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住宅購入を考えはじめた時、自分がいくらのローンを借りられるのかは大変重要な問題です。住宅購入の予算は「自己資金」と「住宅ローンの借入額」を合わせた額となるからです。ところが、現在の住宅購入の一般的な流れでは、購入する物件が決まらないと、住宅ローンの事前審査を申し込むことができません。そのため、いくらのローンを借りられるかわからないうちに物件探しをスタートすることになります。

もし、物件探しを始める前に事前審査でローンの借入額がわかれば、予算をしっかりと決めて物件探しのスタートを切ることができます。長い時間をかけて気に入った物件を見つけたのに、結局ローン審査に通らず購入することができなかった、というリスクも軽減されるでしょう。

現状の物件探しの流れは?

現在、各金融機関が行っている事前審査では、提出書類に購入する物件の資料が必須となっています。そのため、“物件が決まっていること”が事前審査申し込みの条件となります。

現状の住宅購入の一般的な流れは、まず気になる物件があれば不動産会社を通して見学をします。その後ローンのシミュレーションや諸費用等の見積もりをしてもらい、物件の申し込みをしてから不動産会社の担当者を通じて事前審査を申し込みます。事前審査に通ったら売買契約を結び、ローンの本審査、ローンの契約、ローンの実行(物件の引き渡し)となります。

こうした流れでは物件を決める前に住宅ローンをいくら借りられるのかを知ることができません。年収に対する返済額の割合でローンシミュレーションを行っても、実際にその額を借りられるかどうかはわかりません。なぜなら、実際の審査では、同じ年収でも人によって信用力は大きく異なる場合があるからです。

たとえば、クレジットカードやカードローン、キャッシングなどの借り入れがある人、車のローンや奨学金の返済状況等によってもその人の信用力は変わります。また、同じ年収であっても基本給など固定給の割合が高い人と、営業実績など歩合による変動が大きい人では借りられる額は大きく変わってきます。さらに、自営業者となると、金融機関がどこまでを安定収入と見なしてくれるかで、実際には返済力があっても希望の額を借りられない場合も多いのです。

現状の物件探しの問題点は?

私はファイナンシャル・プランナーとして、ホームページやセミナー、執筆などで常に住宅購入のスタートは予算診断から、と訴え続けています。しかし残念ながら実際に私のところにご相談に来て下さるお客様の多くは、すでにたくさんの物件を見て気に入った物件が決まってから、最後に予算が心配になって相談に来る方たちです。

これは、お客様の責任ばかりではなく、現状の住宅購入の流れが、物件が決定してからでないと事前審査に出すことができないことも原因です。予算がわからないまま気に入った物件が見つかって、事前審査に出してみたらローンが通らなかった、通ってもそもそも不動産会社に試算してもらった資金計画に無理があった、など多くのお客様が悩みを抱えてご相談にいらっしゃいます。

物件探しのスタートにあたって誰に何を相談したらいいのか、という情報を得るのは大変難しいのが現状です。現状の物件探しの流れでは、不動産会社が物件探しだけでなく、資金計画や金融機関へのローンの申し込みも行います。これでは売り手と資金計画を立てる人が同一となってしまうため、予算が適正かどうかを購入者の目線で適正に判断する人がいなくなってしまいます。予算診断のためには、多くの時間をかけて自分で情報収集をするか、企業に属さないファイナンシャル・プランナーに有料相談をするしかありません。

物件探しの前に事前審査を行うメリットや注意点は?

