住宅ローンの返済が辛いと感じたらやるべきことは?

金融機関の審査を受けて住宅ローンの借り入れをしたはずなのに、毎月の返済が辛くなってしまう場合があります。そんな時、そのまま無理をして返済を続ければ、家を失うどころか、家計が破たんしかねません。そんな時にはどうすればいいのでしょうか。ここでは、住宅ローンの返済が辛くなる原因について考えると同時に、毎月の返済が辛いと感じた時に、どのような対策をとればいいのかをご説明します。

住宅ローンの返済が辛くなる理由とは?

住宅ローンの返済が辛くなるのには、主に次の6つの理由があります。これらの理由が単独である場合もあれば複数の場合もありますし、そのご家庭に特有な理由が重なっている場合もあります。順に見ていきましょう。

【理由1】頭金を入れずにフルローンで家を買ってしまった

頭金を入れずにフルローンで住宅を購入することにはメリットもありますので、それが一概に悪いとは言えません。ただし、フルローンで借りていいのは、あくまでも“無理なく完済できる場合だけ”です。

頭金にする自己資金がなければ、その分だけ借入金額が増えるということです。背伸びをして大きな金額の住宅ローンを組んでしまえば、返済が辛くなってしまう可能性は高いでしょう。

【理由2】住宅の購入と維持にかかる「諸費用」「税金」を考慮していなかった

住宅購入時には、住宅の購入価格の他に「諸経費」と呼ばれる費用や「税金」がかかってきます。その費用は、新築物件の場合、物件価格の3~7%程度で、中古物件の場合は物件価格の6~10%程度と言われています。

例えば、3,500万円の新築の物件を購入した場合、諸費用や税金として約105万円~245万円の費用が住宅購入費とは別に必要です。通常、中古物件は購入時に不動産仲介業者が入るため、仲介手数料がかかります。新築物件でも仲介業者が入れば同様に、仲介手数料の負担が必要になります。

また、住宅購入後にはその住宅を維持していくための費用がかかります。例えば、賃貸住宅住まいだった時には大家さんが負担していた修繕費も、持ち家となると当然、自分で負担しなければなりません。新しいうちはそれほど大きな負担ではありませんが、年月を経れば、時として多額の修繕費がかかることもあります。マンションを購入した方であれば、修繕積立金を毎月支払わなければなりませんし、それとは別に専有部分である自分の住まいの修繕費が別途かかってきます。

また、戸建てかマンションかにかかわらず、固定資産税、都市計画税が毎年かかってきます。どのような費用が必要になるか、一覧表にしましたのでご覧ください。もし、今後必要となる費用を準備できていない場合は、すぐに貯蓄を始めるか、親から援助を受けられるのであれば親御さんにご相談することをおすすめします。

【マイホームの取得・維持にかかる費用】

  費用(△は不要の場合もあり) 金額の目安 備考
物件の申し込み時にかかる 申込み証拠金(△) 2万円〜15万円程度 売買契約時に手付金に充当される
手付金 物件価格の5〜10% 売買契約時に購入代金に充当される
仲介手数料(△) 物件価格の3%+6万円+消費税(物件価格400万円以上の場合) 不動産会社に物件を仲介してもらう場合に発生する。契約時と残金決済時に分けて支払う場合が多い
印紙代 1万円(物件価格1,000万円超、5,000万円以下の場合) 売買契約書かかる印紙代。物件価格によって異なる
物件の引き渡し時にかかる 適合証明書交付の費用(△) 検査内容・検査機関によって異なる 【フラット35】を利用する場合に必要。すでに検査済み物件の場合は不要
印紙代 2万円(物件価格1,000万円超、5,000万円以下の場合) 住宅ローンの契約書にかかる印紙代。融資金額によって異なる
保証料(△) 金利上乗せ法式と、一括前払方式がある 【フラット35】では不要。金融機関によって異なる
融資手数料

3〜5万円(定額型)

融資金額の2%程度(定率制)
金融機関によって異なる
固定資産税等清算金 物件によって異なる 購入した年の固定資産税を按分して負担するもの
修繕積立金(△) 20万〜40万円 入居時に支払う一定の修繕積立金(新築マンションを購入した場合)
団体信用生命保険料 通常は金融機関が負担 【フラット35】の場合は、金利に上乗せ
火災・地震保険料 10万〜数十万円 保証内容や地域によって異なる
登記費用 30万〜50万円 司法書士への報酬と、登記費用(土地所有権移転登記、建物所有権保存登記、住宅ローン抵当権設定登記)
引っ越し費用 20万円前後  
物件引き渡し後にかかる 固定資産税・都市計画税 固定遺産税評価額×1.4%(軽減措置あり) 購入した翌年から毎年4~6月に納付書が送られ、4回に分けて納付
不動産取得税 土地・家屋それぞれ3%(軽減措置あり) 購入後に一度かかる
管理費・修繕積立金(マンションの場合) 物件、専有面積によって異なる  
修繕・リフォーム費用(戸建ての場合) 工事内容によって異なる 自分で貯蓄しておくことが望ましい

