二世帯住宅、快適に暮らすためにはどのくらいの広さが必要?

この記事は、今需要が伸びてきている二世帯住宅に焦点を当て、快適に暮らせる間取りについて紹介する全2回の連載コラムです。前編はこちら>>「二世帯住宅の理想の間取りは? 需要が伸びている“完全分離型”を徹底解剖!

前回、親世帯・子世帯のプライベートが守られる「完全分離型」の二世帯住宅について紹介しましたが、2つの住宅が一部のみでつながっている完全分離型は「家が広くなりすぎて、持て余してしまうのでは?」という心配も残ります。

一方、すべてを共用する「完全同居型」、“キッチン”と“バスルーム”などの水回り部分のコストがかかる設備のみを共用する「一部共用型」は、共用する部分が少ないほど、家はコンパクトに納められますが、「窮屈になって、居心地の悪い家になったらどうしよう」との不安も。そこで今回は、それぞれの世帯が気持ちよく暮らせる二世帯住宅の広さを、タイプ別にARUHIマガジン編集部が調べてみました。

家族構成、確保したい部屋の種類と数から考える

一般的に家の面積は、必要な部屋の広さを合計し、その面積を1.6~1.8倍することで割り出せると考えられています。親世帯は夫婦2人、子世帯は夫婦2人と子ども2人の家族構成と想定し、確保したい部屋の種類と数を踏まえ、二世帯住宅のタイプ別に必要な広さを考えてみましょう。

「完全同居型」で確保したい部屋の種類と広さは?

キッチンや風呂、トイレなどの水回りや、リビングなどの居住空間、玄関など、すべてを共用する「完全同居型」。親世帯と子世帯それぞれの寝室と、子ども部屋を設ければ必要な部屋はそろいます。

リビングとダイニングで12畳、子世帯・親世帯の寝室を各8畳、いずれ独立する子どもの部屋はややコンパクトに4.5畳×2、納戸または室内の洗濯干し場を3畳と仮定し計算すると、12+8+8+4.5+4.5+3=40畳(約20坪)。

これを1.6~1.8倍すると32~36坪となります。単一世帯と同等の広さで、コストも抑えられます。資金に余裕があれば、家族がそろうリビングダイニングを15~18畳程度に広くしたり、子ども部屋にロフトを付けて収納を増やしたりしてもいいですね。

【「完全同居型」確保したい部屋の種類と広さ】

家族構成:親世帯「夫婦2人」、子世帯:「夫婦2人と子ども2人」の場合
部屋の種類 親世帯 子世帯
リビングダイニング 12畳
寝室 8畳 8畳
子ども部屋 - 4.5畳×2
納戸または室内の洗濯干し場 3畳
合計 40畳(約20坪)
(坪数換算:1.6~1.8倍) 32~36坪

 

「一部共用型」で確保したい部屋の種類と広さは?

このタイプはどこを共用するのかで必要な広さは変わってきます。リクルート住まいカンパニーが実施した注文住宅傾向・トレンド調査によると、一部共用タイプが共用している部分は、

第1位:玄関(78.4%)、第2位:風呂(75.0%)、第3位:キッチン(38.8%)

という結果が報告されており、リビングダイニングや洗面所、トイレなどは各世帯で設けているケースも多いようです。

特に、リビングダイニングをそれぞれに設ける場合はより広い面積が必要となります。完全同居型と同様に広さを計算すると、リビングダイニング12畳×2、子世帯・親世帯の寝室8畳×2、子ども部屋4.5畳×2、納戸等3畳で、合計52畳(26坪)。これを1.6~1.8倍すると、41.6~46.8坪となります。もう少し縮小したい場合、夫婦2人が使う親世帯の寝室やリビングダイニングをコンパクトにしてもいいですね。

【「一部共用型」確保したい部屋の種類と広さ】

家族構成:親世帯「夫婦2人」、子世帯:「夫婦2人と子ども2人」の場合
部屋の種類 親世帯 子世帯
リビングダイニング 12畳 12畳
寝室 8畳 8畳
子ども部屋 - 4.5畳×2
納戸 3畳
合計 52畳(26坪)
(坪数換算:1.6~1.8倍) 41.6~46.8坪

 

完全分離型の「上下分離」と「左右分離」で確保したい部屋の種類と広さは?

完全分離型は上下で分けるのか、左右で分けるのかで広さが大きく変わります。

<上下分離>

ほぼ同じ間取りが1階、2階に作れる上下分離型は、最も広さを要します。一般的に、階段を使わなくてよい1階を親世帯、2階を子世帯が使用することが多いです。しかし、親世帯に子ども部屋が必要ないため、やや空間を持て余してしまいます。その分リビングダイニングを広くして縁側を設けたり、趣味の部屋を作るのもいいでしょう。

1階、2階ともに同等の広さになるので、子世帯はリビングダイニング12畳、寝室8畳、子ども部屋4.5畳×2、納戸等3畳、親世帯がリビングダイニング12畳、寝室8畳、趣味の部屋等9畳、納戸等3畳と想定すると、合計64畳(32坪)。これを1.6~1.8倍すると、51.2~57.8坪となります。

