この記事は、約6分で読めます

ここ数年、中古住宅のリノベーション需要が増加を続けています。中古リノベ最大のメリットは、「新築よりも抑えた価格で自分好みの空間を作れること」ですが、そこからもう一歩進んで、さらにお得に、オンリーワンの家づくりを叶えた人たちがいます。倉庫やガレージなど、居住用ではない物件を安く買って手を加えたり、古き良き町家や長屋を再生したり。新築では得られないオリジナリティあふれる空間で暮らす魅力と注意点をご紹介します。

取り壊し寸前の建物を壊さずに活用すれば、地域の活性化や街並みの保存、エコにも繫がる

総務省が発表した住宅・土地統計調査によると、空き家の総数はここ20年で448万戸から820万戸と、約1.8倍も増加。少子高齢化が進んでいることから、今後も空き家は増え続けると考えられます。

その一方で、そうした空き家に使い道を見出そうという動きも出ています。例えば、福井県鯖江市では1,000軒ほどあるという空き家を活用し、サテライトオフィス事業を展開。その結果、市内への移住者が増加していると言います。

また、新潟市中央区ではシャッター通りとなっていた長屋造りの商店街を「沼垂テラス商店街」として再生した例も。パン屋やカフェ、雑貨店、古本屋など約30の店舗が入り、周辺の空き家も管理事務所やゲストハウスなどに転用し、街全体が活気を取り戻しました。

2013年時点の長屋と、生まれ変わった「沼垂テラス商店街」の様子。昭和のレトロな雰囲気を残しつつ、JR新潟駅から徒歩15分という立地も手伝い多くの人が訪れるスポットになった。左/改修前、右/改修後写真

その他にも、倉庫を活用したオフィスや古民家で開いたカフェなど、皆さんも一度は目にしたことがあるのではないでしょうか? 使い道のなかった建物を取り壊すのではなく、リノベーションしながら活用することが、地域の活性化や街並みの保存、廃材を出さず森林伐採も減らせるため、エコにも繫がっています。

倉庫なら、住宅よりも安く、おしゃれに暮らせる? 倉庫リノベのメリットとは?

「空き家を活用しよう」という試みは、実は古くからおこなわれています。中でも有名なのが、アメリカ・ニューヨーク州のSOHO地区。

かつては使われなくなった倉庫や工場ばかりの、荒廃したエリアでした。そんな倉庫街に目を付けたのが、貧しい芸術家やミュージシャン、デザイナーたちの卵。治安も住環境も劣悪ながら、賃料が安く都心に近い立地に着目し、住まいやアトリエとして使い始めたそうです。今では流行の発信地として知られ、地価は急騰。おしゃれなブティックやレストランなどが建ち並び、セレブが暮らす街へと生まれ変わりました。

かつては倉庫街だったアメリカ・ニューヨーク州のSOHO地区。取り壊すしかないと思われていた倉庫を住居として利用する流れは、コンバージョン(用途変更)の原点と言える。(写真はイメージ)

日本でも、都心に近い好立地でも安く手に入りやすい倉庫を活用して、住居にしようと考える人が少しずつ増えています。倉庫は一般的な住宅と比べて天井が高く、間仕切りが少ないため、思いのままに間取り変更できます。梁やダクトが露出したインダストリアルデザインが好きな方にとっては、その無骨さも大きな魅力でしょう。限られた予算で好立地の倉庫を購入し、住みやすくリノベーションをする。そんな方法を、選択肢の一つに加えてみても良いかもしれません。

農具倉庫をコンバージョンし、住居として活用。天井が高く圧倒的な広さの大空間に白い箱のようなロフトを設け、倉庫ならではのインダストリアルな雰囲気を残しつつ、モダンで心地良い空間を創出している
ダイニングテーブルと一体のアイランドキッチンは、長さ5メートル。倉庫ならではのゆったりとしたスペースを活かしてデザインされている
※写真事例は養老の家。提供:AIRHOUSE

古き良き街並みの保全・再生の一助に。町家や長屋で暮らすためにリノベーション

京都や大阪には、レトロで風情のある町家や長屋が数多く残っています。その佇まいに惹かれたことのある方は少なくないでしょう。しかし、耐震性能は現在の基準にマッチせず、防火性にも不安が残ります。

