この記事は、約11分で読めます

注文住宅を建てるなら、皆さんはどこに依頼しますか? ハウスメーカーや工務店を思い浮かべた方が多いのではないでしょうか。ハイアス・アンド・カンパニーの調査(「“建築家と建てる家”に7割強が憧れるも、実際に依頼検討は約1割」:PR TIMES)によると、建築家と建てる家に7割以上の人が憧れているものの、実際に依頼を検討した人は1割程度という結果が出たそうです。その理由として多く挙がったのが、「設計料が高い」「自分に合う建築家とどう知り合えばいいかわからない」といった声。実際のところはどうなのか、「Airhouse」を主宰する、建築家の桐山啓一さんにお話を伺いました。

建築家に依頼する家づくりの特徴は?

そもそも、建築家に依頼する住宅は、ハウスメーカーや工務店に依頼する場合と比べてどのような違いがあるのでしょうか? 大きな特徴は以下の通りです。

【特徴比較一覧】

  建築設計事務所 ハウスメーカー 工務店
設計の自由度 施主の希望に沿ってゼロからプランニングしてもらえる 標準仕様をベースとして計画。企画から外れる希望はオプション扱いとなる 明確な標準仕様はないものの、得意な工法を勧められるケースが多い
設計・施工・監理 設計・監理のみ依頼。施工は別会社と直接契約し、施主の代わりに施工を監理する 設計・施工・監理とも自社で行う。個別の費用は分からないことが多い 設計・施工・監理とも自社で行う。個別の費用は分からないことが多い
敷地条件 変形敷地や旗竿地、高低差がある土地でも柔軟にプランニングしてもらえる 整形地ではない場合、ハウスメーカーでは対応できないケースもある 工務店ごとに得手・不得手があり、整形地以外は対応できないケースもある

建築家が建てる家はフルオーダー。究極の自由設計!

「家の中にシンボルツリーを植えて、室内で自然と触れ合える家にしたい」といった要望にも、柔軟な発想で応えてくれる(※写真事例は大口の家より)

建築家に家づくりを依頼する1番のメリットは、設計自由度の高さでしょう。ハウスメーカーに依頼する場合、ある程度商品化された枠組みの中で選択をする形になりますが、建築家に設計を依頼する場合、「標準仕様」は存在しません。ゼロベースから、要望に合わせてフルオーダーメイドで設計してもらうことができます。そのため「家づくりにとことんこだわりたい」「建築家と対話しながら時間をかけて家づくりを楽しみたい」という人にとっては最善の選択肢となるでしょう。

建築家は設計・監理に専念。施工は別途工務店が行う

建築家に家づくりを依頼する場合、「建築設計・監理の委託契約」を結び、プランニングの他、施主に代わって建物の見積もりや工事の進捗状況などをチェック。図面通りに建てられているか、施主の立場に立って監理してくれます。施工に関しては別途、工事会社と契約します。工事会社の選定は施主が自分で行うこともできますが、建築家がお勧めするいくつかの会社で相見積もりをとり、比較して選ぶケースが多いようです。

ハウスメーカーや工務店の場合は設計・施工が一体で、監理も自社で行います。建築設計事務所に依頼する場合、実際に建てる工事会社とは利害関係にないため、厳しい目で監理が行われます。つまり、工事内容や費用の透明性が高い環境と言えるでしょう。

土地条件が厳しくても、固定概念に捉われず施工してくれる

現在Airhouseで進行中のプロジェクト「八事の家」があるのは、超急勾配の傾斜地。高さ制限、建ぺい率がとても厳しい敷地のため、4本の脚で斜面から浮かせて接地面を最小限とし、屋根を湾曲させることで高さ制限をクリアしている

好立地の土地を限られた予算で購入しようと考えた場合、極端な狭小地や旗竿地、傾斜地といった割安な土地に惹かれることもあるでしょう。しかし、いざ購入してから「どのハウスメーカーにも断られてしまった」なんて声を聞くことも。多くの建築設計事務所では、特殊な敷地形状というハンデを逆手にとって、プラス要素に変えるプランを提案してくれます。柔軟な発想とアイデアにより、土地の制約をクリアして快適な住まいを提案してくれるでしょう。

建築家に依頼する家づくりが向いているのはどんな人?

