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2017年4月より住宅ローン【フラット35】の新しい金利優遇制度として「子育て支援型」「地域活性化型」がスタートしましたが、さらに、2018年4月より「地域活性化型」に「空き家活用」が加わり、空き家バンクに登録されている住宅の取得時に、金利が優遇される制度が追加されました。【フラット35】の優遇金利制度の活用法について紹介します。

そもそもこの制度がスタートした背景は?

まず制度が始まった背景から見ていきましょう。安倍内閣が掲げる政策のひとつに「2025年度までに希望出生率1.8」という目標があります。これは「一億総活躍社会の実現」のために打ち出した目標値の1つです。

日本の合計特殊出生率は2016年の時点で1.44。2016年に生まれた子どもの数は1899年に統計を取り始めてから初めて100万人を割り込んでおり、少子化は深刻な状況です。

生産人口が減少すれば日本の経済成長も鈍ってしまうため、出生率の向上は日本にとって重要な課題であり、政府は子育て支援に力をいれています。そのひとつが【フラット35】子育て支援型といえます。

また、制度導入の背景には「子育てをするのであれば一戸建ての持ち家を取得したいけれども、年収が減って住宅価格は上昇している中では住宅を取得できず、賃貸暮らしを続けている世帯が多い」といった世の中の住宅取得事情もあるようです。

さらに、地方都市の人口減少も深刻な問題となっているので、地方創生や地域の活性化に役立つ地方移住に伴う住宅取得を支援する目的もあります。

具体的にどの程度の金利優遇が受けられる?

子育て支援型・地域活性化型は、収入が低い若年層の子育て世帯の住宅取得やUターンやIターンなどによる地方への移住を支援するために実施される制度で、【フラット35】の金利を当初5年間0.25%引き下げる金利優遇措置のことです。

つまりこの制度は、住宅取得をする際に、「地方公共団体による補助金交付などの援助」と「【フラット35】の金利引き下げ」を同時に受けられる制度なのです。

ただし、どのようなケースでも対象となるわけではなく、まず地方公共団体で住宅購入・建設に対して補助制度を導入していることが必要で、かつ適用要件は地方公共団体が決めるため、適用を受けられるかは建築地の地方自治体次第となっている点には注意が必要です。(利用が可能な地方公共団体は住宅金融支援機構のホームページで確認ができます)

【制度の主な概要など】

   内容  対象者など  対象となる住宅
【フラット35】子育て支援型  子育て支援  若年子育て世帯  中古住宅
 若年子育て世帯・親世帯による同居、近居  新築住宅/中古住宅
【フラット35】地域活性化型  UIJターン  UIJターンをきっかけとして住宅を取得  新築住宅/中古住宅
 コンパクトシティ形成  居住誘導区域内に移住
 空き家活用  空き家バンクに登録されている住宅を取得

※UIJターン…UターンやJターンなど大都市圏に住んでいた人が地方に移住する動きの総称
※居住誘導区域内…地方公共団体が居住を誘導するべき区域として独自に決めるもの

なお、子育て支援型においての若年層がどの年齢層に該当するのか、親世帯の同居や近居などの詳細については地方公共団体が個別に決めます。一般的には「子どもは出産前~中学生以下」「若年層とは40歳以下」といった条件が多いようです。

地域によっては、子育て支援型は導入していても、親・子・孫の三世代同居、小学生以下の子どもが同居しており、かつ親が近居していること、夫婦とも40歳以下の世帯が地域内に住む親と同居すること、など様々な細かい要件が決められているケースや、区域内に住む親の居住期間が5年以上など居住期間の要件があるケースもあります。自分が活用しようと思う地域に制度があるのか、どんな世帯が対象となるのかを調べておく必要がありますね。

なお、親世帯との同居・近居を目的とした住宅取得の場合、地域移住に伴う住宅取得は、新築・中古のいずれでも構いませんが、若年層が住宅を取得する際は中古住宅の取得のみが対象となっています。

また、あくまでも住宅取得支援策なので借り換え資金には利用できません。

【フラット35】の金利優遇制度は併用できる

【フラット35】Sと【フラット35】子育て支援型・地域活性化型の金利優遇は一緒に活用することができます。なお、【フラット35】S、【フラット35】リノベとの併用も可能ですが、【フラット35】子育て支援型と【フラット35】地域活性化型を併用することはできません。

制度を活用することでどの程度の効果があるのかを見てみましょう。

【フラット35】S(Aタイプ)とフラット35子育て支援型を併用した時のイメージ

※【フラット35】S(金利Aタイプ)は、平成29年10月1日以後の申込受付分から当初10年間 年▲0.25%に優遇幅が引き下げに変わっています。

【金利優遇を受けた場合に返済額はどうなる?】

<条件>
当初借入金額:3,000万円
借入期間:35年
返済方法:元利均等返済、ボーナス返済なし
金利:1.37%(2018年6月)
借入期間21年以上
融資率9割以下の最頻金利

