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住宅を取得する時は、ライフプランやマネープランを立案する絶好のチャンスです。またこの時にこそ、プランに基づいた長期的な収支の変化を試算した上で住宅価格を決めないと、後悔することになりかねません。多額の借金を抱えることが多い住宅取得時は特に、事前の慎重な検討と判断が、将来の家計に安心をもたらします。

多額なローンを抱えるだけに、住宅購入のタイミングにはライフプラン計画が欠かせない

人生のライフイベントの中でも、住宅購入のタイミングは特別です。なぜなら他の多くのライフイベント費用は、一般的に、毎年の収入の中から支出したり、コツコツと時間をかけて積み立てて事前に準備をします。しかし、住宅の価格は数千万円などと大きいだけに、多くの人は資金のすべてをあらかじめ準備することができません。頭金や諸経費程度の自己資金を準備するのが精一杯です。自己資金でカバーできない部分は住宅ローンを借りることになり、借入額は数千万円に及び、返済期間も長期に渡ります。

「住宅は人生で最大の買い物」とはよく言われますが、同時に人生で最大の借金を抱えることでもあります。教育資金や自動車の購入資金などのためにローンを組む方もいますが、それらの借入額は多くても数百万円台と比較的少額で、返済期間は住宅ローンよりも短期間です。

住宅ローンは、住宅を取得したあとの家計に多大な影響を与えます。借りたお金は返さなければなりません。借入額が多ければ多いほど毎月の返済額も大きくなり、返済期間も長くなりがちです。住宅の取得を考え始める時期は、結婚して子どもができ、その後しばらく経ったころが多いでしょう。住宅を取得したあとも、子どもの教育や旅行、レジャー、自動車、趣味、リフォーム、夫婦の老後など、さまざまなライフイベントが待ち構えています。これらの実現に大きな希望や夢、こだわりを持っていたとしても、住宅ローンを借りてしまうと、その返済を優先しなければならなくなるため、他のライフイベントの費用を圧縮したり、断念せざるを得ないかもしれません。

そうならないようにするには、住宅を取得する前に、他のライフイベントの時期と必要資金を見積もり、ライフイベント全体のバランスをとって一生涯お金に困らずに暮らせるかどうかを確認する必要があります。このことを確認するプロセスの中で、「住宅にいくらかけるか?」を決めるのです。

「教育資金」と「老後資金」との関係が特に大事

さまざまなライフイベントの中でも特に重要なのが、教育資金、老後資金と住宅ローンとの関係です。「住宅資金」、「教育資金」、「老後資金」は人生の3大資金と言われるだけあって、いずれかに偏ったお金の使い方をしてしまうと、その後の暮らしを満足に送ることができなくなる可能性があります。

事例で考えてみましょう。

【世帯構成】
・世帯主:35歳、会社員、定年60歳、その後65歳までは再雇用を選択する予定
・配偶者:33歳、専業主婦でパート収入あり。パートは末子が大学卒業まで継続の予定
・子どもA:4歳
・子どもB:2歳
◆住宅資金:世帯主36歳時に住宅を取得し、自己資金600万円、住宅ローンは年間返済額180万円、返済期間30年を想定
◆教育資金:子どもは2人とも高校までは公立、大学は私立文系を想定
◆老後資金:収入は公的年金、退職金等があるが、自助努力で定年までに退職金(1,800万円)とは別に1,000万円の老後資金の準備が必要と考える

これらを踏まえ、キャッシュフロー表を作成してみました。

世帯主35歳~40歳のケース:住宅を取得する場合のキャッシュフロー表

【世帯主35歳~40歳のケース:住宅を取得する場合のキャッシュフロー表】 (単位:万円)

世帯主:年齢 35歳 36歳 37歳 38歳 39歳 40歳
配偶者:年齢 33歳 34歳 35歳 36歳 37歳 38歳
子供A:年齢 4歳 5歳 6歳 7歳 8歳 9歳
子供B:年齢 2歳 3歳 4歳 5歳 6歳 7歳
収入 世帯主 550 550 550 550 550 550
配偶者 100 100 100 100 100 100
収入合計 650 650 650 650 650 650
支出 教育費A 25 25 25 35 35 35
教育費B 25 25 25 25 35
住宅ローン 180 180 180 180 180
生活費その他 360 960 360 360 360 360
支出合計 385 1,190 590 600 600 610
収支 265 -540 60 50 50 40
金融資産残高 1,065 525 585 635 685 725

世帯主41歳~45歳のケース:住宅を取得する場合のキャッシュフロー表

【世帯主41歳~45歳のケース:住宅を取得する場合のキャッシュフロー表】(単位:万円)

世帯主:年齢 41歳 42歳 43歳 44歳 45歳
配偶者:年齢 39歳 40歳 41歳 42歳 43歳
子供A:年齢 10歳 11歳 12歳 13歳 14歳
子供B:年齢 8歳 9歳 10歳 11歳 12歳
収入 世帯主 550 550 550 550 550
配偶者 100 100 100 100 100
収入合計 650 650 650 650 650
支出 教育費A 35 35 35 45 45
教育費B 35 35 35 35 35
住宅ローン 180 180 180 180 180
生活費その他 360 360 360 360 360
支出合計 610 610 610 620 620
収支 40 40 40 30 30
金融資産残高 765 805 845 875 905

