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家探しをしている方なら誰でも、限られた予算でより良い立地と間取り、住み心地も叶えたいと考えていることでしょう。しかし、実際には「理想の物件を見つけたのに手が届かない」「住みたい街には新築物件が少ない」「親から譲り受けた家を住み継ぎたいものの老朽化が進んでいる」といった、様々な問題が出てきます。そういった悩みを解決するのが「リフォーム」ですが、さらに一歩進んで、デザイン性や住み心地を高めるため大胆に手を加える「リノベーション」が人気です。マイホームの選択肢の一つとして、にわかに脚光を浴びているリノベーションの背景から現状、今後の展望まで、一般社団法人 リノベーション住宅推進協議会事務局の武部さんにお話を伺いました。

中古住宅市場が活性化している理由とは?

――住宅関連の取材を続ける中で、「リノベーション」というキーワードが出てくる機会が、確実に増えていると感じます。なぜ今、リノベーションが脚光を浴びているのでしょうか?

武部さん: 日本は今、価値あるものをつくって長く大切に使う「ストック型社会」へ移行することが求められています。新品にこだわらず、自身の価値観で「いい」と思えるものを、手を加えながら大切に使い、次世代へ引き継いでいくという考えです。

住宅に関しても同様で、価値観が変化しているように感じます。これまでの日本人は大多数の人が、「住宅購入=新築を買う・建てる」という考えを持っていましたし、生涯年収の中で住宅の占める割合がとても大きく、住宅ローンを目一杯借り入れ、生涯にわたって返済を続ける方が多かったのです。

しかし、最近は若い方を中心として、“敢えて中古住宅を購入する方”が増えています。現在は終身雇用や年功序列で昇進する時代ではありませんから、将来の収入が予測しづらく、住宅に対する費用も余裕を持っておきたいという事情があります。

そして、利便性が高い都内の中古マンションを購入し、自分好みにリノベーションをする。新築にこだわるよりも住宅にかける費用を抑えることで、趣味や自分の好きなことに使えるお金が増えて、より豊かな人生を送れることに気づく方が増えているのではないでしょうか?

「リノベーション」の認知度は9割以上。でも理解度が低い?

――リノベーション住宅推進協議会の立ち上げは約10年前とのことですが、当時と現在でリノベーションを取り巻く状況はどのように変化しましたか?

武部さん:リノベーション住宅推進協議会が発足した当時は、一部のデザイン関係者や雑誌編集者など“感度の高い”人が、おしゃれな家づくりの手段として取り入れているイメージがありました。ここ10年で、リノベーション事業に参入する会社は格段に増えましたね。リクルート住まいカンパニーの調査によると、「リノベーション」という言葉の認知度は約9割まで上昇したそうです。

ただし、雑誌やメディアに取り上げられる施工例を見て「何となくかっこよさそう」「おしゃれな家になりそう」というイメージを抱きながらも、リノベーションを他人事のように感じている、一時の流行として捉えている方がまだまだ多い現状です。

――リノベーションに対する認識も、変わってきているのでしょうか?

武部さん:中古住宅を購入してリノベーションを行えば、新築よりも抑えた価格で好立地の物件を手に入れ、住み心地も高めることができます。経済合理性や資産価値の観点でとても優れていますが、まだまだ不動産建築関連の仕事に就いている方など住宅リテラシーの高い方でないと、リノベーションを検討してもらうことができていないように思います。正直なところ、実際に住宅を購入する場面では、まだまだ新築志向が優勢です。

一部のこだわりが強い人だけでなく、「ちょっと自分でカスタマイズしてみたい」「キッチンだけはこだわりたい」といった、手軽にできるリノベーションの魅力も知っていただきたいと思い、活動を続けています。

中古住宅でも安心して暮らせる目安となる、独自の統一規格とは?

――具体的に、どのような活動を行っているのでしょうか?