 

【理由3】家族が増えた

子どもが生まれれば、当然、子どもの生活費や教育費がかかります。その費用を考慮しないで返済計画を立てている場合には、当然、返済は苦しくなるでしょう。

また、親が高齢になったため同居することになった場合も、家計に影響が出てきます。介護が必要な状態であればなおさらです。家族が増えることで、家計収支がどう変わるのかを把握し、例えば小遣いやレジャー費を削減することで賄えるのか、それとも住宅ローンの返済額を見直さなければならないのか、具体的な対策を立てておかなければ返済を続けていくことはできなくなってしまうでしょう。

【理由4】ボーナスが削減された、もしくはゼロになった

高度成長期と言われた時期は給料が上がるのは当然でしたし、ボーナスも出るのが当たり前といった時代もありました。しかし今では、企業が業績を安定的に維持し、コンスタントにボーナスが支給されることが少なくなってしまいました。公務員でもボーナスが一部カットされた時期もありました。ボーナスが減るということは収入が減るということです。ボーナス分の収入を含めて返済計画を立てている場合には、当然、返済を続けるのは辛くなってしまいます。

また、ボーナス払いをしている場合は要注意です。ボーナス払いは、毎月の返済額を減らし、そのかわりにボーナスが支給される月の返済額を増やすというのが基本的な考え方です。ボーナス払いにしたからといって、利息額が減るようなことはありません。ボーナスが必ず支払われる保証がない時代ですから、ボーナス払いの選択はしないほうがいいでしょう。

もし、現在返済中の住宅ローンで、ボーナス払いを選択しているのであれば、ボーナス払いのない毎月均等額払いへ変更できないか、融資を受けている金融機関に相談してみてください。

【理由5】収入からみて高額な住宅を購入してしまった

住宅ローンを無理なく返済していけるのかを判断する指標の一つに、「返済比率(返済負担率)」があります。住宅ローンを借りている方であれば、計算された記憶があるかもしれませんが、返済比率とは、「年収に占める年間返済額の割合」のことです。金融機関ごとに返済比率の基準が決められており、それを超えた借り入れをすることはできません。

民間住宅ローンの返済比率は金融機関によりさまざまですが、全期間固定金利型【フラット35】の返済比率の基準は次のようになっています。

【フラット35】返済比率

 年収  返済比率
 400万円未満  30%
 400万円以上  35%

例えば、年収600万円の場合の返済比率は「35%以下」が基準となります。

ということは、「600万円×35%」=210万円が年間返済額の上限ということです。「210万円÷12ヶ月」=17万5,000円が毎月返済額の上限となります。ですが、本当にこれだけの金額を返済していくことができるのでしょうか。実際には毎月いくらぐらいの返済が適切なのか計算してみましょう。

年収600万円の場合、そこからその年のボーナスを100万円とすると、税金や社会保険料を差し引いた年間の手取り額は約420万円、毎月の手取り額は約35万円となります。このとき、返済比率ぎりぎりまで借りた場合と、余裕をもって借りた場合の2パターンをシミュレーションしてみましょう。返済期間は35年、金利は全期間固定型で1.0%として、融資額は3,000万円と6,000万円の2パターンとします。なお、経費や税金などの支払いは考慮しないこととします。

【返済額のシミュレーション】

 融資額  毎月返済額  年間返済額  返済比率  利息総支払額  総返済額  返済後の手取り額
 3,000万円  8万4,685円  101万6,220円  約17%  約556万円  約3,556万円  約26万円
 6,000万円  16万9,371円  203万2,452円  約33%  約1,113万円  約7,113万円  約18万円
 差額  8万4,686円  101万6,232円  ――  約557万円  約3,557万円  約8万円

返済比率だけを考えれば、年収600万円であっても6,000万円の融資を受けることは可能ということになります(返済比率は33%)。ですが、返済後の手取りは約18万円となり、この金額で生活をしていけるかどうか慎重に検討する必要があります。仮にローンを組んだ当初は夫婦2人の生活だとしても、子どもが生まれて教育費などかかかるようになれば、この金額で生活していくことは難しいのではないでしょうか。

