離婚する前に知っておきたい「お金」事情。母子家庭への公的支援も解説

Q. 夫との離婚を考えています。弁護士費用や慰謝料などの離婚手続きにかかるお金も気になりますが、離婚後、子どもと2人で生活していけるかも不安です。公的な支援にはどんなものがありますか。(30代 女性)

●ファイナンシャル・プランナー大林香世さんによる解説

A.離婚手続きに関しては、収入が少ない場合には費用を立て替えてもらえる制度もあります。離婚後の母子家庭等は、子育てや就労などに対して、さまざまな公的支援が受けられます。

弁護士費用は、弁護士事務所によって異なる

「離婚」やその後の生活について考えるとき、気になるのがお金の問題ですよね。離婚手続きに関する費用として、弁護士費用から確認してみましょう。

夫婦で話し合って、財産分与も子どもの養育・その費用などについてすんなり合意できればよいのですが、なかなかそうはうまくいかない場合が多いでしょう。離婚に関する話し合いや手続きには弁護士等の第三者の専門家に入ってもらって、話を進めるほうがよい場合も多いでしょう。

弁護士に依頼した場合にかかる費用には、「弁護士報酬」と「実費」があります。「弁護士報酬」は、弁護士事務所によって自由に設定されています。「実費」は、収入印紙代、郵便切手代、謄写料、コピー代、通信費、宿泊料、保証金、保管金、供託金などの、弁護士にとって収入にはなりませんが、依頼人が支出することになる費用を指します。

【弁護士に依頼した場合にかかる費用】

弁護士報酬 実費
弁護士事務所によって自由に設定されている費用 収入印紙代、郵便切手代、謄写料、コピー代、通信費、宿泊料、保証金、保管金、供託金など

日本弁護士連合会の「アンケート結果にもとづく市民のための弁護士報酬の目安」(2008年度アンケート結果版)によれば、「夫の暴力などに耐えられないので離婚したい。3歳の子どもが1人いるが、自分が引き取りたい。慰謝料として200万円を請求した。離婚が成立し、慰謝料200万円の支払いを受けた。子どもの親権も得た上で、養育費として毎月3万円の支払いを受けることになった」という案件で離婚調停を受任する場合、その着手金※1は「20万円前後」が45.1%、「30万円前後」が41.5%と多数を占めるものの、40万円前後が6.6%、50万円前後という回答も2.2%を占めます。

また、同じ案件の報酬金※2の金額は、20万円前後が30.3%、30万円前後が39.6%、40万円前後が14.2%、50万円前後が10.3%と回答に幅があることがあります。

このように、同じ案件に対する弁護士報酬は、弁護士によって違いがあります。弁護士紹介サイトや弁護士事務所のHP等には、料金表や目安が提示されている場合も多いので、比較してみるとよいでしょう。

※1 着手金・・・弁護士が手続を進めるために事件の着手のときに受けるべき弁護士報酬
※2 報酬金・・・弁護士が暑かった事件の成功の程度に応じて受ける成功報酬

「法テラス」で無料相談、離婚手続費用の立て替えも

離婚手続きの費用は、弁護士報酬の違いだけでなく、それぞれの夫婦の事情や離婚の仕方(協議離婚か調停か、裁判か等)によっても変わってきますが、費用負担が心配になることもありそうです。しかし、収入や資産が少ない場合には、無料で相談できたり、費用の立て替えが利用できたりする場合もあるので、早めに「法テラス」のHP等で、どんな支援が受けられるのかを確認しておきましょう。

国によって設立された法的トラブル解決のための総合案内所「日本司法支援センター(通称:法テラス)」は、困ったことに応じて、問題を解決するための法制度や手続き、適切な相談窓口を無料で案内してくれます。

また、経済的に余裕のない方が法的トラブルにあったときに、無料法律相談や必要に応じて弁護士・司法書士費用などの立て替えを行っています(民事法律扶助業務)。

慰謝料・財産分与・養育費・・・。離婚で受け取るお金

離婚後の生活を考えると、離婚の際に受け取るお金も重要な問題です。離婚の際に受け取るお金を「慰謝料」と呼ぶ人が多いような気がしますが、「慰謝料」は精神的な損害を受けた場合に、その責任のある相手に請求できる損害賠償金を指します。したがって、相手に不倫などの明らかな責任がなければ、慰謝料は請求できません。

離婚の際に多くの方が受け取るお金や財産は「財産分与」でしょう。夫婦となってから築いた財産を、別れる際に分けるのです。原則として、財産を分ける割合は2分の1ずつです。協議して合意すれば、その他の割合で分けることもできます。財産分与の対象となるのは、結婚後に築いた財産なので、結婚前にそれぞれが築いた財産は対象になりません。

