築年数が古いマンションの購入、気になる耐震や設備、チェックすべきポイントは?

今、中古マンションが人気を集めています。首都圏では、中古マンションの成約数が新築マンションの契約数を上回っているほどです。なぜ、中古マンションが人気なのでしょうか。中古マンションをおすすめできる理由をご説明します。また、耐震基準や資産価値など築年数の古いマンションを購入するときのチェックポイントについてもご説明するとともに、マンションの寿命についても考えてみましょう。

中古マンションの人気が高まっている

2016年に、史上初めて首都圏で中古マンションの成約数が、新築マンションの成約件数を上回りました。2017年も同じく、中古マンションが新築マンションを上回る結果となっています。

2017年の首都圏の新築マンション供給戸数は36,837戸(「首都圏マンション市場動向 2017年度」/不動産経済研究所)であったのに対し、中古マンションの成約数は37,172戸(「首都圏不動産流通市場の動向」/東日本不動産流通機構)でした。新築マンションについては供給戸数なので、成約数はこれより少なくなるはずです。また、中古マンションの成約戸数の推移を見ても、中古マンションの人気が高まっていることがわかります。

【新築マンションの供給戸数と中古マンションの成約数】

   2011年  2012年  2013年  2014年  2015年  2016年  2017年
 新築マンション  45,173  46,754  55,245  44,529  38,139  36,450  36,837
 中古マンション  29,620  32,448  36,762  33,265  35,100  37,446  37,172

出所:「首都圏マンション市場動向 2017年度」(不動産経済研究所)、「首都圏不動産流通市場の動向」(東日本不動産流通機構)より作成

今、中古マンションが人気を集める5つの理由

なぜ今、中古マンションが人気を集めているのでしょうか。それには次のような理由があると考えられます。

(1)実際に自分が住むところをイメージしやすい

まず、すでに建物があるので、自分が実際にそこに住んだときのイメージを描きやすいということがあります。これは、中古物件の良さとして一般的に言われていることでもあります。

購入を検討する際に、実際にマンションを自分の目で見たり触れたりして、確認ができるのは大きなメリットです。特に、部屋ごとに異なる採光や、バルコニーからの眺めは、新築モデルルームでは確認できません。

(2)新築マンションよりも価格が安い

二つ目の理由としては、多くの中古マンションは新築マンションより価格が安いということがあげられます。

2017年の首都圏 新築マンションの平均価格は5,908 万円、これに対して中古マンションの平均価格は、3,253万円です。中古マンションのほうが購入しやすい価格帯だというのは間違いないでしょう。

(3)マンションの管理状況がわかる

マンションの管理状況は、その資産価値を左右すると言っても過言ではないかもしれません。それくらい管理は大切です。

中古マンションの購入を検討する際に、通常は実際に物件を見学に行きます。中古マンションであれば、すでに人が住んでいて生活をしているので、コミュニティが形成されています。見学時に、共用部分の清掃状況を確認したり、ゴミ捨て場や駐輪場の状態を見たりすることで、そのマンションの管理状況や住人のマナーがわかります。

(4)好みの部屋にリフォーム・リノベーションできる

マンションは、一戸建てに比べて、リフォームがやりやすいことも特徴です。マンションは、部屋の中に構造上取り除けないもの(通し柱・耐震壁)がないので、自由に間取りを変更できます。そのため、中古マンションを購入して、自分の理想の部屋にリフォームする人が増えています。

一方、新築マンションでは、オプションで間取りや設備を変更できるプランが一部ありますが、基本的には壁紙や設備、間取りは決められており、自由度は高くありません。しかも、他のマンションとの差別化のため、最新の住宅設備を競って導入しますので、ともすると過剰設備になることもあります。

そこで、本当に自分好みの部屋に住みたいと考える人の中には、最初から中古マンションに絞って物件探しをしている人も少なくありません。

ただし、マンションの場合、窓や玄関、インターホンなどは共有設備なので変更できませんし、構造上または管理規約上の制限で設置できない住宅設備もあることには注意しておいてください。

