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住宅を取得するときに、親から経済的な支援を得られる場合があります。親からの支援が期待できれば、多くのお金を住宅にかけることができます。あるいはその分、自分の負担を軽減できます。親に支援をしてもらう方法はさまざまですが、主な方法や資金計画のポイント、登記時の留意点などについて解説します。

住宅取得時の親からの経済的支援の方法4つ

住宅取得時に、親から経済的支援を受ける主な方法は、次の通りです。

【1】親から資金の贈与を受ける
【2】親から資金の融資を受ける
【3】親が直接資金を負担する
【4】親の土地に住宅を建てる

親からの支援が得られれば、欲しい住宅を取得するために不足する資金をカバーすることができるでしょう。または、支援を受けた分だけ住宅ローンの借入額を抑えられ、自分たちの資金を子どもの教育資金や夫婦の老後資金などに振り向けることができます。夫婦それぞれが自分の親から支援を受けられれば、ゆとりのある資金計画にすることもできるでしょう。

どんな方法でどの程度の支援を得ることができるかは、親の経済状況などによって異なりますが、使う方法は、1つでもよいですし、複数を組み合わせることもできます。

上の4つの方法と注意点などについて、ひとつひとつ見ていきましょう。

【1】親から資金の“贈与”を受ける

住宅取得時に親から資金援助を受ける最も一般的な方法が「贈与」です。なかでもよく活用されるのが、「暦年課税制度」と「直系尊属からの住宅取得等資金贈与の非課税制度」です。いずれも贈与を受けた人は、その資金を自分のお金として自己資金に組み入れることができます。

暦年課税制度

暦年課税制度は、毎年1月1日から12月31日までの1年間に受ける贈与の額が1人あたり110万円までは贈与税が非課税になる仕組みで、贈与をする人に制約はありません。つまり、夫婦の場合、実の親からでも義理の親からでも贈与を受けることができます。夫婦それぞれが贈与を受けると、1年間で1人110万円まで、夫婦2人で合計220万円までが非課税になります。資金の用途にも制約はなく、住宅や土地の取得費用にも、取得後の家具や家電の購入費用にも充てることができます。贈与を複数年に分けると、時間をかけて多くの資金の贈与を受けることができます。たとえば2年間かけて、夫婦2人で合計440万円まで非課税で贈与を受けることなどができます。非課税の範囲であれば、申告の必要もありません。

暦年課税制度は、まとまった金額の贈与を一括で受ける場合、高い贈与税がかかることに注意が必要です。たとえば、1年間に1,000万円の贈与を受ける場合、1,000万円から110万円を引いた890万円に対して贈与税がかかります。実の親や祖父母からであれば、税率は30%、控除額は90万円のため、贈与を受けた人は翌年の3月15日までに税務署に贈与税申告をして177万円の贈与税を払わなければなりません。義理の親などからの場合、税率が40%、控除額が125万円となるため、贈与税額は231万円になります。

直系尊属からの住宅取得等資金贈与の非課税制度

直系尊属からの住宅取得等資金贈与の非課税制度は、住宅取得のための資金に用途が限定される代わりに、まとまった金額の贈与を非課税で一括して受けることができる仕組みです。ただ、この制度は適用要件が細かく決められています。贈与する人は実の親や祖父母に限られ、贈与を受ける人は贈与を受けた年の1月1日時点で20歳以上でなければなりません。また、贈与を受けた年の翌年の3月15日までに取得した住宅に居住すること、またはその日以後遅滞なくその住宅に居住することが確実であると見込まれる必要があり、さらに、その日までに必要書類を添付して贈与税の申告をする必要もあります。その他、取得する住宅の要件も定められています。

非課税限度額は以下の通りです。

イ 下記ロ以外の場合

住宅用家屋の取得等に係る契約の締結日 省エネ等住宅 左記以外の住宅
~2020年3月31日 1,200万円 700万円
2020年4月1日~2021年3月31日 1,000万円 500万円
2021年4月1日~2021年12月31日 800万円 300万円

ロ 住宅用の家屋の新築等に係る対価等の額に含まれる消費税等の税率が10%である場合

住宅用家屋の取得等に係る契約の締結日 省エネ等住宅 左記以外の住宅
2019年4月1日~2020年3月31日 3,000万円 2,500万円
2020年4月1日~2021年3月31日 1,500万円 1,000万円
2021年4月1日~2021年12月31日 1,200万円 700万円

