標準装備された分譲地も登場! “戸建て向け宅配ボックス”の最前線をレポート

この春、埼玉県三郷市で分譲がスタートした住宅街が、ある設備を標準で導入したことで業界の視線が集まっています。その装備とは戸建て宅配ボックス。今、戸建て向け宅配ボックスは、住宅設備として消費者から熱い視線を集めています。その背景にあるものは何か? 戸建て向け宅配ボックスの最前線をレポートします。

宅配ボックスが標準で装備された分譲住宅街が誕生

埼玉県三郷市の分譲住宅街『ママトコ三郷中央』では、この春より分譲がスタート。この住宅ではこれまでにない試みがありました。それは全37棟で宅配ボックスを標準で装備させたことでした。

各棟とも、歩道に面した位置に高さのある門柱を設置。その門柱の上部にカメラ付きインターホン、中程にメールボックス。そして下段に宅配ボックスを収めています。(下記写真参照)

宅配ボックスとしてはかなりスマートな印象ですが、奥行きがあり、「350ミリリットル缶ビール、24本入りケースが収まるサイズ。宅配ボックスとしてはベーシックな容量」(開発を担当した企業のスタッフ)とのこと。

実は今、戸建て向け宅配ボックスが市場で大きな話題になっているのです。

『ママトコ三郷中央』は、秋葉原とつくばを結ぶつくばエクスプレス「三郷中央駅」を最寄り駅とする住宅街。門柱型宅配ボックスは、総合住宅メーカー「ポラスグループ」、宅配ボックスメーカー「ナスタ」、インターホンメーカー「アイホン」、電設資材商社「因幡電器産業」の4社共同企画によるもの。門柱の上部にカメラ付きインターホン、中程にメールボックス、そして下段に宅配ボックスを設置。

その火付け役になったのがパナソニック。2017年春にパナソニックが戸建て向け宅配ボックスの受注が5倍以上と急増。生産計画を大きく上回る事態に、その直後に予定していた新製品の発売を延期したことがありました。この背景にあるものは、配達業界の急変です。

ネット通販は拡大の一途。一方、宅配業界は深刻な人手不足に至っており、加えて共働き世代も増え、不在がち。在宅であっても、メイクしていない、子どもを寝かせている途中など、対応出来ない理由も多く、このための再配達率も高まっていました。再配達率が増えることは、宅配業者の人手不足にさらなる拍車をかけるだけでなく、CO2排出問題にも関わってきます。宅配ボックスは、この解決手段として注目されているのです。

宅配ボックスが欲しいと言う戸建て住宅のユーザーが急増。効果もてきめん!?

不動産情報サービスのアットホームが一戸建て住宅に住む住人を対象にしたアンケートによれば、戸建て向け宅配ボックスを欲しいと思う人の割合は70.5%にものぼっています。ところが、現状の普及率は「1%に満たない」(業界関係者)といわれています。

新築マンションでの普及率はほぼ100%といわれる宅配ボックスですが、戸建て向けは言わば手つかず状態の市場だったのです。

またパナソニックは2017年に、福井県あわら市内106世帯を対象に実証実験を実施。その結果、宅配ボックスを設置する前49%だった再配達率が、宅配ボックスの設置後8%に激減したと発表。宅配ボックスの設置は、忙しい共働き世代や、宅配便の再配達に多少なりともストレスを感じる人の懸念を解消するだけでなく、宅配業界が抱えている諸問題を解決する手段として、大きな効果があるとみられているのです。

そこで先のパナソニックを初め、様々な企業による参入が相次いでいるのです。今回『ママトコ三郷中央』の分譲を進めるポラスでは、同社として初の自動録画機能付宅配ボックスを標準装備。同社ではこれからの住宅の必需品になると考えています。

“戸建て向け”宅配ボックスの課題は?それを解消する各社の機能に注目!

戸建て向け宅配ボックスは便利で設置したいけれど、多くの場合道路に面しているだけに、セキュリティー面なども気になります。そこで、今話題の戸建て向け宅配ボックスには、その対策も図られています。

『ママトコ三郷中央』の宅配ボックスも不安を解消する仕組みが盛り込まれていました。宅配業者が、配達時にインターホンを押すと、インターホンに搭載したカメラを通じ、配達員の様子を動画で自動撮影。室内のモニターでも表示が可能です。また広角レンズを採用しており、門柱の下段にある宅配ボックスに荷物を入れるためにしゃがんだ状態でも、その様子を記録できるのです。また、インターホンを押さなくとも、宅配ボックスの扉を開けた時点で自動録画は機能するため、いたずらや窃盗にも対応します。

また、扉を開けた中に、印鑑を置いてあり、配達員は伝票に受領印を印し、中段のポストへ投函すると配達は完了。暗証番号を設定して扉を閉めると、自動的にロックがかかり、その後は管理する居住者が荷物を取り出さない限り、開錠されない仕組みです。

「これでいつ、だれが、宅配ボックスに荷物を届けたのかがわかり安心です」(ポラス関係者)

インターホンのカメラで訪問者の顔を撮影。カメラで写す様子は室内のモニターでも表示。動画も自動的に記録する。
宅配員がしゃがんだ状態でも映し出せる。室内の操作で、ズーム操作も可能。

もちろん、他の宅配ボックスにも様々な工夫が施されています。

パナソニックの『コンボーエフ』は、シンプルな作りが着目されました。従来のメールボックス(郵便受け)とほぼ同じサイズを採用。荷物を入れれば自動で施錠されることはもちろん、伝票への受領印も対応しています。しかも、電機仕様を排除することで設置工事も手軽にし、従来のポストからの置き換えも可能になりました。

パナソニック 戸建住宅用宅配ポスト『コンボーエフ』130,140円。設置しやすさが受け入れられたヒット商品

宅配ボックスは、大きさも課題になります。飲料水や米なども通販で購入する人が増える中、より大きな荷物に対応する宅配ボックスへの需要も高まっています。宅配ボックスの老舗メーカー日本宅配システムの『NK』は、先進の宅配ボックス。上下2段式で下段の大型ボックスにはゴルフバックも収まるサイズ。万が一、子どもが誤って入り込み、ロックされないよう、人感センサーを装備。センサーが人を感知すると、ロックされないような安全設計を採り入れています。高価ですが、販売台数は年々倍増しているそうです。

日本宅配システム『NK』760,000円(税別)。上下二段式で、最大で一度に2件の荷物の受け取りが可能。

また今後は、クール便などにも対応するなど、より幅広い商品展開が期待される宅配ボックス。住宅設備では今もっとも注目されているアイテムであることは間違いありません。

お問い合わせ先/ポラスパナソニック日本宅配システム

(最終更新日:2019.10.05)
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