住宅ローンのボーナス返済はやめたほうがいい!? その理由とは?

ボーナス返済はデメリットのほうが大きい

次に、ボーナス返済のデメリットです。デメリットとしては、まず先ほど申し上げたように「総返済額が増えてしまうこと」があげられます。

また、それ以上に無視できないのは、「返済が滞ってしまうリスクが高まること」でしょう。

そもそもボーナスの支給額は一定ではありません。また毎年2回支給されるとは限りませんし、業績が悪い年には支給されないこともあり得ます。現在は、公務員だから安心ということもなく、実際にボーナスが大幅にカットされてしまい、私のところに相談にみえた公務員の人もいました。

住宅ローンは返済の期間が、20年30年またはそれ以上と長期にわたるものですから、その期間中に、景気動向や企業業績の悪化によって、ボーナスが支給されないということがあってもおかしくありません。そうなったときに、どうやってボーナス返済分の返済をするのかは大きな問題となります。

住宅ローンは家計の固定費(定期的に出て行くお金)の中で最も高額なものです。その返済計画が狂うと家計収支に大きな痛手を負って、最悪の場合はせっかく購入したマイホームを手放すことにもなりかねません。

もちろん、ボーナス返済を利用していなくても、返済リスクはあります。ですが、ボーナスは景気や企業業績の影響を受けやすいものです。それを返済の原資にすることで、「返済が続けられなくなるリスクが高まる」ということが、ボーナス返済の大きなデメリットといえるでしょう。

ボーナス返済をした場合としない場合の返済額の違いは?

住宅ローンでのボーナス返済についてもう少し詳しく見ていきましょう。ボーナス返済には次の2つの方法があります。

[1]ボーナス月の返済時に毎月返済額を増やす方法
[2]借入額のうち、あらかじめボーナス返済で返済する額を決めておく方法

この2通りのボーナス返済をした場合と、ボーナス返済はしない場合とのシミュレーションをしてみしょう。

3パターンの返済シミュレーション

ボーナス返済[1]は、ボーナス月の返済時に毎月返済額を増やす返済方法です。この場合、ボーナス月は約15万円の返済、その他の月は毎月約6万円の返済となります。

ボーナス返済[2]は、借入額のうち、あらかじめボーナス返済する金額を決めておく返済方法です。ここでは、融資額3,000万円のうち、1,000万円を年2回のボーナス返済で返済し、残りの2,000万円は月払いでの返済として、ともに金利1.0%でシミュレーションしました。その結果、ボーナス月は約17万円の返済、その他の月は毎月約5万6,000円の返済となっています。

なお、ボーナス返済の契約をしても、ボーナス返済はしない場合と比較して、融資額が増えたり、返済期間が短縮できたりすることはありません。

なぜボーナス返済をしたほうが利息は増えてしまうのか?

表からもご理解いただけると思いますが、確かにボーナス月以外の返済額は、ボーナス返済をしない場合より、ボーナス返済をした場合のほうが、毎月2万円以上少なくて済みます。

しかし、ボーナス返済[1][2]の場合とも、しない場合より、若干ではありますが総返済額が大きくなっています。ボーナス返済を利用したほうが、金利の負担が増えてしまうからです。

たとえば、毎月5万円ずつ12ヶ月間返済した場合と、年2回のボーナス月に30万円ずつ返済した場合では、どちらも返済額は60万円です。 ただ、利息額は毎月、元本の残債額に利率をかけて計算します。毎月払いの場合は、コンスタントに元本が減っていきますので、利息額も毎月減っていきます。それに比べてボーナス返済の場合は、年2回の支払いで返済回数が少ないため、返済がない6ヶ月の間に利息が余計に発生してしまいます。

ボーナス返済の金利のかかり方イメージ

もちろん、実際にはボーナス返済を併用しても、毎月返済は行っていきますが、ボーナス月以外の毎月返済額は、ボーナス返済なしの場合よりも少額になるため、トータルではボーナス返済なしの場合よりも利息額が多くなってしまうのです。

もしもボーナス返済が続けられなくなったらどうする?

これから住宅ローンを借りる人に、私がボーナス返済をおすすめしないことはすでにお話しした通りですが、すでに住宅ローンを借りていて借り換えや返済計画の見直しなどの相談にいらした人の中には、ボーナス返済をしている人がいます。

そうした人の中には、金融機関などに勧められるままに、住宅ローンをボーナス返済で返済し始めたけど、これから子どもの教育費や老後の生活資金の準備で家計の負担が増加していくことや、勤務している会社の業績が不透明なことなどから、本当にボーナスに頼って返済していけるのか心配になってきたという人が少なくありません。

実際にボーナス返済を続けていくことが難しくなった場合には、できるだけ早く金融機関に相談して、返済計画を見直す必要がありますが、そうなってしまう前に手を打つことが大切ではないでしょうか。

実際に、ボーナス返済に不安を感じている人はもちろん、今のところ不安を感じていない人であっても、借り換えの相談に来た人にはボーナス返済なしでの借り換えプランをおすすめしますし、返済計画の見直しであれば金融機関と相談してボーナス返済なしの返済プランに変更することをおすすめします。

もちろん、金融機関に相談しても、すぐには返済プランを変更してもらえない場合もありますが、そういった場合には、ボーナス返済分を毎月の給与の中から貯蓄して返済することで自己防衛をしてもらっています。

ただ、この場合でも、ボーナスが支給されたらボーナス返済分の返済額が手元に残るかというと、そこまで毎月の家計を切り詰めるのは難しいのが実情です。ほとんどの場合は、毎月の家計からボーナス返済分として積み立てている金額の補填に回されてしまいます。

そう考えると、住宅ローンの融資額は、ボーナスに頼らず、毎月の家計の範囲で無理なく返済できる額に止めておき、返済が無理な融資は受けないことが大原則です。景気の変動や会社の業績によって、支給額が大きく左右されてしまうボーナスを、住宅ローン返済の原資と考えることは決しておすすめできません。

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(最終更新日:2021.04.30)
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