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住宅ローンは年収の5倍まで借りられるという通説がありますが、本当にそうなのでしょうか? また、住宅ローンを借りるときに年収と手取り、どちらでシミュレーションすれば良いか悩んでいる人もいるのではないでしょうか? 今回は、住宅ローンは年収の何倍まで借りられるのか? という借り入れの基礎についてみてみます。

住宅ローンの借入額は、年収の5倍って本当?

そもそも「年収の5倍」という考えはどこからきているのでしょうか? 実は「年収の5倍」という考え方が始まったキッカケは1992年の宮澤内閣。バブル経済崩壊後の経済再生政策のひとつに「大都市圏の勤労者世帯が年収の5倍程度で良質な住宅を買えるようにする」ことを掲げたことが始まりでした。

また、当時の住宅ローンの主流が旧住宅金融公庫(現住宅金融支援機構)であり、その公庫の収入要件に「毎月返済額の5倍以上の月収があること」という要件があったことも「年収5倍説」が広まった理由のひとつともいえます。

ただ、現在は、民間のさまざまな住宅ローンや、【フラット35】など住宅ローンのバリエーションも増え、当初と比べて金利水準、物件価格の水準もかなり変わっています。では、世の中の人が年収の何倍くらいの物件を購入しているかをチェックしてみましょう。

【物件取得価格に対する年収倍率】

   首都圏  近畿圏  東海  その他  全国
 注文住宅  6.5  6.6  6.4  6.2  6.3
 土地付注文住宅  7.4  7.3  7.2  6.8  7.1
 建売住宅  6.8  6.6  6.3  6.0  6.5
 マンション  7.2  6.7  6.1  5.4  6.8
 中古戸建  5.6  5.1  4.8  4.5  5.1
 中古マンション  5.8  4.9  4.1  4.1  5.4

出所)2016年 住宅金融支援機構 フラット35利用者調査

あくまでも【フラット35】の利用者データですが、地域や物件種類によってかなりの差があることがわかります。地域によっては物件価格が高く、ある程度の頭金を入れないと年収の5倍で物件を取得できない可能性もありますし、家族構成や年収500万円の人と年収1,000万円の人では家計の余裕度も変わるはずです。あるいは、頭金を多く入れることができれば年収の5倍までの借入金額でも希望する物件を取得することができるでしょう。

やはり、「年収の5倍までの借り入れ」という通説に惑わされずに自分の家計やライフプランに合った借り入れをすることが大切といえますね。

借入額の適正額を考える場合、手取りか総支給額、どちらで考えるべき?

では、「自分の家計やライフプランに合った借り入れの適正額」はどのように考えるべきでしょうか? まず、「収入の手取りで考えるべきか」「総支給額で考えるべきか」、という点ですが、あくまでも手取り収入の中から住宅ローンを返済し、貯蓄もして生活をして、固定資産税などの税金も支払っていくわけですから、やはり借入額の適正額を考える際には「手取り」で考えるべきです。

ただし、金融機関の審査上の借入可能額は「税込みの総支給額」で見られるので、審査に通ったからと言って、その金額が適正な借入可能額だと考えるのは危険といえます。

つまり、「審査上借りることができる金額」と「家計のうえで借りることができる金額」は違うということです。より安心して無理なく返済を続けるためには、「家計上、借りることができる金額」で考えることが大切ですね。

例えば、総支給額(以下年収)500万円の人で考えてみましょう。年収500万円の人は、もちろん家族構成などによって変わりますが手取りは390万円~400万円程度に減ってしまいます。

もし年収の5倍を借り入れるとすると借入金額が2,500万円、手取りの5倍となると1,950万円~2,000万円となります。

【年収500万円のケース】

 年収/借入金額の試算例
年収 総支給額 500万円
手取り額 390万円~400万円程度
借入金額 年収の5倍 2,500万円
手取りの5倍 1,950万円~2,000万円

仮に、全期間固定金利型で30年間、金利1.35%の元利均等返済で借り入れをする場合、2,500万円の借り入れで月8.5万円の返済額(年間102万円)、2,000万円の借り入れであれば、月6.8万円の返済額(年間81.6万円)です。借入金額を年収と手取り収入、どちらを基準として考えるかによって、月返済額にして1.7万円と大きな差が出てきます。

【住宅ローン返済額シミュレーション例】

<条件>
金利タイプ 全期間固定金利型
借入期間 30年間
金利 1.35%
返済方法 元利均等返済
▼試算例【1】
借入金額 2,500万円(※年収の5倍)
返済額 月8.5万円(年間102万円)
▼試算例【2】
借入金額 2,000万円(※手取りの5倍)
返済額 月6.8万円(年間81.6万円)
借入金額は「年収」か「手取り」のどちらを基準にするかにより、月返済額にして1.7万円と大きな差になる

「年収の何倍まで借りられるか」ではなく、「手取り収入の中からいくらであれば住宅ローンの返済に充当して良いか?」と、まずは月の適正返済額を出してから「いくら借りても良いか?」といった順序で資金計画を考えましょう。

自分の借入適正額を知るために借り入れシミュレーションを参考にしてみましょう

では、実際に借入適正額をどう考えたら良いかを見てみます。先ほど、借入適正額は「手取り」で考える、と言いましたが、具体的には「今の家計を保ったままで無理なく返済できる金額から適正額を考える」必要があります。

