転職後すぐに住宅ローンの“借り換え”はできるの?

転職と住宅ローン借り換えのタイミングが重なってしまった場合、転職後すぐでも借り換えをすることはできるのでしょうか。ほとんどの金融機関は「勤続年数」を審査項目にしていますが、転職したばかりだからといって、それだけで借り換えができなくなるわけではありません。では、転職後すぐでも借り換えができるのはどんな場合なのでしょうか。転職後に借り換えする場合の注意点とともにご説明します。

住宅ローンは勤続何年から借りられるの?

住宅ローンの審査は「物件」と「人」の両面からチェックが行われます。物件の審査は、購入する物件の資産価値がチェックされ、人の審査はローンを申し込んだ人が本当にきちんと返済できるのかどうかがチェックされます。

人の審査を行うための審査項目として、民間金融機関の多くは「勤続年数」をチェックしています。このことは、国土交通省による「平成29年度民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書」を見ると、92.7%の金融機関が「勤続年数」を審査項目としてあげていることからもわかります。勤続年数を審査項目にあげている金融機関のうち、約半数が「勤続年数1年以上」としており、次いで「勤続年数3年以上」「勤続年数2年以上」の順に多くなっています。

「住宅ローンは勤続何年から借りられるのか?」という質問に答えるのであれば、「勤続1年以上という基準でチェックしている金融機関が多い」ということができるでしょう。

【金融機関がチェックする審査項目】

審査項目 審査項目にあげた金融機関の割合
完済時年齢 97.2%
健康状態 96.7%
借入時年齢 95.6%
担保評価 95.5%
融資可能額(融資率)※借り換えの場合 94.4%
年収 93.6%
連帯保証 92.8%
勤続年数 92.7%

※「平成29年度民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書」より抜粋

ですが、実際には、勤続年数が一定期間以上でなければ絶対に融資を受けられないというわけではありません。金融機関のホームページを見ると、利用条件として具体的に「給与所得者の場合は、勤続年数1年以上の方、給与所得者以外の場合は、勤続または営業年数が3年以上の方」などと明記しているところもあれば、たとえば「安定した収入のある方」と明確な勤続年数の基準を示していないところもあります。勤続年数の条件を設定していない金融機関であれば、転職から間もない場合であっても、融資の申込みをすることができます。

冒頭でお伝えしたように、金融機関がチェックするのは、「ローンを申し込んだ人が本当に返済できるのか」ということです。勤続年数は複数の審査項目の1つでしかありません。確かに、勤続年数が短い場合には融資審査が厳しくなると思われますが、勤続年数が短いというだけで審査に通らないというわけではありません。住宅ローン融資の可否は、その人の返済能力を総合的に判断して決められるため、返済能力に問題がないと判断されれば、転職後すぐでも住宅ローンの借り換えが可能なケースもあるのです。

転職後すぐに借り換えをしたい! どうすればいい?

では、転職後すぐに借り換えをしたい場合にはどうしたらいいのでしょうか。以前と比べると転職が一般的になっていることもあり、転職後、一定の勤続年数を経ていない場合であっても、住宅ローンの借り換え審査に通るケースもあるのは先にお話しした通りです。

審査の際に金融機関が重視するのは、「キャリアアップになる転職かどうか」という点です。そのため、たとえば「同じ業界内での転職で収入がアップした」「同じ業界内の優良企業に転職した」といった場合であればキャリアアップの転職とみなされて、勤続年数の基準を満たしていなくても審査が通る可能性があるといえるでしょう。

逆に、転職によって年収が下がってしまった、これまでのキャリアとまったく関係のない業界・職種に転職したといった場合には、審査は厳しくなると考えられます。

実際に、転職から1年以内であっても、何の問題もなく住宅ローンの審査に通ったケースはあります。ただし、優遇金利といわれる金利の引き下げ幅が小さくなったり、保証料が割高になったりといった条件付きで融資が承認される場合もあることは知っておいていただきたいところです。

いずれにしろ、転職直後に住宅ローンの借り換えをしたいという場合には、まずは金融機関に相談してみましょう。

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【フラット35】なら勤続年数の要件はない

勤続年数の要件がない住宅ローンとしては、まず【フラット35】があげられます。勤務先に「転職後の収入を証明する書類」を作成してもらえば、その書類に記入された転職後の収入を給与の支給された月数で割り戻し、その金額を年収とみなして審査が行われます。そのため、転職後に最低1ヶ月は働き、1度は給与を受給している必要があります。

また個人事業主の場合、1回目の確定申告を終えていれば申込みが可能です(※参考:「Q.転職をしている場合でも借り換えはできますか」:アルヒ株式会社)。

転職後、間もない時期に住宅ローンの借り換えを考えられる場合は、まずは【フラット35】の利用を検討してみてはいかがでしょうか。

「みなし年収」で審査してくれる金融機関もある?

