借金があると住宅ローン審査はどうなる? 審査に通る人と通らない人は何が違うの?

自動車ローンや教育ローンなど、借金があると住宅ローンを組むことができないのではないかと思う人もいることでしょう。確かに、借金がないほうが住宅ローン審査は有利といえます。ここでは借金がどのように住宅ローン審査に影響するのか検証してみましょう。また、家族に内緒の借金が、審査を受けることでばれてしまうことはないのか、過去の借金が審査に影響するのかどうかといった点についてもお話しします。

借金があっても住宅ローン審査が通った人はたくさんいる!

住宅ローンの借り入れを申し込む際には、その時に抱えている借金について金融機関に申告しなければなりません。借金の残高はいくらあるのかということだけでなく、借入先や借り入れの目的についても、申込用紙に細かく記載する必要があります。自動車ローンや教育ローンのほか、クレジットカードのキャッシングなど、借金があると住宅ローンの審査に通らないのではないかと心配になる人もいらっしゃることでしょう。

結論を先にお伝えすると、借金があっても住宅ローンを借りることは可能です。ただし、必ず借りることができるわけではありません。金融機関は、「借金の返済遅延額」と「借金の内容」をチェックし、その結果によっては審査が通らなかったり、審査が通ったとしても希望額よりも少ない額しか借りることができない「減額承認」になったりするケースもあることは知っておいていただきたいと思います。

金融機関は返済比率を審査している

まず、審査の結果に大きく影響するのが、借金の額です。各金融機関では、住宅ローンの貸出要件に「返済比率(返済負担率)」の基準を決めており、審査の際には厳密にチェックしています。返済比率とは、年間返済額の年収に占める割合のことで、この場合の年間返済額には住宅ローン以外の借り入れについても含めて計算することになっています。

たとえば【フラット35】の場合、返済比率の基準は次のようになっており、この基準を超える融資を受けることはできません。

<【フラット35】の返済比率の基準>

 年収  基準
 400万円未満  30%以下
 400万円以上  35%以下

当然、住宅ローン以外の借金があると、その分だけ返済比率が高くなってしまいます。そのため、結果として審査が通らなかったり、減額承認になったりというケースが発生するのです。

金融機関は返済比率を審査している

では、年収400万円の場合に返済比率が35%となる借入額はどれくらいになるのでしょうか。借入条件を、金利1.5%、返済期間35年として考えてみます。

<前提条件>

申込者の年収:400万円
返済期間:35年間
金利:1.5%(全期間固定金利型)

まず、年収400万円の人にとって、返済比率35%となる年間返済額は、140万円(400万円×35%)。これを毎月返済額にすると、約11万7,000円となります。

金利1.5%、返済期間35年で100万円を借りた場合の毎月返済額は3,062円ですから、毎月返済額が約11万7,000円になる借入額は約3,800万円ということがわかります。

つまり、【フラット35】を利用する場合、年収400万円の人で、住宅ローン以外の借り入れがゼロであれば、住宅ローンの借入可能額は約3,800万円になるということです。

では、住宅ローン以外に教育ローンを借りていた場合はどうなるでしょうか。利用するのは国の教育ローンである日本政策金融公庫の教育一般貸し付けとします。この制度は最高350万円まで(子ども1人につき)、金利1.76%(固定金利)、返済期間は15年以内で融資を受けることができるものです(2018年5月時点)。

年収400万円の人が、この教育ローンを500万円(子ども2人)借りている場合と300万円借りている場合について、それぞれ住宅ローンの借入可能額がどう変わるかをシミュレーションしてみましょう。

<教育ローンがある場合の住宅ローンの借入限度額(返済比率35%)>

 教育ローンの借入額  教育ローンの毎月返済額【1】  返済比率35%となる毎月返済額【2】  住宅ローンの毎月返済額【2】-【1】  住宅ローンの借入可能額
 0円  0円  11万6,666円  11万6,666円  3,810万円
 500万円  3万1,625円  8万5,041円  2,777万円
 300万円  1万8,975円  9万7,691円  3,190万円

