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共働き夫婦が増加している昨今。二人とも高収入の「パワーカップル」という言葉も話題になっています。パワーカップルの住宅購入動向や購入時に注意したい点、夫婦で住宅ローンを利用する場合の3つの契約形態などを、実際の相談事例を交えつつ、FPが解説します。

高収入共働き夫婦からの相談「ローン借入額が大きくなりそうで不安」

Q.都心からはちょっと離れていますが、通勤には便利なマンションの購入を検討しています。共働きで二人とも比較的高収入なので、ふたりでローンを組めば購入できそうですが、物件価格が高く、住宅ローンの借入額が大きくなりそうで不安もあります。注意すべきことを教えてください(30代/男性)

●ファイナンシャル・プランナー大林香世さんによる解説
A.今後、いつまで「高収入」が続くかを考えて、購入可能価格や借入可能額を考えましょう。高収入に慣れて家計が膨らんでいると、収入が減ったときに家計を引き締めるのが難しいことも覚えておきましょう。

パワーカップルとは

最近、新聞記事等で「パワーカップル」という言葉を目にすることがあります。「パワーカップル」の定義はさまざまですが、ニッセイ基礎研究所「パワーカップル」世帯の動向(1)では、「夫婦ともに年収700万円超の世帯を『パワーカップル』とすると25万世帯(全体の0.5%、共働き世帯の1.8%)が該当する」としています。「パワーカップル」は夫婦と子からなる核家族世帯が過半数を占めているそうです。

ご相談者のように、共働きで高収入の「パワーカップル」は、最近、購買意欲の高い世帯として注目されています。住宅購入の際には、夫婦で高額なローンを組むことも可能なので、「便利」だけれども、価格が高騰しているマンションなどの有力な買い手となっています。ただし、最近は、都心のマンションは価格が上がりすぎてパワーカップルにも手が届かない場合もあり、郊外ではあるが通勤に便利な、都心に比べると買いやすい価格の物件も人気となっているようです。

また、家計に余裕があるので、ぜいたくな買い物もできますし、共働きで忙しく時間が惜しい生活をしているので、外食や家事代行、高額家電など、時間を節約したり、生活を便利にしたりするための支出が増えるのでは…と注目されています。

夫婦で住宅ローンを組むなら、「もしも」まで考えて

さて、高収入のパワーカップルであれば、夫婦で住宅ローンを利用すれば高額な物件の購入も可能になるわけですが、ローンは現時点で借りられるか、返済できるかだけでなく、今後も無理なく返済できるかを考えて慎重に検討しましょう。

まず、夫婦のどちらかに死亡等の万一のことがあった場合を確認してみましょう。夫婦で住宅ローンを組むという場合には、収入合算ペアローンという方法があります。「収入合算」には、仮に主な借り手(主債務者)が夫(または妻)だった場合に妻(または夫)が連帯保証人となる連帯保証型と、主債務者同様、連帯債務者(夫または妻)も全額の債務を負う連帯債務型があります。

収入合算の場合

「収入合算」は、借り手は1人ですが、審査の際には夫婦2人分の収入で判断されるという方法です。収入合算の「連帯保証型」の場合には、主債務者の返済が滞った場合には、連帯保証人である配偶者にも返済義務が発生。「連帯債務型」の場合には、主債務者も連帯債務者も全額の債務を負うことになります。収入合算の場合、団体信用生命保険が利用できるのは主債務者のみ(【フラット35】は連帯債務者も対象)です。したがって、仮に団体信用生命保険には夫だけが加入していて、主債務者である夫が万一死亡した場合にはローン残高は保険金で完済されますが、妻が死亡した場合には保険金で完済されることはなく、残された夫のローン返済は続く事になります。

ペアローンの場合

「ペアローン」は、夫婦それぞれの収入で審査され、それぞれにローンを借り入れる方法です。団体信用生命保険には、夫・妻それぞれの借入額に応じて加入することができます。つまり、夫が死亡した場合には、夫分の残高は保険金で完済されますが、妻分の支払いは残ることになります。

つまり、夫婦二人でローンを利用した場合には、万一配偶者が死亡した場合には、ほとんどの場合、残された配偶者は返済を続けていかなければならないことになります。残された配偶者がどれくらいの返済を続けることになるのかを、借りる前に確認しておきましょう。また、残された配偶者が、そのローン返済を無理なく続けられるかも考えた上で、借入金額を考えるべきでしょう。