物件探しの前にローンの借入額がわかれば、不動産会社の担当者を通さず物件探しを始めることができます。そもそも不動産会社の担当者はお金やライフプランの専門家ではありません。不動産を売ることについては詳しくても資金計画や住宅ローンについては苦手、という場合も多いのです。購入後の夢ある暮らしの話しをされて予算をふくらませるのではなく、物件を探す前や不動産業者に相談に行く前に事前審査を行うことで、客観的に自分が住宅にかけられる予算を見極めてから物件探しができます。

また、安定した企業に勤め安定した収入があるサラリーマンであれば、不動産会社の担当者に資金計画を立ててもらっても、予定通りの融資を受けることができるかもしれません。しかし、他にもローンがある、収入が高くても歩合給の割合が多い、自営業者である、転職したばかりである、など、人によって年収は高くても、思った金額の住宅ローンが借りられるかどうかわからない場合もあります。

そんな人こそ、まずは事前審査で自分がいくらのローンを借りられるのかを知ってから物件探しを始めることで、購入までの時間と労力を削減することができるのではないでしょうか。

しかし、逆に不動産会社を通さない自己責任であるがゆえの注意点もあります。事前審査はあくまで借りられる額がわかるだけで、返せる額がわかるわけではありません。同じ年収であっても子どもが小さくこれから教育費などお金がかかるライフステージが控えている方、独身で将来の年金額が少ない方など、人によって今後の人生で住宅ローンの返済以外に準備するお金は様々です。事前審査の結果は、将来にわたって安心な資金計画を補償してくれるものではないことも頭に入れておきましょう。

物件探しの前に事前審査を行うメリットと注意点を整理してみました。

【事前審査からスタートするメリットと注意点】

 メリット  注意点
 住宅ローンの借入額がわかってから物件探しができるため、物件を絞り込んで探すことができる。  事前審査で借りられる額が必ずしも返せる額と一致しない。
 不動産会社主導で資金計画を立てられることなく、ローンの返済額から自分で資金計画を立てることができる。  家族構成や今後のライフプランによって予算は変わるが、事前審査の結果はライフプランを反映した借入額ではない。
 気に入った物件に申し込んでから、ローンが借りられず購入できなかった、ということがない。  事前審査に通れば将来破たんしない借入額とは限らない。
 自営業者、転職間もない人、歩合給が多い会社員など、収入が多くてもいくらのローンを借りられるかが読みにくい人でも安心して物件探しをスタートできる。  事前審査はその人の返済力を審査するもの。物件の担保力がない場合は本審査を通らない可能性もある。

事前審査の結果はあくまで借りられる最高の額です。将来かかるお金をライフプランシミュレーション等で試算して、返せる額から逆算して借りられる額を決めることが重要です。また、事前審査は物件の審査は含まれませんので、建築基準法を満たしていないなど、物件に問題がある場合や事前審査時点の状況と変化があった場合などは、本審査に通らないこともあります。物件選びの段階で注意しておきましょう。

借入可能額からの物件探し

ここまで物件探しをスタートとする住宅購入の流れと、事前審査をスタートとする住宅購入の流れの違いについていろいろと考えてみました。

現状では何の疑問も持たず、家探しと言えばまずは不動産会社やハウスメーカー、マンション販売会社など、売り手側に相談に行く方がほとんどだと思います。今回、こうした流れとは別に、事前審査を入り口として自分で予算を考えてから物件探しをスタートする方法についてお伝えしました。

住宅購入の常識にとらわれず、自分がいくら借りられるのかをしっかりと見極めてから、ライフプランシミュレーションやFP相談等で返せる額を十分に把握し、予算に応じた家探しをスタートさせてみてはいかがですか?

住宅購入のスタートを自分が借りられるローンの額を知ることからはじめるのが、ARUHIの家探し前クイック事前審査サービスです。物件が決まっていなくても事前審査を可能にしたことで、予算に応じた家探しをスタートすることができます。新しい家探しのツールとして活用してみてください。

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この記事の筆者
有田美津子 ファイナンシャル・プランナー

ファイナンシャル・プランナー(CFP)、1級FP技能士、住宅ローンアドバイザー、相続診断士
銀行での住宅ローン相談、住宅販売、損保会社を経て独立。現在は人生と仕事の実務経験を活かし、子育て世代の住宅購入とシニア世代の住替え相談を行う。ライフプランに沿った資金計画から物件の引き渡しまで一貫したサポートが好評。共著・監修に「トクする住宅ローンはこう借りる」(自由国民社)。

50代からの住まい専門FP

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