マイホーム特化型の「財形住宅貯蓄」とは? 金利やメリット、デメリット解説

厚生労働省の調査(※)によると、従業員30人以上の企業の41.4%、1,000人以上の大企業なら75.5%が財形貯蓄制度を導入しているとのこと。せっかくの福利厚生制度ですから、利用したいと思う方も多いのではないでしょうか? そこで今回は、財形貯蓄制度の中でもマイホーム取得資金を準備できる財形住宅貯蓄について見てみます。

※「財形制度をめぐる状況及び平成26年度の業務実施状況について」より

財形貯蓄には目的に合わせた3種類がある

財形貯蓄制度とは厚生労働省所管の「勤労者財産形成促進法」に基づいて導入された勤労者が財産を形成するための制度です。勤労者の貯蓄や住宅購入などの財産形成を促進することで勤労者の生活の安定や日本経済の発展を図ることを目的としています。誰でも利用できるわけではなく、この制度を導入している企業の従業員しか対象になりません。

財形貯蓄は「旅行資金や結婚資金など生活資金準備が目的の一般財形貯蓄」「住宅取得やリフォーム資金準備が目的の財形住宅貯蓄」「老後の資金を貯めるための財形年金貯蓄」の目的に合わせた3種類あります。それぞれの主な特徴を簡単にまとめました。

<財形貯蓄制度の概要>

  一般財形 財形住宅 財形年金
目的 生活資金準備など(結婚、教育費、車購入、旅行など目的は自由) 住宅取得、リフォーム資金の準備(繰り上げ返済資金は目的外) 老後のための資産形成
積立 給与天引きや賞与天引き(単位などは企業によって異なる)
対象 契約時の年齢制限なし 契約時点で55歳未満の勤労者(5年以上の積み立てが必要)
金利 企業が契約を結ぶ金融機関によって商品も異なるため金利も異なる
中途解約 1年経過すれば自由に可能 目的外の払い出しは5年に遡って利息に20.315%の課税
税金 利息に対して20.315%の源泉分離課税 財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄あわせて元利合計550万円までの利息分が非課税 財形住宅貯蓄と財形住宅貯蓄あわせて元利合計550万円までの利息分が非課税(ただし、郵便貯金、生命保険又は損害保険の保険料、生命共済の共済掛金、簡易保険の掛金等に係るものにあっては払込ベースで385万円までの利息分が非課税)
その他 ・いずれかの財形貯蓄の積み立てを1年以上継続して行っていて、残高が50万円以上あれば、財形持家転貸融資(財形住宅融資)を受けることが可能
・勤務先によっては、積立金の●%といった奨励金制度あり
・財形年金貯蓄は60歳以降の決められた時期から5年以上の期間にわたっての年金で受け取りができ、年金支払が終了するまで非課税措置が続く

まず、自分のライフプランにおいて、「いつまでに」「何のために」「いくら」準備する必要があるかをイメージして、旅行や車を買うための資金は一般財形、住宅取得やリフォーム資金準備には住宅財形など、目的に合わせてうまく組み合わせて活用すると良いでしょう。

財形住宅貯蓄を活用するメリットは?

では、財形住宅貯蓄を活用するメリットはどこにあるのでしょうか? 主なメリットは4つです。

【メリット1】

まず、1つ目は給与天引きで自動的に確実に積み立てができる点です。手取りの中から積み立てをしようと思うと、他のことで使ってしまって計画的に積み立てができないケースもあるでしょう。財形は最初だけ手続きをすれば、あとは自動的に「先取り貯蓄」ができるので、少しずつ確実に資金を準備することが可能です。

また、財形は普通預金のようにすぐに引き出すことができません。所定の手続きが必要ですし、実際に手元にお金が入ってくるのに時間がかかるので、「引き出しにくい」ということもポイントですね。

現在は金利が非常に低いので、「運用の効率性」から考えると大きなメリットはありませんが、「10年後に家を買う頭金を貯める」「10年後のリフォーム資金を貯める」といった目的を達成するための仕組みとしてはとても効果的といえます。お金を貯めるコツのひとつは「先取り貯蓄」。手元にあると使ってしまって、なかなかお金が貯まらない人にはとても効果的な仕組みです。

【メリット2】

2つ目は、運用で出た利息に税金がかからない、という点です。通常は定期や普通預金など運用して出た利息については20.315%の税金がかかります。一方で、財形住宅貯蓄は財形年金貯蓄とあわせて元利合計550万円までは非課税で運用することができます。ただし、現状では金利が非常に低いため、一般のネット銀行などの方が税金を控除しても利息が多いケースもあるため、非課税のメリットはおまけ程度、と考えておいても良いでしょう。