【表1 夫婦で住宅ローンを利用する場合の3つの契約形態】 ※夫が主な借り手となる場合

  収入合算(連帯保証型) 収入合算(連帯債務型) ペアローン
ローン契約の数 1 1 2
不動産の所有権 夫:あり
妻:なし
夫:あり
妻:あり
夫:あり
妻:あり
団体信用生命保険 夫:対象
妻:対象とならない
夫:対象
妻:対象外(フラット35の場合は対象)
夫:対象
妻:対象
住宅ローン控除 夫:対象
妻:対象とならない
夫:対象
妻:対象
夫:対象
妻:対象

次に、「万一のこと」がなくても、無理なく返済が続けられるかどうかを考えてみましょう。現在の「高収入」は今後も長く続くでしょうか。今後、子どもが生れたら、産休・育休を取得し、職場復帰後はしばらく時短勤務になりそう…という場合には、妻の収入が減ってしまいます。子育てのために退職を考えていたら、収入は夫分のみとなり、家計収入は大きく減少するでしょう。リストラ・転職・起業で収入が不安定になるか可能性があります。子育てだけでなく、親などの親族の介護のために、時短勤務や退職が必要になるかもしれません。また、家計収入の少ない時期に、子どもの進学資金の支出などが重なれば、あっという間に毎月に家計が苦しくなることも考えられます。

住宅ローンは、「借りられるだけ借りる」のではなく、将来のライフプランの変更を考慮して、稼ぎ手が一人になった場合にも無理なく返済できるくらいの返済額になる借入金額で利用したほうが安心でしょう。
たとえば、表2のように、夫婦ふたりで合計5,000万円のローンを借りた場合の毎月返済額は月額15.4万円。夫婦二人で1,400万円の収入があれば返済にも余裕があるかもしれませんが、何らかの事情で収入が一人分(半分)の700万円になった場合には、毎月15万円を越すローン返済は家計の負担になりそうです。

【表2 借入金額ごとの住宅ローン返済額】

金利1.5%、35年返済、元利均等返済、毎月返済のみ(ボーナス返済なし)の場合

借入金額 毎月返済額 年間返済額
5,000万円 15.4万円 184.8万円
4,000万円 12.3万円 147.6万円
3,000万円 9.2万円 110.4万円

※上記試算は、住宅金融支援機構:ローンシミュレーション「借入希望金額から返済額を計算」より

パワーカップル家計の注意点

そのほか、高収入の家庭は支出額も膨らんでいる場合が多く、膨らんだ家計を引き締めることはなかなか難しいことも。家計に余裕があると、特に細かく考えずに、外食や旅行、買い物などに意識せずにお金を使ってしまいがちです。また、お子さんを小さいうちから私立学校に進学させた場合には、そのまま大学卒業まで私立学校に進ませる場合も多く、教育費支出は膨らんでいきます。何らかの事情で収入が減った場合には、思い切って生活を見直し、支出に優先順位をつけないと、生活が成り立たなくなる可能性もあります。

また、共働きでも、60代、70代になると退職し、公的年金を収入の柱とした生活に入るでしょう。その際、現役時代と同様の生活をしていれば、当然、公的年金による収入だけで家計をまかなうことはできません。老後も現役時代と同様の生活を続けたければ、早めに老後資金の不足資金を準備することが必要になりますし、老後資金が準備できなければ、老後は生活習慣を大胆に見直す必要がでてきます。

このように、高収入の共働き世帯は、自由に使える金額が多く、希望通りの生活を送りやすいといえますが、家計支出が膨らみがちなので、収入が少なくなった場合の家計へのダメージは大きくなります。将来の収入の見込みや収入が少なくなった場合にはどうするのか、対策も考えながら、住宅購入を含むライフプランを考えられるとよいでしょう。

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この記事の執筆者
大林香世 ファイナンシャル・プランナー

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、日本FP協会CFP(R)認定者

ライフプランから見て無理のない住宅購入計画やローンプラン、保険や相続、資産運用などの相談支援業務を行っている。各種セミナー講師、新聞・Webサイト等へのコラム執筆でも活動中。

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