(5)住宅ローンとリフォームローンをまとめて借りられる

マンション購入にあたって、ほとんどの人は住宅ローンの借り入れをすると思います。

かつては、中古マンションというだけで資産価値が低いと見なされていたので、中古マンション向けの住宅ローンは、新築マンション向けのローンよりも金利が高いなど、条件面で不利でした。それだけではなく、物件価格の2割程度の頭金を用意しなければ、住宅ローンを借りることができなかったのです。

現在は、そのような制限はなくなり、頭金なしのフルローンで融資を受けられるようになっただけでなく、マンション購入時に必要な諸費用まで融資してもらえるようになりました。

しかも、中古マンションを購入してリフォームする場合には、リフォーム費用を住宅ローンに組み込んで融資を受けられる、つまりリフォーム費用まで住宅ローンで借り入れできるようになっています。

住宅ローンに組み入れて借り入れできれば、リフォームローンを利用するよりも、低い金利で融資を受けることができます。中には、リノベーションのように高額の費用がかかるケースにも対応している住宅ローン商品もあります。

リフォーム費用は住宅ローンに組み込んで借り入れできる(概念図)

このように、現在では中古マンションを購入するのに有利な条件が整っています。新築マンションの価格が高騰していることも、中古マンションの人気を後押ししていると考えられます。

築30年の中古マンションを購入したい! チェックすべき5つのポイントは?

中古マンションと言っても、築年数や間取りはもちろん、建物の傷み具合もさまざまです。築20年とか30年の古いマンションもあれば、新築同然の中古マンションもありますし、まだ誰も住んだことのない物件(新築未入居物件)であっても、新築後1年を経過すると中古物件扱いになります。

中古マンションを購入するのであれば、新築同様の築浅物件と共に、築30年くらいの中古マンションが選択肢の一つになると思われます。中古マンションの価格は築20年くらいまでは下がり続けますが、築30年前後になるとほぼ底値になっていると言えるからです。しかも、そうした古いマンションの中には、立地のいい物件が多くあります。土地には限りがあるため、いい立地であるほど早く埋まってしまいます。

とはいえ、築年数が古いだけに、本当に買っても大丈夫なのか心配に思われる人もいらっしゃるでしょう。そこで、築30年クラスの中古マンションの購入を検討する際に、チェックすべきポイントをご説明します。

<ポイント1>耐震性は新耐震基準かどうかをチェックする

2つの大きな震災を経験したことにより、中古マンションの耐震性について関心が持たれるようになりました。耐震性については、新耐震基準(1981年6月に改正)で建築されているかどうかを確認しましょう。

建築基準法の改正が行われたのが、1981年6月1日です。そのため、「建築確認済証」の交付日が1981年6月1日以降であれば、新耐震基準をクリアしていることになります。ただし、物件資料を見ても、建物の完成年月は記載されていますが、建築確認証を取得した日は記載されていません。

そこで、建物完成の日から工期を逆算すれば、建築確認証を取得した時期が割り出せます。詳しい説明は省きますが、建物の完成が1983年以降であれば、新耐震基準のマンションと考えて問題ないでしょう。なお、正確に知りたい場合には、役所で「建築概要書」を取得すれば確認することができます。

また、この新耐震基準で建築されていれば、一定の手続きをすることで、築25年を過ぎていても、登録免許税・不動産取得税の減税措置や、住宅ローン減税・贈与税非課税措置の税制優遇が受けられます。

<ポイント2>共用設備、管理状況をチェックする

「マンションは管理を買え」と一般に言われています。多くの人と同じ建物で生活することになりますので、マンション生活のルールである「管理規約・使用細則」のチェックは欠かせません。

また、マンションは10〜15年ごとに屋上の防水や外壁改修などの大規模修繕が必要ですし、共用部の不具合や改善で暦年の修繕工事が必要な場合もあります。その実施と記録、修繕計画自体があるのかもチェックすべき大事な項目です。