このケースでは、住宅ローン以外の借り入れが500万円あると住宅ローンの借入限度額は1,000万円以上減ってしまうことがわかります。

また、住宅ローン以外の借り入れが300万円の場合でも、住宅ローンの借入限度額は約600万円減ってしまいます。借金がどれくらい住宅ローンの借り入れに影響するのか実感していただけたでしょうか。ここでは返済比率だけに着目してシミュレーションしていますが、実際の審査では他の審査項目も含めて総合的に判断されることに留意しておいてください。

なお、ここでは【フラット35】の基準に合わせて、返済比率を35%として計算しましたが、返済比率の基準は金融機関によって異なっています。また、金融機関が決めた基準とは関係なく、無理のない返済をしていくためには返済比率を20〜25%に抑えるべきといわれています。参考までに、返済比率を25%として住宅ローンの借入可能額を計算したシミュレーション結果もご紹介しておきますので、参考になさってください。

<教育ローンがある場合の住宅ローンの借入限度額(返済比率25%)>

 教育ローンの借入額  教育ローンの毎月返済額【1】  返済比率35%となる毎月返済額【2】  住宅ローンの毎月返済額【2】-【1】  住宅ローンの借入可能額
 0円  0円  8万3,333円  8万3,333円  2,721万円
 500万円  3万1,625円  5万1,708円  1,688万円
 300万円  1万8,975円  6万4,358円  2,101万円

借金の内容は住宅ローン審査に影響する?

次に気になるのが、借金の内容が住宅ローン審査に影響するかどうかでしょう。先にお話したように、住宅ローンの申し込みの際には、借金の額だけでなく借入先や借り入れの目的についても申告する必要があります。

自動車ローンや教育ローンであれば、目的も明確ですし、大きな問題になることはないと思われます。ただ、消費者金融から多額の借金をしていたり、クレジットカードで限度額いっぱいのキャッシングをしていたりとなると、金融機関に「お金の管理ができない人」「お金にだらしのない人」という印象を与えてしまって、審査に影響が出てくる可能性は否定できないと思われます。特に、消費者金融での借金は金融機関に対する印象が悪いといわれています。

金融機関は、返済比率というデジタルな基準だけで融資の可否を判断しているのではなく、その人がどんなお金の使い方をしているのか、お金をきちんと管理できる人なのかといったこともチェックしていると考えておいてください。

住宅ローン審査をしたら、妻や親など家族に借金がばれてしまう?

ところで、中には家族に内緒で借金をしてしまったという人もいるかもしれません。住宅ローンの申し込みをする際には、借金について申告する必要があるというと、内緒の借金の存在が家族にばれてしまうのではないかと心配されることでしょう。

安心してください。金融機関は審査の結果を知らせるだけで、たとえ審査に落ちたとしても、その理由が知らされることはありません。そのため、内緒の借金がある場合でも、住宅ローンの審査を受けたからといって、それが家族にばれてしまうことはないといえます。

ここで注意していただきたいのは、家族にばれるのが怖いからと、借金があることを隠して住宅ローンの申し込みをしてはいけないということです。もし、借金があることを申告しなかった場合には、虚偽の申告をしたとして、審査に落ちてしまう可能性もあります。本人が申告しなくても、金融機関は個人信用情報を照会することで、その人の借り入れ状況や返済の延滞の有無などを確認することができるのです。

借金があっても一括返済をすれば住宅ローン審査に通る?