雑誌などで建築家が建てた家を見て「こんなところに住んでみたい」と、漠然と憧れを抱いている方は多いと思います。でも、実際にアポイントをとって建築家との家づくりを実現させた人は少数派です。ハードルが高いと感じがちですが、実際にところはどうなのでしょうか? 「Airhouse」を主宰する、建築家の桐山啓一さんに、「建築家と家を建てる」という選択が向いているのはどんな人なのか尋ねたところ、

桐山さん:
「暮らしを大切にされている方」や「暮らし方にこだわりを持たれている方」などが向いていると思います。

とのこと。前述の通り、建築家との家づくりには「設計の自由度が高い」「分離発注で透明性を保ちやすい」「土地条件が厳しくても対応してもらいやすい」といった様々なメリットがありますが、デメリットがない訳ではありません。ハウスメーカーのように規格化された商品をベースに肉付けしていく作業に比べて、ゼロから家づくりをするのは家を建てる側にとっても、建築家にとっても大変な作業です。労力だけでなく、時間もかかります。「こだわりを満たしたい」という強い気持ちがなければ、家づくりを楽しむよりも、負担に感じてしまうかもしれません。

建築家に設計を依頼して建てる家の予算は?

建築家に依頼する場合も、一般的な家づくりと同様に諸費用が掛かる。Airhouseのウェブサイトで、おおよそのコストを把握できる

「建築家が建てる家は高そう」というイメージを持っている人多いようですが、実際のところはどうなのでしょうか? 建築設計事務所に依頼する場合は一般的に、総工費の10~20%程度の設計料を支払うケースが多いようです。「その分の費用が、ハウスメーカーや工務店に依頼するよりも余分にかかる」と考える方が多いのですが、実際には工事費にアドオンされています。

また、建築設計事務所では支払った費用のほとんどが直接建設費用に充てられますが、ハウスメーカーの場合は大手になるほど、CMや住宅展示場などの広告宣伝費や営業マンなどの人件費に多大な費用を割く傾向にあります。「ハウスメーカーの方が、大量仕入れによって部材や設備のコストダウンを図りやすい」いった側面もあるものの、「建築家の家=高い」という図式は、必ずしも当てはまらないでしょう。

では、限られた予算内で建築家との家づくりを実現するにはどうすれば良いのでしょうか?

桐山さん:
まずは、可能であれば建売住宅や激安ハウスメーカーの仕様を勉強して、最低限の設備や仕様を把握して下さい。その上で、どこにお金をかけて、どこを抑えるのか、メリハリを利かせることがポイントです。延べ床面積が増えるほどに建築費用が上がりますから、広い家を望むよりも、過不足のないスペースを念頭に計画することも大切です。また、安価な素材を用いて建築費用を抑える場合であっても、組み合わせや幾何学の作り方で芸術性を高めることで、ローコストに見せない工夫も必要です。

叶えたい希望の優先順位を整理するところからスタートすると良さそうです。

建築家が、コストを抑えながら建てる家はどんな家?

ここで桐山さんに、実際にコストを抑えながら施工した実例をお聞きしました。まずは、広さや間取りの工夫でコストを抑えている施工例です。

桐山さん:
仕事場兼住まいとしてデザインした「大口の家」は、3方向が道路に面する角地という恵まれた立地にあります。しかし、南北に細長い敷地をいかに活用するかが課題でした。ご提案したのは、五角形の建物形状にするプラン。コーナーを全て曲面とすることで、空間的な広がりを感じさせ、包まれるような心地よさをもたらします。
1階はエントランスとLDK、水廻り、2階はご主人の仕事部屋と子ども部屋、寝室、ウォークインクローゼットという間取り。それぞれ必要最低限の広さで建築コストを抑えていますが、間仕切りの少ない開放的な空間のため、狭さを感じることはないでしょう。

五角形にして壁面を増やすことで、家具を配置しやすく。十分な採光も望める
2階にはWebデザイナーのご主人が仕事をするスペースが。吹き抜けを通じて1階の気配を感じながら過ごせる(※上記写真2事例は大口の家より)

ゼロから建てるのではなく、中古住宅を活用することでコストを抑える方法もあります。

桐山さん:
「猫洞通のリノベーション」は古い和風の木造住宅を補強しながら改装し、アパレル雑貨店舗兼住宅としました。間取りを一新して現代の生活に合わせつつ、昔ながらの素材感を残してどこかノスタルジックな空間に仕上げました。
骨組みの状態まで解体し、間仕切壁をできるだけなくすことで、東西の採光を両側から取り入れて明るく、開放感も高めています。築年数が経過した建物のため、構造計算をして必要な補強を行っていますが、梁や柱、配線は敢えて露出。建築コストを抑えつつ、デザインとして昇華させています。

毎週のように人が集まるため、大きなダイニングキッチンをデザイン。キッチンを中心とした大きなワンルームのような空間に仕上げている
既存の4本の柱を貫通するように棚を製作。コストを抑えて仕上げつつ、キッチンを象徴する空間としている(※上記写真2事例は猫洞通のリノベーションより)

