マンションの火災保険を選ぶ目安は? 保険料を抑えるコツはあるの?

「火災保険」といえば、一軒家にかける保険というイメージを抱く方が多いのではないでしょうか? しかし、分譲マンションを購入する際も、火災保険をしっかり検討しなければなりません。鉄筋コンクリート造が主流であるマンションは、火災に強い建物といえます。しかし、上下階や隣の部屋と壁や天井越しに密接しているため、万が一火災が発生した場合、延焼して被害に遭うこともありますし、仮に自宅が火元であれば、ご近所に被害を与えてしまう可能性も非常に高いのです。そこで今回は、分譲マンションの火災保険のポイントをARUHIマガジン編集部が調べてみました。

分譲マンションの火災保険料相場はいくら?

火災保険はその名のとおり、火災時における建物の損害を補償するものです。しかし、生命保険のように希望の補償額を自由に設定することはできません。火災保険の補償額は、「同等のものを再築もしくは再取得する費用はいくらか」という、「再調達価額」を基準に算出されるためです。例えば、評価額が3,000万円の建物に対し、5,000万円や1億円などの高額な保険金が支払われることはないということです。そのため、火災保険料を設定するには、建物の評価額が重要なポイントとなるのです。

ここで注意したいのは、分譲マンションの評価額は、販売価格とは異なるということです。火災保険に加入する際の建物の評価額は、対象となる専有部の設計費や材料費といった建築価額がもとになるからです。一般的にマンションの販売価格には土地代や共有部の設備費なども含まれていますが、これらは対象にはなりません。そのため、販売価格がそのまま評価額には反映されないのです。

それではどうやって評価額が算出されるのかというと、まず、建物の建築価額を計算します。土地代には消費税がかからないので、消費税額から建物の建築価額を算出していきます。

建物の建築価額=購入時の消費税額÷購入時の消費税率

これで算出した建築価額から、さらに共用部の価額を差し引きます。共用部の評価額は40%~60%程度といわれているので、

火災保険における建物評価額=建物の建築価額×0.4~0.6

これによって評価額が算出されますが、マンションは同じ広さや間取りであっても、建物のグレードなどによって価値に差が生じるため、プラスマイナス30%の調整が可能となります。

また中古マンションの場合は、建築時の建築価額がわかれば、それに構造や築年数を考慮して算出します。建築時の建築価額が分からない場合、都道府県ごとにある程度の目安が設けられているので、保険会社に聞いてみるとよいでしょう。

補償したい建物の評価額=保険金額が明確になれば、これをベースにしたうえで、専有部の広さ(平米数)や補償内容、加入期間などにより保険料が算出されていきます。なお、火災保険には地震や噴火、津波の影響により生じた火災・損壊・埋没・流失の損害補償は含まれないため、これらもカバーしたい場合、地震保険に別途加入する必要があります。一例をあげると、都内で専有部100平米の新築マンションを3,500万円で購入し、火災保険加入期間を10年とした場合、火災保険の基本補償と諸費用のみであれば年額2,970円、これに地震保険を追加すると年額1万6,670円程度になります。補償内容によって金額は大きく変動しますが、概ね1万~1万5,000円程度のプランを利用する場合が多いようです。

マンションは、専有部分が火災保険の補償対象となる

マンションの建物は、部屋の購入者が専有する「専有部」と、廊下やエントランスなど、マンションの所有者全員で共有する「共有部」に分けられています。火災保険は責任管理者が誰であるかによって対象が決まるため、購入者が火災保険をかけるのは「専有部」のみとなり、「共有部」はマンションの管理組合が保険をかけるケースが一般的です。

マンションの火災保険はどんな時に必要となる? 補償内容は?

火災保険の基本的な補償範囲

火災保険では専有部である自室内の建物部分に関する損害が補償されます。具体的には壁や床、天井、畳や建具、造り付けの棚、システムキッチンなど建物に取り付けた設備などが対象です。自室が出火元である場合も、ほかの部屋の火事から延焼した場合にも、さらには、ほかの部屋の火事を消化するために自室が水浸しになってしまった場合も適用されます。しかし、地震による二次的な火災は補償されないので、別途地震保険は必要です。

そのほか、水災、風災、水漏れ、盗難などの補償もオプション的に追加することができます。補償内容が増えればもちろん保険料も高額となるので、自分の住まいに必要かどうか、取捨選択しましょう。例えば水災は、1階ならばリスクは高いですが、高層階であればその心配はほとんどありません。また風災によってダメージを受けやすいのは外壁やバルコニーなどの共有部である場合が多く、管理組合がかける火災保険の対象のため、個人で風災の補償を契約する必要性は低いです。