というのも、住宅を購入したからと言って、返済を優先するばかりで生活の質が下がってしまったり、子どもの進学に支障が出たりと大きな影響が出てからでは困るからです。Aさんのケースで考えます。

<条件>
・Aさん:35歳(定年65歳)、年収500万円(手取り400万円)、マンションを購入予定も退職時までに返済したいと思っている
・妻:33歳、専業主婦
・子ども:2歳

住宅購入前/購入後の比較
住宅購入前 家賃:月10万円(共益費・管理費込)※年間120万円  
車保有(駐車場代:月8,000円)
住宅購入のための貯蓄(月3.5万円・ボーナス30万円)※年間72万円
他に借り入れはなし
住宅購入後(予定) 住宅を購入した後の固定資産税:年間約10万円
マンションの管理費・修繕積立金:月1万円 ※年間12万円
子どもの教育費の積み立て:月2万円(別途、児童手当も教育費の積み立てに回す) ※年間24万円
住宅ローン:返済期間30年、元利均等返済

まず、Aさんの「無理なく返済できる月返済額」は「現在の家賃+住宅のための貯蓄」から「固定資産税」と「管理費や修繕積立金」と「子どもの教育費の積み立て」など、住宅購入後に増える負担を控除した金額となります。

したがって、計算式は以下です。

「無理なく返済できる月返済額」=((120万円+72万円)-(10万円+12万円+24万円))÷12ヶ月=約12万円(万円以下切り捨て)

すなわち、Aさんのケースで仮に【フラット35】で借り入れする場合、現在の家計から見た無理なく返済できる適正な借入額は、12万円÷3,379円(※)×100万円=約3,500万円(10万円以下切り捨て)になるわけです。これは、手取り年収の8.75倍、年収の7倍にあたるわけですが、家計のうえで問題がないのであれば、借入適正額といえます。

※住宅ローン【フラット35】2018年4月の最頻金利:1.35%より。元利均等返済での借入金額100万円あたりの月返済額

もちろん、これはあくまでも現在の家計から見た適正額です。仮に、もう一人子どもが欲しい、子どもを私立に通わせたい、車も買い換えたいというのであれば、その負担増も踏まえて資金計画を考える必要があることはいうまでもありませんし、何歳までに返済するかでも変わります。

また、住宅を購入する際には、その他経費もかかるので、実際には頭金も含めてトータルで資金計画を考える必要がありますね。 そしてもし、どうしても今の家計では希望物件が購入できない、というのであれば、「家計の見直しをして無駄を削減する」「生命保険契約の見直しをする」「配偶者が少しでも働く」「ご両親の援助を受けられないか相談する」など工夫をしてみましょう。

ちなみに、年収500万円での審査上の借入可能限度額は、以下の通りです。

【年収500万円での審査上の借入可能限度額】

 金融機関  借入可能額
 【フラット35】  4,314万円
 メガバンクM行 全期間固定1.39%  3,680万円
 地銀Y行  2,600万円~3,400万円
 S銀行  3,200万円

※上記試算は、返済期間:30年・返済方法:元利均等返済、その他の借り入れはなし、2018年4月時点の金利より算出。筆者試算による

あくまでも、年収と期間と現状の金利水準のみで判断した各金融機関のホームページでのシミュレーション結果ではありますが、参考にしてみてください。

是非、ご自身がいくら借りられるかもシミュレーションしてみましょう!

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勤務先によって借りられる倍数は変わるの? 審査では、会社の安定性も見られる?

ちなみに「借入適正額」は「手取り収入」と「家計やライフプラン」によって考えるべきですが、審査上、借りられる上限金額は企業や職業などによって変わるのでしょうか?

もちろん収入要件や担保要件、信用情報など基本的な条件は変わりませんが、公務員や勤務先が上場企業の場合には、離職率が低く、収入の安定性と退職金制度が充実しており返済に対する信頼度が高いため、「審査に通りやすい」「多く借りることができる」など多少の色が付く傾向にあります。

なお、審査に通りにくく、金額の面でもシビアになりがちなのが規模の小さい会社の経営者や自営業者です。経営の規模も小さく、景気などによって売り上げも変動しやすいですし、所得を低く抑えているケースもあるためです。

ただし、【フラット35】や財形や民間ローンなど種類でも異なりますし、民間金融機関でもネット銀行やメガバンク、地銀や信金などによっても取り扱いはそれぞれ異なります。

また、審査は勤務先や収入だけでなく総合的に判断されるものです。自分の家計に合った借入適正額であれば、よほどのことがなければ金融機関の審査には希望金額の借り入れができるはずですので、まずは、自分の家計では無理なく返済できる金額はいくらか? をしっかり把握することから始めてみてください。

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この記事の筆者
金子千春 ファイナンシャル・プランナー

千春コンサルティング事務所 代表
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、1級ファイナンシャル技能士、宅地建物取引主任者、住宅ローンアドバイザー

新生銀行を経て2004年より独立。ライフプランや住宅ローンセミナー、個別相談、宅建講師、企業の従業員向け投資教育、小中学校や児童館での金銭教育など、「知らないで損をする」ことのないようにという観点から、講師や執筆を中心に活動中。

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