また、養育費は、未成年の子どもの生活費や教育費、医療費等として必要なお金のことで、親が負担すべきものです。慰謝料や財産分与があっても、養育費は別に扱われます。離婚の際には、子どもの養育費について取り決め、その後は決めた養育費がきちんと支払われるようにすべきですが、養育費についての取り決めは離婚後でも行うことができます。養育費の金額は当事者間で取り決めます。

裁判所のHPには、簡易的に親の収入や子どもの年齢・人数によって養育費の額を求められる「養育費・婚姻費用算定表」も掲載されています。

養育費について:裁判所HPより
養育費・婚姻費用算定表:裁判所HPより

離婚後は、母子家庭等への支援制度を活用

厚生労働省の「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」によると、平成27年の母子世帯の母自身の平均年間収入は 243万円で、そのうち母自身の平均年間 就労収入は 200万円であり、同居親族の収入を含めた母子世帯の平均年間収入(平均世帯人員3.31人)は 348万円(前回調査 291万円)となっています。

この調査の「平均収入」は、生活保護法に基づく給付、児童扶養手当等の社会保障給付金、就労収入、別れた配偶者からの養育費、親からの仕送り、家賃・地代などを加えた全ての収入の合計額です。母子家庭は収入が少ない場合が多く、また、就労収入だけでなく、児童扶養手当などの公的な支援や養育費なども足して家計をまわしていることがわかります。離婚後、働いて収入を得ることのほか、どんな収入・支援が得られるのかも、あらかじめ把握しておきたいものです。せっかくの公的な支援制度も、その制度を知らず、申請できなければ受けられません。お住まいの自治体の窓口やホームページ等で確かめておきましょう。

<表2 公的な支援制度の例>

 

制度

概要

子育て・教育

児童手当

0歳から中学校卒業までの子どもを養育する親等に対して支給。所得制限あり。

・0歳から3歳未満の子ども:月額1万5,000円
・3歳から小学校修了前の子ども:月額1万円(第1子・第2子)、月額1万5,000円(第3子以降)
・中学生:月額1万円

所得制限の限度額以上の世帯の場合は、子どもの年齢にかかわらず一律月額5,000円

児童扶養手当

父母が離婚した子どもを監護している母、子どもを監護し、生計を同じくする父又は父母以外で子どもを養育(児童と同居し、監護し、生計を維持していること)している養育者に対して、支給される。

子どもの人数、受給資格者の所得によって支給金額は異なる。

修学援助

経済的な理由により修学困難と認められる児童・生徒の保護者に対して、市区町村が援助を与える制度。学用品費、通学用品費、修学旅行費等の一部が援助される。

就職等

母子家庭自立支援教育訓練給付金

対象教育訓練を受講し、修了した場合、経費の60%(1万2,001円以上で20万円を上限)が支給される。児童扶養手当の支給をうけているか、同程度の所得水準にあり、雇用保険の教育訓練給付の受給資格を有していない人が対象。

母子家庭高等技能訓練促進費等給付金

看護師や介護福祉士等の資格取得のため、1年以上養成機関で修業する場合に、修業期間中の生活の負担軽減のために、高等職業訓練促進給付金が支給されるとともに、入学時の負担軽減のため、高等職業訓練修了支援給付金が支給される。児童扶養手当の支給を受けているか又は同等の所得水準にあることなどが条件。

高等職業訓練促進給付金は、支給額月額100,000円 (市町村民税非課税世帯)、月額 70,500円(市町村民税課税世帯)であり、支給期間修業期間の全期間(上限3年)。高等職業訓練修了支援給付金は、支給額50,000円(市町村民税非課税世帯)、25,000円(市町村民税課税世帯)で、支給期間修了後に支給される。

貸付金

母子父子寡婦福祉資金貸付金

20歳未満の子どもを扶養している母子家庭等に対して、就労や児童の就学などで資金が必要となった場合に、都道府県・指定都市または中核市から貸し付けを受けられる制度。貸付利率は、無利子。償還期限は、資金の種類により、3年間から20年間まで。

女子福祉金貸付制度

親、子、兄弟姉妹を扶養している女性を対象に、条件を満たせば事業、医療、就学支援に必要な資金の貸付を受けることができる。

※子ども・子育て母子家庭等関係:厚生労働省HPより

離婚後の生活は、家族の状況や収入等、それぞれの状況によって異なり、受けられる公的な支援も違ってきます。離婚を考えるときには、離婚の手続やかかる費用について調べるのと同時に、離婚後の家計状況、親族等から得られる支援、公的な支援・助成金等についても調べておきましょう。

(最終更新日:2019.10.05)
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