これらは、マンションの管理の委託を受けている管理会社から「重要事項にかかる調査報告書」として書面でもらえます。

<ポイント3>修繕積立金、管理費をチェックする

マンションに適切な修繕計画を行おうとしても、修繕資金がなければ工事できません。修繕積立金の残高、滞納状況をチェックしておく必要があります。

また、修繕積立金が十分に積み立てられていない場合には、修繕積立金・管理費の値上げが予定されていることもあります。その予定の有無もチェック事項です。これらも、「重要事項にかかる調査報告書」に記載されています。

<ポイント4>住宅ローンの借入期間について

一口に住宅ローンといっても、提供している金融機関によってさまざまな条件があります。借入期間は最長35年が原則ですが、住宅ローンによっては築年数が古い場合に借入期間が短縮されることがありますので注意してください。

<ポイント5>資産価値について

せっかく住宅ローンを借り入れてしてまで購入するのですから、資産価値の高いマンションを選びたいものです。資産価値を判断する一つの指標として、賃貸に出した場合にいくらぐらいの賃料が取れるかということがあります。

マンションも物ですから、年数が経過すれば価格は下がっていきますが、築20年を過ぎた頃から下がり方は緩やかになります。賃料も新築時が最も高く、年数が経過するにつれて下がっていきますが、築20年を過ぎると、そこから大きく下がることはなくなります。

購入を検討しているマンションの中に賃貸に出ている部屋があれば、賃貸物件としての人気度をチェックしたり、その部屋の家賃と周辺の家賃相場を比較したりしてみましょう。築30年にも関わらず、周辺の家賃相場と同じくらい賃料が取れていたり、近くにある築浅の物件とそれほど賃料の差がなかったりする場合には、そのマンションの資産価値は高いと言えるでしょう。

マンションに寿命はある?

実際に築30年のマンションを購入したとして、あと何年住めるのでしょうか。また、そもそもマンションに寿命はあるのでしょうか。 ここでよくある間違いは「耐用年数」と混同することです。

マンションだけでなく、車や機械など資産として所有するものには耐用年数が定められています。耐用年数とは、税法上の用語で、「建物・機械など固定資産の税務上の減価償却を行うにあたって、減価償却費の計算の基礎となる年数。財務省令に定められている」(デジタル大辞泉)ものです。

ここでは、減価償却についての説明は省きますが、耐用年数はあくまでも減価償却費を計算する場合に使われるもので、実際の寿命とは違います。実際にマンションの耐用年数は47年と定められていますが、47年前の1971年(昭和46年)のマンションも健在で売買取引されています。

では、マンションの寿命はどう考えればいいのでしょうか。

国土交通省がまとめた「RC造(コンクリート)の寿命に係る既住の研究例」によれば、68〜100年以上もつことになっています。ただ、日本にマンションが普及してから50年ほどなので、実際に寿命ギリギリまで使った例がほぼありません。そのため、マンションの寿命について「これだ」というものはありませんが、築30年のマンションを購入しても住宅ローンの返済期間中に住めなくなるようなことはないと言えるでしょう。修繕計画にしたがって修繕が行われている管理のしっかりしたマンションであれば問題ありません。

ただし、定期借地権のマンションは更地にして地主に返還しなければならないので、あらかじめ寿命が決まっています。

どうしても心配であれば、ホームインスペクション(建物状況調査)をして見ることをおすすめします。宅地建物取引業法が改正になり、2018年4月1日から不動産会社はこのホームインスペクションの内容を説明し、斡旋すること(希望する人のみ)が義務づけられました。

まとめ

ここまで、近年、中古マンションが人気になっている5つの理由と、築年数の古いマンションを購入する場合にチェックすべき点について解説してきました。

自分好みの住み心地のいい家は、住宅中古マンションをリフォーム・リノベーションすることでも実現できます。新築マンションを購入する場合とは違った楽しみもあります。家探しの選択肢の一つとして参考にしてください。

(最終更新日:2019.10.09)
※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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