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日々の育児負担を軽くし、災害時の備えにもなると期待されている乳児用液体ミルク。ひとりの主婦が署名活動を始め、少しずつ認知が高まり、厚労省が国内基準を新設して国内製造へと着実に動き出しています。熊本地震の支援物資としてフィンランドの液体ミルクが緊急輸入され、つい最近では東京都が災害時の液体ミルク輸入で流通大手イオンと協定を結ぶというニュースも。署名活動の発起人であり、乳児用液体ミルクプロジェクト代表で主婦の末永恵理さんに、液体ミルク国内解禁に向けた最新動向、今後の取り組みについて伺いました。

乳児用液体ミルクって、どんなもの?

乳児用液体ミルクを飲む赤ちゃん。お湯を沸かしたり計量する手間が省けるため、欲しがるときにすぐ与えることができます
海外では、さまざまなタイプの液体ミルクが発売されています。紙パックタイプは哺乳瓶に移し替えて飲むのが一般的です

液体ミルクとは、粉ミルクとは異なり開封すればすぐに飲ませることができるミルクです

末永さん:
液体ミルクは、計量する、お湯を用意する、粉を溶かして冷ますという手間が省け、またタイプによっては哺乳びんを洗って消毒する必要がないことが大きなメリットです。赤ちゃんが欲しいときにすぐ与えられるから、保育者の負担も大きく軽減されます。無菌充填処理済みのため、粉ミルクより衛生的。常温での保存が可能なので、災害時など粉ミルクやお湯が手に入りづらいときにとても役立ちます。アメリカ、EU、韓国など先進国ではすでに広く普及しています。

日本では、メーカーが製造・販売するための法整備がされてこなかった

2017年3月には男女共同参画担当・加藤大臣、防災担当・松本大臣(いずれも当時)に、母乳育児支援と液体ミルクの法整備に関する要望書を提出

メリットがこれほど多い乳児用液体ミルクですが、日本では災害時に緊急輸入されたのみで、一般流通していません。衛生面や安全性に関する基準が法整備されておらず、国内メーカーが液体ミルクを製造・販売できないため、液体ミルクを使いたいという人は個人的に海外で購入するしか手に入れる方法がない状態です。そこで末永さんは2014年、乳児用液体ミルクの国内製造・販売を求めるインターネット署名を立ち上げました。

末永さん:
開始1ヶ月で約1万筆、現在までに4万2000筆が集まっています。当時は専業主婦だった末永さんの呼びかけから始まり「ニーズがある」という認識が世間やメーカー、国に少しずつ広まった結果、ついに国が動き出しました。

今夏にも法整備が整うけれど、店頭に並ぶのはもう少し先

末永さんは、ママ向けのセミナーなどで定期的に乳児用液体ミルクについての講演を行っています

末永さんたち乳児用液体ミルクプロジェクトはメーカーに署名を提出したり、国会議員に働きかけて勉強会を開いたりと普及に向けて活動を続けています。

末永さん:
3月には、厚生労働省の専門家部会で液体ミルク製造・保存方法の基準を盛り込んだ省令改正案が提出されて了承されました。この夏にも省令の改正が行われれば、いよいよ国内製造・販売に向けて本格的に動き出しそうです。とはいえ、実際に店頭に並ぶまでにはもう少し時間がかかると思います。今はまだ、メーカーが試作品をもとに検証を進めている段階。法整備が済んではじめて実際の製造ラインを整え、賞味期限までの保存試験をするなどの手間がかかるからです。実際に販売されるのは早くても1年から1年半先になりそうです。

もうひとつ、メーカー側の大きな問題は利益が出るかどうかということ。

末永さん:
今は母乳育児が推奨されているということもあって、粉ミルクの市場自体が縮小傾向。成長が見込めない分野に新たに参入するのは、とても大変なことです。研究は進めているものの、現段階で製造を明言されているメーカーさんはいません。液体ミルクは便利で衛生的ですが、粉ミルクより製造コストが割高になり、賞味期限や店頭寿命が少し短いというデメリットもあるんです。

東京都は、災害時に液体ミルクを緊急輸入できるようイオンと協定

小池東京都知事を表敬訪問。都知事は国会議員時代から液体ミルク普及に向けて積極的に活動しています

6月には、災害発生時に液体ミルクを調達できるよう東京都が流通大手イオンと協定を結ぶというニュースが。

末永さん:
国内製造・販売が開始される前に、万が一災害が発生したらイオンが都から要請を受けて液体ミルクを緊急輸入して供給するということです。小池都知事は国会議員時代から乳児用液体ミルクの普及に向けて積極的に活動していて、都知事選でも公約に掲げていました。この夏に法が整っても、メーカーが販売を始めるまで空白期間があるため、そのセーフティネットとしてとてもうれしいニュースでした。

子どもを持つ親、プレ親として、関心を持ち続けることが大事

国の法整備が進み、東京都など自治体が動き出すなど、末永さんが署名を始めた2014年から着実に歩みを進めている液体ミルク。

末永さん:
液体ミルクはずっと必要なものではないので、使いたい人、必要な人は常に入れ替わります。大事なのは、関心を持ち続けること。署名活動もまだまだ継続していて、今年出産した人、これから出産する人にも呼びかけをしていくつもりです。もし液体ミルクに関心を持っていただいているなら、出産を控えた友人に液体ミルクのことを伝えたり、海外旅行のときに液体ミルクをおみやげに買ってみたりと周囲にぜひ広めてほしいなと思います。

液体ミルクが広く認知され、国内製造・販売されれば、育児の負担が軽減されるだけでなく災害発生時の赤ちゃんのセーフティネットが強化されます。子どもがミルクを卒業している人も、まさに赤ちゃんのお世話をがんばっている人も、これから家族が増える人も。今後も、液体ミルクの普及に関するニュースにはぜひ耳を傾けてみてください。

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この記事の筆者
佐藤望美 エディター・ライター・翻訳家

女性誌、ママファッション誌、育児誌などで活動するフリーエディター・ライター。得意分野は育児、トラベル、ファッション、ライフスタイル、食。トラベルは子連れ旅行専門トラベルライターとして情報サイト「FOOTABY!」を運営するかたわら、さまざまな媒体にルポを執筆中。自身にも5才&1才の子どもがおり、国内外の子連れ旅行はすでに30回以上。
https://www.footaby.com

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