   【フラット35】  【フラット35】S(Aプラン)  【フラット35】子育て支援型・地域活性化型  【フラット35】S(Aプラン)と子育て支援型・地域活性化型の併用
 借入金利  1.37%

 当初10年:1.12%

11年目以降:1.37%

 当初5年:1.12%

6年目以降:1.37%

 当初5年:0.87%

6~10年:1.12%

11年目以降:1.37%

 返済額  8万9,956円

 当初10年:8万6,373円

11年目以降:8万8,978円

 当初5年:8万6,373円

6年目以降:8万9,471円

 当初5年:8万2,880円

6~10年:8万5,393円

11年目以降:8万8,483円

 返済総額  3,778万1,766円  3,705万8,064円  3,739万2,140円  3,667万1,277円
 【フラット35】との差額  –  ▲72万3,702円  ▲38万9,626円  ▲110万489円

※上記の金利は通常の機構団信信用生命料込の金利。その他の経費は考慮せず
※住宅金融支援機構:【フラット35】ローンシミュレーションにて試算

若年層が長期優良住宅を建築する場合などは、大きな金利優遇が受けられ、かつ全期間固定金利型、しかもその他に地方公共団体の補助金制度も受けられるので、使える人はしっかり活用を検討したいものですね。また、【フラット35】の団体信用生命保険が「金利込」になり、合わせて介護保障がプラスされるなど改正されているので、比較をする際にはそれらも考慮することを忘れずに。

(参考記事:【フラット35】の団体信用生命保険の商品性が大きく変更。FPが詳しく解説

なお、【フラット35】の金利優遇政策には予算が決められており、予算に達し次第、申込受付が終了します。受付終了の3週間前に住宅金融支援機構のホームページに掲載されるので、チェックしておきましょう。

2018年の4月からは空き家バンクに登録されている物件を取得する際にも適用

2018年4月以降、【フラット35】地域活性化型に「空き家対策」を追加して空き家バンクの登録住宅を取得する際、あるいは空き家のリフォームに対して【フラット35】の適用金利を当初5年間、年0.25%引き下げます。

日本では現在、空き家は約820万戸(住宅・土地統計調査 総務省2013年)、総住宅数に占める空き家の数(空き家率)は2013年では13.5%と7~8戸に1戸が空き家となっており、特に地方で空き家問題は深刻です。そこで、住宅金融支援機構は、補助金などの財政的な支援を含め空き家解消につながる取り組みを積極的に実施している自治体と協定を結び、空き家の増加抑制に取り組むことにしたのです。

ちなみにこの場合の「空き家」は、空き家バンクに登録している物件が対象で、空き家バンクは、自治体ごとのものでも、国土交通省が推進する全国版空き家バンクのものでも、どちらでも構わないとのことです。

子育て支援型や地域活性化型はどんなときに活用を考える?

この制度は、地方公共団体によって細かく利用できる要件が決まっているので、利用条件に合わせて住宅取得計画を立てる、というのは難しいといえます。

したがって、子育て世帯が中古住宅を取得する、子育て世帯が親と同居・近居することを考える、IターンやUターンをするといった場合には、制度が使えるかしっかりチェックして、条件が合えば活用するスタンスになるでしょう。

特に、子育て世帯が親と同居・近居するためにバリアフリー性が高い住宅や長期優良住宅を取得・建設する、あるいは地方に移住するために長期優良住宅を取得するといった場合など、【フラット35】Sと子育て支援型あるいは地域活性化型を併用できるケースであれば、金利優遇が大きくなるため、非常に有利といえます。

また、親が高齢となったことをきっかけに、地元に帰って同居するために家を建て替える、二世帯や三世代住宅を取得するといったケースでも検討の余地があるでしょう。

なお、地域によっては、【フラット35】の金利優遇に加えて、大きな補助金が受けられるケースもあります。例えば、千葉県松戸市では、「子育て世帯(中学生以下の子ども、出産予定含む)が市内に住む親世帯(親世帯は市内に1年以上継続して居住)と近居または同居するために、市内に住宅を取得する場合」、金利優遇に加えて最大100万円の補助金を受けられます。

補助金を受けられるから近居あるいは同居する、地元に戻るというのは現実的とはいえませんが、同居や近居、地元に戻るという選択肢も自分の住宅取得計画の中にあるのであれば、制度の活用を判断基準のひとつにしても良いかもしれませんね。

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この記事の筆者
金子千春 ファイナンシャル・プランナー

千春コンサルティング事務所 代表
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、1級ファイナンシャル技能士、宅地建物取引主任者、住宅ローンアドバイザー

新生銀行を経て2004年より独立。ライフプランや住宅ローンセミナー、個別相談、宅建講師、企業の従業員向け投資教育、小中学校や児童館での金銭教育など、「知らないで損をする」ことのないようにという観点から、講師や執筆を中心に活動中。

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