繰り返しになりますが、借金があるからといって、必ずしも住宅ローン審査に通らないわけではありません。もちろん、借金がないほうが審査には有利といえるので、審査を受ける前に借金を一括返済しておいたほうがよいのではないかと考える人もいることでしょう。前にお話した返済比率の問題から、希望の金額が借りられそうにないといった場合には、事前に借金を返済しておくことは有効といえます。

ですが、手元の現金を借金の一括返済に回すよりも、住宅購入のための頭金にしたほうが有利な場合があることも知っておいてください。まず頭金があれば借入額を減らすことができるので、その分、審査に通りやすくなります。また、頭金の額によっては、住宅ローンの金利が変わってくる場合もあります。たとえば、ARUHIフラット35では、借り入れが9割以下かどうかで適用される金利が変わります。

<ARUHIフラット35の金利(団信加入)>

 借入期間  【融資比率】借り入れ:9割以下、借り換え:10割以下  【融資比率】借り入れ:9割超10割以下
 15〜20年  1.290%  1.730%
 21〜35年  1.340%  1.780%

※金利は2018年8月時点のもの:ARUHI住宅ローン金利一覧

ちなみに、手元の現金をすべて借金の一括返済や頭金に充当してしまうことは避けておきましょう。住宅ローンを借りることができても、不測の事態が起きて急にまとまった現金が必要になったときに、新たに借金をするようなことがあっては本末転倒です。

すでに住宅ローン以外の借金がある場合、手元の現金をどう活用すれば最も有利になるのか、シミュレーションなどの方法で検討することをおすすめします。不安な場合には、ファイナンシャル・プランナーなどの専門家に相談してみてはいかがでしょうか。

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過去の借金は住宅ローン審査に影響するの?

過去の借金が住宅ローン審査に影響するかどうかについても触れておきましょう。過去の借金については、延滞することなく返済が終わっていれば問題になることはありません。過去にクレジットカードの支払いやローンの返済を延滞してしまった場合、もしくは借金で自己破産してしまった場合には、その情報が個人信用情報に登録されてしまいます。いわゆる「ブラックリストに載る」といわれるものです。ブラックリストに載ってしまうと、5〜10年はその記録が残るといわれています。

(参考:ブラックリストでも住宅ローンは組める? 審査が通るポイントは?

参考として、全国銀行個人信用情報センターに登録される個人信用情報とその登録期間についてご紹介しておきます。

<個人信用情報と登録期間>

 登録情報  登録期間
 【取引情報】ローンやクレジットカード等の契約内容とその返済状況(入金の有無、延滞・代位弁済・強制回収手続き等の事実を含む)の履歴  契約期間中および契約終了日(完済されていない場合は完済日)から5年を超えない期間
 【照会記録情報】会員がセンターを利用した日や、ローンやクレジットカード等の申し込み・契約の内容等  当該利用日から、本人開示の対象は1年を超えない期間、会員への提供は6ヶ月を超えない期間
 【不渡情報】手形交換所の第1回目不渡・取引停止処分  第1回目不渡は当該発生日から6ヶ月を超えない期間、取引停止処分は当該処分日から5年を超えない期間
 【官報情報】官報に公告された破産・民事再生手続き開始等  当該決定日から10年を超えない期間
 【本人申告情報】本人確認資料の紛失・盗難、同姓同名別人の情報がセンターに登録されており自分と間違えられるおそれがある旨等のご本人からの申告内容  当登録日から5年を超えない期間

まとめ

ここまで見てきたように、借金があるからといって、必ずしも住宅ローン審査に通らないわけではありません。ただし、借金がないほうが審査に有利であることは間違いないので、住宅ローンを組むことを考えているなら、できるだけ住宅ローンの申し込み前に借金をするのは控えておいたほうがいいといえるでしょう。

また、住宅ローン以外にも借金をしている場合には、その分だけ返済の負担が大きくなります。すでに借金をしているという場合には、住宅ローンを借りる前に返済しておく、もしくは、住宅ローンの借入額を抑えるなど、返済の負担ができるだけ小さくなるようにしておきましょう。完済するまで無理なく返済を続けられることが何よりも大切ということを意識していただきたいと思います。

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(最終更新日:2021.02.04)
※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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