なお、地震による津波の水災が対象となるのは地震保険です。こちらをカバーしたい場合は地震保険に別途加入しなければなりません。

建物と別に家財の補償金額を設定する必要がある

火災保険は主に「建物」に対する補償のため、室内に置いてある家具や家電、本や服、貴金属、楽器、美術品などは対象外です。これらもカバーしたい場合は、オプションで「家財」の補償を付けることになります。「家財」も建物と同様に、評価額を算出して補償額を設定します。購入金額がはっきりわかる場合は、自分で家財の購入金額を合計し、保険会社に申告します。その際、30万円以上の高価な貴金属や美術品などは個別に申告するのですが、鑑定書など、金額の根拠資料がないと保険をかけられない場合もあります。

購入金額が分からない場合や、計算する手間を省きたい場合、保険会社が用意している簡易評価表に従うこともできます。多くの保険会社は総務省の「家計調査」などをもとに、部屋の広さや家族構成などから再調達価格を設定しています。保険会社によって異なりますが、目安として、夫婦2人だと30代で700万円~1,000万円程度、40代で1,300万円~1,500万円程度が標準的な評価額とされています。この金額を見て十分だと感じる方もいれば、「ちょっと少ないな…」と不安を覚える方もいると思います。家財はグレードによって個人差が大きくなるものなので、納得のいく補償を受けるためには、やはり自分で計算するのが得策。領収書や鑑定書はしっかり保管しておきましょう。

地震保険も別途契約が必要

前述したとおり、地震による二次的な火災や津波による水災は火災保険の対象外のため、地震保険は別途加入する必要があります。地震保険は単体で加入できないため、火災保険とセットで検討することになりますが、震災大国・日本に暮らす限り、どこに居を構えるのであっても加入しておくのがよいでしょう。現に、近年起こった熊本地震は、震災のリスクが低いとされる地域で甚大な被害をもたらしました。暮らせられなくなるほどにマンションが倒壊したり、破損したりする可能性は低いかもしれませんが、建具が壊れたり、二次火災や水災に遭遇したりすることは十分ありえます。なお地震保険では、建物・家財ともに、最大でも火災保険で算出された評価額(補償される金額)の50%しか補てんされないので、補償額は評価額いっぱいに設定しておいた方が、万が一の際に安心です。

マンションの火災保険料を抑えるコツはあるの?

長く安心して暮らしていくためにも、手厚い補償は大切です。とはいえ、保険料はできるだけ抑えたいもの。そこで、補償を充実させながら保険料を節約する3つのコツを紹介します。

コツ1「補償内容を厳選」

補償が手厚くなればなるほど、保険料は高額になります。住まいに合わせて補償を絞り込むことで、無駄な出費を抑えることができます。先にも触れましたが、高層階ならば水災補償の必要性は低いです。また風災によって専有部がダメージを受けるケースはまれなので、こちらも省くことができそうです。また雪が降らない地域では、雪災の補償までは考えなくてもよいでしょう。国土交通省が提供しているハザードマップを確認しながら、自分が暮らすマンションではどんな被害が起こりそうか考え、必要な補償を絞り込みましょう。

コツ2「長期契約&保険料一括払い」

保険会社のほとんどは、長期契約と、保険料の一括払いによる割引サービスを用意しています。以前は住宅ローンに合わせ、火災保険も35年一括契約を選べば30%程度の割引になるのが相場でした。2015年10月には35年一括契約は廃止され、最長10年となっています。地震保険はこれより短く、最長5年です。一括払いの割引は火災保険で18%、地震保険で11%程度が相場となっており、補償内容にもよりますが、概ね2~3万円程度の保険料を節約できます。なお、引っ越しなどの理由で途中解約した場合は、解約返戻金として残りの保険料は戻ってくるため安心です。

コツ3「保険会社の相見積もりで比較検討」

保険会社によって商品やプランは様々です。同じ補償内容でも保険料は異なってくるので、いくつかの保険会社から見積もりをとり、比較検討すると良いでしょう。当たり前のことですが、このひと手間こそ、損をしない火災保険選びの大事なポイントなのです。

まとめ

強固なマンションであっても、火災や震災などでダメージを受ける可能性はゼロではありません。大きな買い物だからこそ、長く安心して暮らせるよう、万が一にしっかり備えておきたいですね。火災保険は暮らし続ける限り必要なものなので、マネープランを立てる際、住宅ローンや修繕積立金と一緒に保険料の目安を把握しておくことが大切です。家財もカバーするなど、補償内容によって支払う金額も大きく変わってくるので、今回紹介した情報を参考に、上手に火災保険を利用してくださいね。

(最終更新日:2019.10.05)
※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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