この記事は、約4分で読めます

草刈正雄さん演じる、佐野道太郎はカタブツで、ちょっぴりマイペース。60歳で長年勤めてきた文具メーカーを定年退職します。自由を手にしたつもりでしたが、長年、家事を引き受けてきた一人娘・弓子(木村文乃)から「佐野家の新しい“主夫”は、お父さんです」と宣言されることに。映画『体操しようよ』(11月9日公開)は、どの家庭でも起こりえる、共感度の高い物語。すれ違う父と娘ですが、室内の様子からは、ふたりの「家」への想いが伝わってきます。この作品から日本らしい家屋の魅力がさらにすてきになるヒントを見つけました。

30代に人気の北欧デザインでモダンな部屋に

佐野家が暮らす家は、千葉県の房総・館山にある、ごく普通の二階建ての一軒家です。佐野道太郎の妻は18年前に先立ち、代わりに一人娘の弓子が中学生の時から佐野家の主婦を勤めてきました。

父親の退職をきっかけに、娘、弓子は「親離れ」を宣言します。父、道太郎も、「子離れ」するつもりですが……。©2018「体操しようよ」製作委員会

物語の始まりの朝食シーンは、佐野家の雰囲気をよく伝えています。佐野家は木をふんだんに使った温かみのある典型的な日本の家屋です。奥に見えるカーテンの柄や赤い食器がちょっとおしゃれで、「ひと味ちがう」印象を与えます。「主婦」である弓子は、お父さんを中心に考えて、家を大切に思ってきたのです。

ダイニングテーブルで黙々と朝食を食べる主人公、佐野道太郎と娘・佐野弓子。いつも顔を合わせている家族だからこそ会話レス? きちんと手作りされた朝食が、お揃いのプレートに載り、円形の食器、赤いココットが印象的です。弓子のコーヒーカップはカラフルで、道太郎はグリーンがかった青色と、こちらはそれぞれ、気に入っているものを使っている様子ですが……。©2018「体操しようよ」製作委員会

「菊地健雄監督から、佐野家の暮らしはこだわりのある雰囲気にしたいとの要望がありました。撮影に使う住宅が決定した後、監督の要望に対し、どのように応えるかが美術の仕事になります。道太郎の妻はすでに亡くなっていますが、趣味をもった素敵な女性という設定です。家の主婦を娘の弓子が受け継いできたら、どんな家になるのか……。18年間の積み重ねを感じられる部屋で、30歳の弓子が選んだという設定で、今、30代にも人気が高く、シンプルでありながら、印象に残る北欧デザインのカーテンを選びました」(美術 安藤真人さん)

北欧デザインの代表「ボラス・コットン」のカーテンが印象的

グリーンの曲線が印象的なカーテンの生地は、スウェーデンに本社がある生地メーカー、ボラス・コットン(boras cotton)製です。ボラス・コットンは、スウェーデン南部にあるボラスという町で誕生し、「北欧デザイン」の中心的存在です。花や鳥など自然から着想を得たデザインや、幾何学模様を採り入れたデザインが特徴的。独特の色合いと、モダンでありながら、温かみを感じるデザインで、世界中で高い人気を誇っています。佐野家のカーテンの柄には「ロック(Rock)」という名前がついています。なだらかな曲線が個性的で、一見、主張が強そうですが、2種類の緑色が森を想像させ、木製のテーブルなどとも相性がいいのです。

壁紙が地味なら、大胆な柄のカーテンで気分転換

佐野家のある街には、海があり、商店街があり、そして人々が集うすてきな喫茶店「オリビエ」があります。仕事人間だった道太郎は、オリビエの存在をこれまで知らなかったようですが……。

父と娘のけんかに、街のマドンナののぞみ(和久井映見)も特別な思いがこみ上げて……。©2018「体操しようよ」製作委員会

オリビエも戸建てで、店舗と住まいがいっしょになっています。グレイッシュブルーのドアと腰壁が印象的。ドアの左右の窓には、白いレースとマスタード色のカーテンがかかっています。

「オリビエは、もともと腰壁がピンク色だったところを、監督と話し合ってくすんだグレイッシュブルーで落ち着いた印象にしました。窓にかかっているカーテンは、二重になっていて、補色のマスタード色と、うるさくなりすぎないように、白のカーテンを選びました。
日本では、柄のある壁紙が少なく、多くの家が無地に近い壁になっていると思います。時々、思い切ったデザインのカーテンをかけると、部屋の雰囲気ががらりと変わりますよ」(美術 安藤真人さん)

生活の中心を家に移した道太郎は、やがて海辺の公園のラジオ体操に参加するようになるのですが、果たして無事に「子離れ」できるのでしょうか。

『体操しようよ』は、実はカーテンを使い、視る人の感情にある印象を残しています。物語にたくさん笑って、泣きながら、親子の気持ちとカーテンの関係にも注目してみてください。

『体操しようよ』
監督:菊地健雄
脚本:和田清人、春藤忠温
出演:草刈正雄、木村文乃、きたろう、渡辺大知、和久井映見
2018年11月9日(金)より全国ロードショー
公式サイト:taiso-movie.com
©2018「体操しようよ」製作委員会

関連記事

住宅ローンをご検討中の方

この記事の筆者
三村路子 ライター

一般雑誌で映画や舞台など、カルチャー情報の連載。そのほかティーン向けのまんが原作、シナリオ執筆活動や、広範囲な取材・執筆活動も精力的に展開。第7回WOWOWシナリオ大賞優秀賞受賞(共作)、あいち国際女性映画祭2018 短編フィルム部門 観客賞受賞(共同脚本)。

おすすめ記事