【メリット3】

3つ目は、財形持家転貸融資(財形住宅融資)を利用することができる点です。ただし、財形住宅融資は、財形住宅貯蓄だけでなく、いずれかの財形貯蓄の積み立てを1年以上継続して行っていて、残高が50万円以上あれば、利用することができるため、この点は財形貯蓄全般を活用するメリットといえます。

なお、財形住宅融資は、財形貯蓄を1年以上していて、申込日前2年以内に財形貯蓄の預け入れを行い、かつ申込時点の財形貯蓄残高が50万円以上ある人が、残高の10倍(最高4,000万円)まで、住宅取得(一定の要件あり)に必要なお金の90%まで融資を受けることができる制度です。

ちなみに、財形住宅融資には、

1.財住金(財形住宅金融株式会社):勤務先企業や所属する中小企業団体が財住金に出資しているケース
2.勤務先:勤務先が事業主転貸を行っているケース
3.共済組合:公務員の方などで、共済組合等の窓口があるケース
4.住宅金融支援機構:上記1~3に当てはまらないケース

4種類の受付窓口があります。それぞれ手数料など制度の詳細が変わるので、自分のケースを確認しておきましょう。

最近では、民間の住宅ローン金利が非常に低水準なので、財形住宅を活用する絶対的なメリットはなくなりましたが、中小企業勤労者(常時雇用する労働者数が300人以下である企業に勤務している場合)や子ども等を扶養している場合には0.2%の金利引き下げが受けられる場合や勤務先によっては「利子補給」をしてくれる場合もあります。民間ローンよりも低金利で住宅ローンが組めるケースもあるので、うまく活用したいものですね。

【メリット4】

最後、4つ目のメリットですが、これも財形住宅に限ったことではないのですが、勤務先によっては、積立金の1~5%程度(企業によって異なり、限度額もあるのが一般的)の奨励金がもらえる点です。

この低金利時代に確実に貯められて、かつ奨励金がもらえることは非常に魅力的ですので、奨励金制度を導入しているのであれば、限度額まではしっかりと財形貯蓄を活用することをおすすめします。 

財形住宅貯蓄を活用する場合の注意点

では、財形住宅貯蓄を活用する場合の注意点も見ておきましょう。5年以内に引き出しをした、2年間積み立てがないといった場合、利子等に対する非課税措置が受けられなくなります(海外勤務をする方、3歳未満の子に係る育児休業を取得する方については、例外措置あり)。

また、財形住宅貯蓄で貯めた資金を教育資金に使う、繰り上げ返済に使うなど目的外の引き出しをした場合でも5年間遡って利息に課税されます。現在のような低金利では、もともと利息をほとんど期待できませんが、非課税というメリットも考えて利用した場合には全く意味がなくなるので注意しましょう。

また、財形貯蓄も預金保険制度での補償の対象ですが、財形も含めて合計1,000万円とその利息までが保護されます。財形は別枠で保護されるわけではない点にも注意が必要ですね。

住宅財形貯蓄は住宅資金準備として最適というわけではない

以上のように見てくると、住宅財形貯蓄は「勤務先に奨励金がある」のであれば非常に有利な仕組みではありますが、奨励金制度がないのであれば金利が高いネット銀行の定期預金などのほうが有利といえます。

ただし、財形は、給与天引きで確実に自動的に積み立てができるので、自分で計画的に積み立てができない人は積極的に活用をしましょう。

また、子育て世帯や中小企業勤労者に該当する、勤務先が利子補給を実施しているケースで民間ローンよりも低い金利で融資を受けられる場合であれば、財形住宅融資を活用することを視野に入れて、住宅財形貯蓄を活用する方法も効果的です。

なお、財形住宅貯蓄は「確実に貯める」ことを目的としているため、特に金利が低い現状では「増やす」ことはほとんど期待できません。「効率的にお金を運用する」ことも考えると「つみたてNISA」や「NISA」など、その他の仕組みも組み合わせて活用する工夫も必要といえますね。

まずは、自分の勤務先に財形貯蓄制度があるのか、金利はどうか、奨励金制度があるのかチェックして、住宅資金を準備するツールのひとつの選択肢として、自分にとっての有効活用を考えてみてはいかがでしょうか。

(最終更新日:2019.10.05)
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