【フラット35】のように、みなし年収で住宅ローン審査をしてくれる金融機関はあるのでしょうか。

たとえば、楽天銀行の場合、転職後間もない場合でも、勤務先から給与証明書を発行してもらえば、その証明された金額からその年の年収を算定して審査が行われます。

また、ソニー銀行でも勤続年数による申込み条件は設けられておらず、その年の年収見込証明書や転職後の給与明細等を提出すれば、融資の申込みをすることができます。

楽天銀行、ソニー銀行に限らず、勤続年数の申込み条件がない金融機関であれば、転職直後でも住宅ローン融資の申込みをすることが可能です。その場合、源泉徴収票で年収を証明することができないため、収入があることを証明できる書類を提出すれば、みなし年収で審査が行われると考えられます。

ここで各金融機関の勤続年数の条件についてまとめておきます。金融機関によって対応が異なるので、融資の申込みを検討している金融機関に、事前に問い合わせてください。

【各金融機関の勤続年数の条件】

金融機関 勤続年数の条件 備考
三井住友銀行 特になし 必要書類の提出の他、転職の経緯や再就職後の収支計画を聞かれる場合あり
みずほ銀行 特になし 安定した収入があり、保証会社の保証を受けられることが条件
三菱UFJ銀行 特になし 保証会社の保証が受けられることが条件
りそな銀行 勤続1年以上 給与所得者以外は、勤続または営業年数が3年以上
新生銀行 連続した就業2年以上 自営業者は業歴2年以上
楽天銀行 特になし 年収見込証明書や転職後の給与明細等を提出
ソニー銀行 特になし 年収見込証明書や転職後の給与明細等を提出
住信SBIネット銀行 転職後3ヶ月が経過していること 年収見込証明書や転職後の給与明細等を提出
イオン銀行 勤続6ヶ月以上 個人事業主、会社経営者は、事業開始後3年経過

※各金融機関のホームページより筆者作成

借り換えでなく金利の引き下げ交渉をするのもあり?

転職直後の住宅ローン借り換えが難しいのであれば、現在借り入れ中の住宅ローン金利の引き下げ交渉をしたらどうかと考える人もいることでしょう。結論から申し上げれば、住宅ローンの金利引き下げについて金融機関と交渉することは可能です。

ただし、金利の引き下げを認めてもらうには再審査が必要になります。その際、勤務先についても再審査されることになりますから、転職したことは金融機関に知られてしまいます。そのため、借り換えができないのであれば、金利引き下げ交渉をすればいいと安易に考えることはできません。

この場合も、転職によって年収が上がったなどキャリアアップした場合には、有利に働く可能性もありますが、年収が下がってしまったといった場合には、金利の引き下げに応じてもらうのは非常に難しいといえるでしょう。むしろ金融機関は、収入が下がることで返済が滞るリスクが高まることを気にするはずです。

もしも転職で収入が下がり、返済を続けていくことに不安がある場合には、早めに金融機関に連絡して返済計画の見直しなどを相談するべきでしょう。

転職後の借り換えで注意すべき点は?

最後に、転職後の住宅ローン借り換えで注意すべき点をお伝えしておきましょう。

転職でキャリアアップに成功し、借り換えを行う場合であっても、返済計画については慎重に検討しなければなりません。収入が増えたからといって、安易に毎月返済額を増やしてしまうと、何か不測の事態が起きた場合に返済を続けられなくなるリスクが高まってしまいます。

借り換えによって返済の負担を軽減することが本来の目的ですから、仮にそのようなことになってしまっては本末転倒です。必ず、無理のない返済計画を組むようにしてください。

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(最終更新日:2022.03.09)
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