また、現在の木造住宅は材木を金物で接合しますが、例えば町家は伝統工法が用いられ、随所に大工の技が光ります。仕口(しぐち)・継手(つぎて)など木を凹凸に加工して金物を使わず接合する手法を用いているため、熟練の大工でないと補修ができません。不同沈下した柱を根継ぎする必要もあるでしょう。建物の維持・改修はとても大変です。再建築不可の長屋や町家も多く、売却や取り壊しを決断するオーナーが後を絶ちません。

京都の路地には、江戸時代から昭和のはじめに建てられた「町家」が多く残っている
※写真はイメージ

そのため、長屋や町家は減少の一途を辿っています。京都市都市計画局が発表した「京町家まちづくり調査」によると、2008年10月から2010年3月に残存を確認した京町家の数は47,735軒。過去の調査と比較すると、10年間で2,989軒の京町家がなくなっていることになり、年間1.5%のペースで減少している計算になります。

こうした状況に危機感を抱き、保全・再生活動が活発化。それに共感し、「長屋や町家に住みたい」と考える人も増加しています。「利便性よりも、木や漆喰の壁など自然素材のぬくもりに包まれながら暮らしたい」「長屋や町家で住む人同士、昔ながらのご近所づきあいを愉しみたい」といった方が、長屋や町家に手を加え、快適に暮らしています。

町家も長屋も“うなぎの寝床”と称されるように間口が狭く奥行きがある、細長い形状の建物が多いため、間取りや採光の工夫も必要でしょう。しかし、昔ながらの味わいを活かしてリノベーションをすれば、どんな家とも似ていない、古き良き日本が感じられる快適な住まいになります。

リフォームを繰り返しながら住み継がれてきた京町家。老朽化が進むと同時に、本来の京町家らしい面影が失われていた。(改修前の写真)
外観は、本来の町家らしい趣を取り戻した。室内は、屋根裏の梁を見せたり、町家の天井仕様を活かしたりすることで建築当時の町家らしい雰囲気に。キッチンや洗面所などの設備や生活動線は、現代のライフスタイルに合うようにデザインされている。(改修後の写真)
※写真事例の提供は株式会社八清

倉庫を住居とするなら用途変更が必要。居住性能を高めるためのリノベ費用もお忘れなく

倉庫や町家、長屋なら、通常の中古住宅よりも抑えた価格で購入できる可能性が高く、リノベーションによってオリジナリティの高い家づくりができますが、いくつかの注意点があります。

例えば、倉庫を住宅としてリノベーションしたい場合、まずは用途地域の確認が必要です。もし、工業専用地域にあれば住宅への転用ができません。また、住宅ローンの借り入れをする前に、建物の用途変更手続きが必要です。

快適に暮らすために、居住性能も重要です。倉庫や長屋、町家は住宅と比べて安価に購入できる場合が多いものの、十分な断熱・防音性能を備えておらず、配管設備の整備や通気性・採光の配慮も必要になることが多いため、プラスアルファでリノベーション費用が掛かる傾向にあります。トータルで考えて通常の住宅を購入するのとどちらがお得なのか、購入前に検討する必要があるでしょう。

倉庫や、町家・長屋といった古民家で暮らすのは、一般的な住宅と比べて準備に手間が掛かるかもしれません。しかし、手の加え方次第では低コストに、おしゃれで快適な家にできる可能性も秘めています。理想の暮らしを実現させる一手として、倉庫のコンバージョンや古民家のリノベーションを検討してみてはいかがでしょうか?

関連記事

住宅ローンをご検討中の方

この記事の筆者
斎藤若菜 住宅ライター

ラジオパーソナリティを経てフリーライターに。住宅・インテリア・不動産分野を中心として、介護・グルメ・トラベルなどのジャンルでも執筆。リフォームや注文住宅関連の住宅情報誌をはじめ、雑誌、書籍、新聞、インターネットなどのさまざまな媒体で取材・執筆を手掛けている。ARUHIマガジンでは、「住宅購入者ストーリー」などを担当中。

おすすめ記事