※「省エネ等住宅」とは、一定の省エネ等基準を満たした住宅のこと

たとえば、2018年10月に消費税率8%の住宅を取得する契約を締結し、その住宅が省エネ等住宅の場合、実の親から1,200万円までの贈与を受けても贈与税がかかりません。夫婦それぞれが、実の親から贈与を受けることができれば、合計2,400万円までの贈与が非課税になります。

比較的少額の贈与を非課税で受ける場合は暦年課税制度、多額の贈与を非課税で受ける場合には直系尊属からの住宅取得等資金贈与の非課税制度が適していると言うことができますが、2つの制度を併用することもできます。いずれの制度も贈与を受ける人の自己資金を増やすことができる仕組みです。

【2】親から資金の“融資”を受ける

親からお金を借りる方法もあります。借りる金額に制限はありません。借りる人の要件も決まっていません。誰から借りても構わないため、夫が妻の親から借りることもできます。

なお、親族間のお金の貸し借りは、何かとルーズになりがちです。“ある時払いの催促なし”にならないように、当事者間で、金額、金利、返済期間、返済方式などの返済条件を明記した融資契約書を作成し、契約の締結をしておいたほうがいいでしょう。そして、返済は銀行振込など、履歴が残る方法で行ったほうがいいでしょう。融資契約書や通帳などを税務署に提出する必要はありませんが、税務署から問い合せがあったときに、借りたお金であることや定期的に返済していることを証明できない場合、暦年贈与とみなされて多額の贈与税の支払いを迫られる場合があります。

金融機関からの住宅ローンと親族からの借り入れが重なると、返済額が大きくなって家計に重い負担がかかる恐れがあります。将来のライフイベントにかかる費用のことにも配慮し、返済能力を勘案して、親族からといえども無理な借り入れをしないほうがいいでしょう。なお、親族からの借り入れは「住宅ローン減税制度」の対象にはなりません。

【3】親が直接“資金を負担”する

親が住宅取得資金の一部、あるいは全部を拠出して住宅取得の契約の当事者になる方法もあります。たとえば、4,000万円のマンションを購入する際に、夫が自己資金と金融機関からの住宅ローンで合計2,500万円を支払い、妻が自己資金として500万円を支払い、夫の父親が残りの1,000万円を支払うケースで考えてみましょう。

この場合、マンション業者と締結する売買契約の買主は、夫、妻、夫の父親の3名になります。また、贈与や融資ではなく、親が自分の資金でマンションを購入することになるため、登記をするときに、親の持ち分(所有権の割合)を設定する必要があります。このケースでは、夫の持ち分が4,000万円分の2,500万円(62.5%)、妻のそれが4,000万円分の500万円(12.5%)、夫の父は4,000万円分の1,000万円(25%)ということになります。

親が直接資金を負担する場合には、親が亡くなったときの相続時に、遺族間で遺産分割をする際にトラブルにならないように注意する必要があります。上の例のマンションの場合、夫の父の持ち分25%が遺産分割の対象になります。

【4】“親の土地”に住宅を建てる

親からの経済的支援は、資金援助だけではありません。親が敷地を提供してくれる場合も、子どもにとっては土地の購入資金を負担する必要がなくなるため、大きな経済的支援を受けることになります。

なお、親名義の土地に建てる家の建築資金に住宅ローンを借りる場合は、家だけでなく、親の土地への抵当権設定も金融機関から求められます。

また、親が亡くなったときの相続時に、その土地が遺産分割の対象になるため、遺族間でトラブルにならないように注意をする必要があります。

住宅を取得する時に親から経済的な支援を得る方法にはさまざまな種類がありますが、それぞれに特徴があり、注意すべき点があります。あらかじめ親子でよく話し合って、制度の特徴を共有化し、親子それぞれの今後のライフプランにも配慮して、制度の選択や支援の規模を決定することが大切です。

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この記事の筆者
中村宏 ファイナンシャル・プランナー

ファイナンシャル・プランナー(CFP)、住宅ローンアドバイザー

個人相談、セミナー講師、新聞や雑誌・Webの記事執筆や取材協力が主な業務。
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FPオフィス ワーク・ワークス代表

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