【「完全分離型:上下分離型」確保したい部屋の種類と広さ】

家族構成:親世帯「夫婦2人」、子世帯:「夫婦2人と子ども2人」の場合
部屋の種類 親世帯 子世帯
リビングダイニング 12畳 12畳
寝室 8畳 8畳
子ども部屋 - 4.5畳×2
納戸 3畳 3畳
趣味部屋 9畳 -
合計 64畳(32坪)
(坪数換算:1.6~1.8倍) 51.2~57.8坪

<左右分離>

各世帯の居住空間を独立して作れる左右分離型は、それぞれに必要なものをそろえられるため、柔軟に間取りを考えられます。親世帯は子ども部屋が必要なく、上下階の移動も煩わしいため、すべての部屋をコンパクトにしてバリアフリーの平屋にし、子世帯は子ども部屋や広いリビングがしっかり作れる2階建てにしてもよいでしょう。例えば、親世帯をリビングダイニング8畳、寝室6畳、納戸等3畳。子世帯をリビングダイニング12畳、寝室8畳、子ども部屋4.5畳×2、納戸等3畳とすると、合計は49畳(24.5坪)。これを1.6~1.8倍すると、39.2~44.1坪となります。

【「完全分離型:左右分離型」確保したい部屋の種類と広さ】

家族構成:親世帯「夫婦2人」、子世帯:「夫婦2人と子ども2人」の場合
部屋の種類 親世帯 子世帯
親世帯リビングダイニング 8畳 -
親世帯寝室 6畳 -
納戸 3畳 3畳
子世帯リビングダイニング - 12畳
子世帯寝室 - 8畳
子ども部屋 - 4.5畳×2
合計 49畳(24.5坪)
(坪数換算:1.6~1.8倍) 39.2~44.1坪

駐車スペースはどれくらい必要?

移動手段が車中心の地方はもちろん、都心部でも車の所有は一般的になってきました。当然ながら、家を建てる際も駐車スペースは確保しなければなりません。地方では大人ひとりにつき車1台所有という場合もありますが、ここでは各世帯が1台ずつ所有していると仮定して、駐車スペースについて考えてみましょう。

まず、道路に面して2台分の駐車スペースを確保する場合、一般的に幅12m、奥行き5.2m、つまり約10坪程度の広さが必要です。一方、完全分離型の二世帯住宅で、それぞれの玄関近くにそれぞれ駐車スペースを設けたい場合は、同じ2台でもさらに広い面積が必要となります。「近隣にパーキングがないので、来客用の駐車スペースも必要」など、実際の生活をイメージして、必要な駐車スペースを確保したいものです。

建ぺい率・容積率

家族構成や二世帯住宅のタイプなどから、「これぐらいの広さの家を建てたいな」という目途がついたら、建築予定の土地に希望の広さの家が建てられるか、吟味しなければなりません。土地は都市計画によって「建ぺい率」と「容積率」が定められており、その土地にどのくらいの大きさの建物が建てられるのか規制されています。敷地いっぱいに建物が建てられるわけではないのです。

まず「建ぺい率」ですが、これは土地面積に対する建物面積の割合で、土地の何%を使えるのか表しています。例えば、建ぺい率60%で50坪の土地に建てられるのは、50坪×60%=30坪となり、30坪までの建物が建てられることになります。「面積は30坪だけど、2階建てなら60坪、3階建てなら90坪の家が建てられるの?」と思われたかもしれませんが、ここで「容積率」がかかわってきます。

「容積率」とは、土地に対する延床面積の割合で、各階の合計でどれくらいの広さの建物を建てられるのかを表しています。先ほどの50坪の土地が容積率150%だど、50坪×150%=75坪。つまり、仮に3階建ての家を建てるにしても、1~3階までの床面積の合計が75坪以下にしなければならないのです。

【建ぺい率・容積率について】

  用語の意味
建ぺい率 土地面積に対する建物面積の割合(土地の何%を使えるのか)
(例)50坪の土地に「建ぺい率60%」の場合:50坪×60%=30坪 ※30坪までの建物が建てられる
容積率 土地に対する延床面積の割合(各階の合計でどれくらいの広さの建物を建てられるのか)
(例)50坪の土地に「容積率150%」の場合:50坪×150%=75坪 ※床面積の合計が75坪以下にしなければならない

土地ごとに「建ぺい率」と「容積率」は異なっていますので、同じ広さであっても建てられる家の広さは変わってきます。土地を探す際は、「建ぺい率」「容積率」もしっかりチェックしましょう。

まとめ

二世帯住宅のタイプによって、単一世帯の家と変わらない広さのものから、倍近いものまで、様々です。それぞれに工夫次第でより空間を有効に使えるので、「完全分離型がいいけど、建築予定の土地に収まるかな?」など、気になることがあれば、一度住宅会社に相談してみてはいかがでしょう? 家族みんなが気持ちよく暮らしていける、理想の二世帯住宅をぜひかなえてくださいね。

<連載>二世帯住宅を快適に暮らせる間取り
前編:二世帯住宅、理想の間取りは?需要が伸びている“完全分離型”を徹底解剖!
後編:二世帯住宅、快適に暮らすためにはどのくらいの広さが必要?

(最終更新日:2019.10.05)
※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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