最後は、可変性のある間仕切りを設けた施工例です。

桐山さん:
「江松の家」は、「将来の家族の変化に応じて間仕切りを変えられるようにしたい」というご希望のもと、柱のない2層のワンルーム空間に。どこでも床を貼ったり剥がしたりすることができ、間仕切りの設置や撤去もしやすいように、グリッド状の梁だけで構成した空間を設計。将来の間取り変更を行いやすくしました。現在はお子様が小さいため、カーテンで緩やかにエリア分けをしています。構造体仕上げとすることでコストを抑えていますが、家族の成長と共に間取り変更にも対応できる、フレキシブルな住まいです。

柔らかな光が家中に満ち、どこにいても家族の気配を感じられるようなワンルームの空間に
この家を支える重要な構造体である大きな梁は、そのまま露出。仕上げのコストを抑えつつ、開放感のある空間に仕上げている(※上記写真2事例は江松の家より)

1億円以上の建築費用を掛けることも!? 高額な住宅は何が違う?

ここまで、ローコストの住宅をご紹介してきましたが、建築家に依頼する家の中には高額な住宅も存在します。Airhouseが手がけている住宅の平均は、3,000万円~3,500万円前後。2,000万円台の住宅もたくさんあれば、5,000万円~1億円を超えるような住宅もあるそうです。1億円を超えるような住宅となると、どんなところが変わってくるのでしょうか?

桐山さん:
高いということは、それなりの職人技や仕事が多く含まれているということです。例えば、良い素材を使った料理は当然美味しいですよね。「採れたて」「入手困難」「体に良い」「長い年月がかかっている」など理由は様々ですが、素材自体が高価な場合です。
その素材に料理人の手が加わり、ひと手間加えると、唯一無二の美味しい料理ができますよね。建築も同様で、階段ひとつとっても、ドアひとつとっても、色々な場所でそのように考える場所が無数に存在します。住み手のこだわりに応じて、金額に際限はないといっても良いでしょう。ただし、無駄に高く見積もられている、安っぽいのに高いといった「ものの割に高い」状況は避けたいもの。そうならないよう、目を光らせてチェックしています。

自分に合う建築家は、どうやって探せばいいの?

最後に、建築家との家づくりは「誰にどうやって依頼したらいいのか分からない」という方に向けて、自分に合う建築家の探し方を伺いました。

桐山さん:
まずは、雑誌やインターネットで建築家の実績や作品を調べてみて下さい。その建築家が自分の理想を実現してくれそうか、ある程度予測できると思います。
気になる成功例が見つかったら、いきなり建築設計事務所に依頼をするのではなく、まずは問い合わせをしてみて下さい。その間のやり取りを通じて、建築家との相性が見えてくると思います。建築家によって、住まいに対する想いや設計スタイルは大きく変わります。もし、最初から言い合いになってしまうようでしたら、相性が良いとは言えないですよね(笑)

ハウスメーカーを選ぶ際、相見積もりをする方が多いでしょう。建築家を探す際にもコンペ形式でプランを提案してもらう方法があります。しかし桐山さんは、コンペ形式はあまりオススメできないと言います。

桐山さん:
家を建てるということは、想像よりも大変な作業です。依頼される場合は、依頼する建築家を決めてから声をかけたほうが良いでしょう。と言いますのも、とにかく数をこなしたいスタンスの建築家や確保している仕事量が少なく困っている建築家はコンペを喜ぶこともありますが、忙しい人気建築家にはコンペとわかった時点で断られてしまうこともあります。何よりも、コンペにする時点で「設計者は誰でも良い」というスタンスを表明してしまうことになりますので、本腰で臨んでもらえないこともあると思います。

「デザイン性に特化した住まいづくりがしたい」「自然素材に特化した家をつくりたい」などこだわりが強い方はもちろん、特殊な敷地形状に家を建てたい人や、一般的ではない間取りを希望している人にも、建築家は様々な可能性を提案してくれます。新築の依頼先を迷っている方は「建築家に家を建ててもらう」という選択肢も加えてみてはいかがでしょうか?

取材協力:Airhouse

関連記事

カンタンな質問でおススメ物件診断

住宅ローンをご検討中の方

この記事の筆者
斎藤若菜 住宅ライター

ラジオパーソナリティを経てフリーライターに。住宅・インテリア・不動産分野を中心として、介護・グルメ・トラベルなどのジャンルでも執筆。リフォームや注文住宅関連の住宅情報誌をはじめ、雑誌、書籍、新聞、インターネットなどのさまざまな媒体で取材・執筆を手掛けている。ARUHIマガジンでは、「住宅購入者ストーリー」などを担当中。

おすすめ記事