世帯主46歳~50歳のケース:住宅を取得する場合のキャッシュフロー表

【世帯主46歳~50歳のケース:住宅を取得する場合のキャッシュフロー表】(単位:万円)

世帯主:年齢 46歳 47歳 48歳 49歳 50歳
配偶者:年齢 44歳 45歳 46歳 47歳 48歳
子供A:年齢 15歳 16歳 17歳 18歳 19歳
子供B:年齢 13歳 14歳 15歳 16歳 17歳
収入 世帯主 550 550 550 550 550
配偶者 100 100 100 100 100
収入合計 650 650 650 650 650
支出 教育費A 45 50 50 50 200
教育費B 45 45 45 50 50
住宅ローン 180 180 180 180 180
生活費その他 360 360 360 360 360
支出合計 630 635 635 640 790
収支 20 15 15 10 -140
金融資産残高 925 940 955 965 825

世帯主51歳~55歳のケース:住宅を取得する場合のキャッシュフロー表

【世帯主51歳~55歳のケース:住宅を取得する場合のキャッシュフロー表】(単位:万円)

世帯主:年齢 51歳 52歳 53歳 54歳 55歳
配偶者:年齢 49歳 50歳 51歳 52歳 53歳
子供A:年齢 20歳 21歳 22歳 23歳 24歳
子供B:年齢 18歳 19歳 20歳 21歳 22歳
収入 世帯主 550 550 550 550 550
配偶者 100 100 100 100 100
収入合計 650 650 650 650 650
支出 教育費A 100 100 100
教育費B 50 200 100 100 100
住宅ローン 180 180 180 180 180
生活費その他 360 360 360 360 360
支出合計 690 840 740 640 640
収支 -40 -190 -90 10 10
金融資産残高 785 595 505 515 525

世帯主56歳~60歳のケース:住宅を取得する場合のキャッシュフロー表

【世帯主56歳~60歳のケース:住宅を取得する場合のキャッシュフロー表】(単位:万円)

世帯主:年齢 56歳 57歳 58歳 59歳 60歳
配偶者:年齢 54歳 55歳 56歳 57歳 58歳
子供A:年齢 25歳 26歳 27歳 28歳 29歳
子供B:年齢 23歳 24歳 25歳 26歳 27歳
収入 世帯主 550 550 550 550 2,350
配偶者
収入合計 550 550 550 550 2,350
支出 教育費A
教育費B
住宅ローン 180 180 180 180 180
生活費その他 360 360 360 360 360
支出合計 540 540 540 540 540
収支 10 10 10 10 1,810
金融資産残高 535 545 555 565 2,375

世帯主61歳~65歳のケース:住宅を取得する場合のキャッシュフロー表

【世帯主61歳~65歳のケース:住宅を取得する場合のキャッシュフロー表】(単位:万円)

世帯主:年齢 61歳 62歳 63歳 64歳 65歳
配偶者:年齢 59歳 60歳 61歳 62歳 63歳
子供A:年齢 30歳 31歳 32歳 33歳 34歳
子供B:年齢 28歳 29歳 30歳 31歳 32歳
収入 世帯主 300 300 300 300 300
配偶者
収入合計 300 300 300 300 300
支出 教育費A
教育費B
住宅ローン 180 180 180 180 180
生活費その他 360 360 250 250 250
支出合計 540 540 430 430 430
収支 -240 -240 -130 -130 -130
金融資産残高 2,135 1,895 1,765 1,635 1,505

上の表のように、仮に住宅ローンの年間返済額を180万円(毎月15万円)とすると、定年年齢の60歳時の金融資産残高2,375万円から退職金1,800万円を差し引いた自助努力による貯蓄額は575万円となり、目標の1,000万円に届きません。

そこで、住宅ローンの年間返済額を160万円(毎月13万3,300円)に変更してみます。すると自助努力による貯蓄額は1,075万円となり、目標の1,000万円に達します。

このように、住宅ローンの年間返済額を決めると、借入額の目安を把握することができ、借入額に頭金を加えた金額が、住宅の予算になります。

住宅の予算の見直しだけでなく、その他の方法も検討する

事例では、将来の教育資金や老後資金に配慮して、住宅の予算を当初の想定より減額しましたが、その他の方法を検討することもできます。

たとえば、世帯の収入をアップする確実な手立てがあったり、生活費等を継続的に節約することができるのであれば、住宅予算を減らす必要はないでしょう。また、将来、夫婦の親からの相続財産が期待できるようなら、老後に向けた自助努力での貯蓄はもっと少なくてよいかもしれません。このように、さまざまな視点、観点から検討を加えることができます。

最も大切なことは、住宅購入のタイミングをキッカケにして、家族の将来を具体的に考えてみることです。ただ頭の中でぼんやりと考えるだけでなく、紙に書き出してみるのです。紙に書き出すことによってはじめて、自分が何を考えていたのか、あるいは、何を考えていなかったかがわかります。また、夫婦がお互いの考えを擦り合わせることができます。家族共通の目標を設定することもできるのです。

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この記事の筆者
中村宏 ファイナンシャル・プランナー

ファイナンシャル・プランナー(CFP)、住宅ローンアドバイザー

個人相談、セミナー講師、新聞や雑誌・Webの記事執筆や取材協力が主な業務。
暮らしのお金に関するお役立ち情報として、無料のメールマガジン「生活マネー ミニ講座」(平日:毎日)を配信中。

FPオフィス ワーク・ワークス代表

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