。

これに対し泉佐野市は同じ9月28日の会見で『三種の神器と言われる「肉・米・蟹」など特産品資源が豊富な自治体と格差が生じるなか、寄付を集めるアイディアとして、格安航空券の運賃の支払いなどに利用できる「ピーチポイント」を導入。予想以上の相乗効果があり、返礼品を増やし、利用者が増えれば地元産品の需要も増加した。創意工夫を重ねながら返戻品を考えてきた経緯がある。ルールや基準は総務省が独断で決めるものではなく、地場産品を持たない自治体への配慮なども含め、広く意見を求めることが必要。すでに見直し済みの返戻品もあるが、3割超の根拠を示せば見直しを検討する』と述べました。

総務省からの通知を守る自治体には、不満が広がっています。たとえば大津市は、市民が市外の自治体に寄付をした額が市外からの寄付額を大幅に上回り、5億近い税収減となっています。大都市圏ではこういった現象は珍しくなく、それが地方への税金の再分配と考えることもできますが、一方では通知を守った「正直者がバカを見る」という不公平感にもつながっています。

ふるさと納税の高還元率競争は、終焉の兆し

「ふるさと納税」とは、あなたが応援したいと思う自治体に寄付ができる仕組み

地方創生など本来の趣旨に戻り過度な返戻品競争を避けたい総務省と、創意工夫でふるさと納税を集めたい自治体と、思惑が異なるふるさと納税は今後どうなるのでしょう。

野田聖子総務大臣は、返戻品を地場産品に限ること、返戻割合を3割以下にすることなどを法制化し、通知を守らない自治体についてはふるさと納税の対象から除外し、寄付をしても税金が控除されないよう制度を見直す方針を語りました。2018年12月には、2019年度の与党税制改正大綱を発表。2019年6月1日以降の寄付金から、総務省によるふるさと納税の法制化が始まることになりそうです。

こうした動きを受け、名指しされた泉佐野市は、1,000種類を超える返礼品を揃えていた公式サイト「泉佐野チョイス」を2019年1月31日で停止。ふるさと納税の受付を一旦終了することを発表しました。

しかし、2月1日から3月31日まで、“「100億円還元」閉店キャンペーン”として、返礼品に加えて納税額の最大20%をAmazonギフト券で還元するキャンペーンを実施。返礼品とAmazonギフト券を合わせると実質的な返礼率が5割を超えるケースもあり、「泉佐野市らしい」幕の引き方が大きな波紋を呼んでいます。

まとめ

以上、ふるさと納税の返戻品についての騒動を見てきました。納税者にとっては税金が戻りお礼の品が届くふるさと納税は、お得に各地の名産品を送ってもらえるネットショッピングのような感覚かもしれません。しかし、ふるさと納税が始まって10年という節目に、もう一度ふるさと納税本来の趣旨に立ち返ることが必要なのではないでしょうか。

ふるさと納税は自分が働いたお金で払った税金の使い道を選べる制度です。返戻品をもらうだけでなく、自分のふるさとや応援したい自治体の町おこしや子育て支援、高齢化対策など使い道を指定して寄付することもできる制度です。

返戻品はあくまで自治体からのお礼です。お礼の品に翻弄されるのではなく、ふるさと納税を通して各地の名産品を知り、その町の取り組みを知って応援をするきっかけとなるように、ひとりひとりが考えていける制度になってほしいと思います。

また、自分がふるさと納税を行うことで、自分が住んでいる自治体の税金が少なくなり、税収が減れば行政のサービスに影響が出ることもある、ということもあわせて知っておいてほしいです。そのうえで、人口や富が集中する大都市圏と地方の格差が少しでもなくなり、地方創生につながるよう、ふるさと納税が育ってくれることを願います。

(最終更新日:2019.10.05)
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