また、住宅ローンの借入額を3,000万円に抑えた場合でも、住宅ローンの他に自動車ローンなど借り入れがあれば、必ずしも無理なく完済できるとは断言できません。つまり、借りられる金額と借りていい金額は違うということです。

それぞれのご家庭の家計収支によって適正な返済額は異なるため、一概には言えませんが、住宅ローン返済以外の支出も含めた上で、借入額を検討しなければなりません。借入額が収入に対して高すぎる場合には当然、返済は辛くなってしまいます。

【理由6】想定外に年収がダウンしてしまった

例えば、入院するような病気や怪我をして仕事を長期で休んだり、何らかの事情で転職を余儀なくされたりした場合など、想定外に年収が減ってしまう場合があります。こうした事態を予測することはできませんが、仮に起きてしまった場合には、返済は辛くなってしまいます。

住宅ローンの返済が辛いと感じた場合の対策は?

もし、住宅ローンの返済が辛いと感じた時にはどうしたらいいのでしょうか。

辛いといっても、家計の支出を抑えれば何とかなる場合もあれば、住宅ローン返済によって生活がままならないといった場合などさまざまです。辛さの程度によって取るべき対策は違ってきますが、基本的な対策は次の4つです。

【対策1】家計、生活費の見直しをする
【対策2】融資を受けている金融機関に事情を話して善後策を相談する
【対策3】住宅ローンの借り換えをする
【対策4】住宅を売却する、もしくは賃貸に出す

住宅ローン返済が辛いと感じたら、まずは家計を見直すことです(【対策1】)。無駄な出費はないか、必要のない保険に入っていないか、しっかり見直しをしましょう。家計を見直すことで返済を続けていけるようになれば、それに越したことはありません。家計を見直して、無駄な出費を抑えてもローンの返済が苦しいのであれば、できるだけ早く融資を受けている金融機関に相談をしましょう(【対策2】)。場合によっては、返済期間の延長や、一時的な返済額の軽減を認めてもらえるかもしれません。

また、金利の引き下げを交渉してみるのも一つの手かもしれません。ただし、金利の引き下げには再審査が必要です。これまで返済を滞らせていないことが最低条件ですので、もしも返済が辛いからと延滞してしまったことがある場合には金利交渉は難しいでしょう。

また、住宅ローンの借り換えで、利息額を低減することができるかもしれません(【対策3】)。住宅ローンの借り換えは、返済が辛い時だけはなく、借り入れをした時点よりも金利が下がっていて、借り換えに必要な諸費用を支払っても、借り換えのメリットがある場合には借り換えを実行することをおすすめします。

住宅ローン返済が辛いと感じた時の対策を打つのは、早ければ早いほうがいいでしょう。金融機関に相談したタイミングが遅れたばかりに、マイホームを売却する、もしくは賃貸に出す(【対策4】)以外には手立てがなくなってしまったということもあり得ます。

住宅ローンを借りる前には返済シミュレーションが必須!

無理のない返済を続けていくためには、住宅ローンを借りる前に返済シミュレーションを行って、しっかりとした資金計画を立てておく必要があります。もちろん、資金計画を立てていても、病気やリストラなどで収入が途絶えてしまうことで返済が続けられなくなるリスクは誰にでもあります。だからと言って、無理のない返済計画を立てる必要がないという話にはなりません。

返済シミュレーションは【フラット35】のサイトでも行うことができますが、自分で設定した毎月返済額や購入予算が適正なのかどうかはわかりません。不安な場合は、独立系のFPなどの専門家に相談してみてはいかがでしょうか。

(参考:購入予定の物件が決まっていなくても、事前審査を受けて借入可能額を知ることができる「家探し前クイック事前審査」:アルヒ株式会社)

まとめ

ここでは、住宅ローン返済が辛くなってしまう理由と、その対策についてお話しました。繰り返しになりますが、住宅ローン返済が辛いと感じた時には、すぐに借り入れをしている金融機関に相談しましょう。場合によっては、弁護士などの専門家に相談することも必要です。 それを怠ってしまうと、最悪の場合は、マイホームを手放すことになるどころか、家計が破たんしかねません。

マイホームを購入する場合、住宅ローンの返済額が家賃と同程度の金額なら大丈夫と考える人もいらっしゃいます。ですが、住宅ローン返済以外にも前述した通り、修繕費や税金の支払いが発生します。

これらの費用はすべて家計支出に直結するものですから、こうした費用も考慮した上で返済計画を立てることが必要です。また、できるだけ節約をして、リスクに備えた貯蓄を続けることが望ましいと言えるでしょう。

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(最終更新日:2019.10.05)
※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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