武部さん:私たちは、「中古住宅でもきちんとリノベーションすれば、新築ほどお金をかけなくても自分好みで快適な住まいを作ることができる」ということを、一人でも多くの方に知っていただきたいと考えています。リノベーションに参入する事業者は増え続けていますが、中古住宅に漠然と感じる不安がネックになっています。そこで、品質確保と情報開示に基づく、優良なリノベーションの統一規格を作っています。区分所有マンションの専有部には「R1住宅」、一棟建物の共用部には「R3住宅」、戸建て住宅には「R5住宅」として、品質基準をクリアした物件に住宅適合状況報告書を提供することで、安心して中古住宅を選んでいただける仕組みになっています。

オーダー(自由設計)リノベーションから買取再販物件まで、さまざまな選択肢が増えたリノベーション

――中古物件のチラシなどを見ていると、時々「R1住宅」の表示を目にします。優良なリノベーション住宅を判断する基準を設け、可視化することによって、リノベーションをより身近に感じていただけそうですね。

武部さん:リノベーションの選択肢が増え、若い世代を中心とした多くの方に関心をもっていただけるようになりました。ご自身で中古物件を購入、施工会社を探してリノベーションをする方はもちろん、業者が中古住宅を購入して手を加え、リノベーション済み住宅として販売する買取再販物件を購入する方も増えました。デザインも間取りもゼロから考えるオーダー(自由設計)リノベーションは注文住宅同様に時間も手間もかかり、ハードルが高く感じられるかもしれません。しかし近年は、パッケージから選んだり、セレクトオーダーをしたりといったカスタマイズ方法で、気軽にリノベーションを楽しんでいただけるようになりました。かかる費用を明確にしやすいことも、支持されている理由ではないでしょうか。

リノベーション住宅は一般的に新築よりもリーズナブルで経済合理性があり、適合リノベーション住宅であれば新築同様に安心して暮らすことができます。新築物件がなかなか出ないエリアでも家探しがしやすくなりますし、新築と比べて購入後に資産価値が下落しづらいので、ライススタイルが変われば売却して住み替えもしやすい特徴があります。しかし、中にはネガティブな印象をお持ちの方もまだいらっしゃいますので、普及活動を続けていきたいですね。

リノベーション・オブ・ザ・イヤーを通じ、リノベの魅力を知って欲しい

2014年総合グランプリ「HOWS Renovation Lab.」(リビタ株式会社)

――リノベーション住宅推進協議会加盟企業の施工事例から優秀作品を選ぶ「リノベーション・オブ・ザ・イヤー」も、普及活動の一環なのでしょうか?

武部さん:そうですね。エントリー後の一次選考は、SNSでの反響数などを元にノミネート作品を選出します。一般の方々に投票に参加していただくことで、リノベーションをより身近に感じていただけるのではないでしょうか。

また、一般の方々だけでなく、リノベーションを行う側にとっても気づきの場になればと思っています。いくらデザイン性に優れ、魅力あるリノベーションを実現できる力量があっても、情報発信が苦手だと作品が誰の目にも触れず、埋もれてしまうこともあります。受賞作品は提供された写真とテキストで決まりますから、魅力ある写真を撮影するにはどうしたらいいのか、プロモーションの上手な会社の技を盗み、切磋琢磨していきたいという狙いもあります。

――1回目の開催から見て、その効果は現れていますか?

武部さん:施主の方が写っている写真や家具の入っている写真は、竣工直後に撮影した写真と比べて生活をイメージしやすく、あたたかみを感じられて共感を呼びますね。回を重ねるごとに、そうしたことを踏まえたレベルの高い写真が増えている印象です。

受賞作品は、写真映えするだけでなく、社会性や新しい視点が盛り込まれているかも重視して選ばれます。

2016年の総合グランプリは、シャッター商店街にテナントを入れる代わりに住居とすることで活路を見出した「アーケードハウス」が、2015年には、駅前にある社宅2棟のリノベーションを通じて街全体のイメージを高めた「ホシノタニ団地」が受賞しています。

 

2016年総合グランプリ「アーケードハウス」
2015年総合グランプリ「ホシノタニ団地」

(参考記事:リノベーション・オブ・ザ・イヤー2015総合グランプリが決定!

(参考記事:「リノベーション・オブ・ザ・イヤー2016」の受賞作品が決定!

古い住宅でも、躯体をしっかりと補強すれば安心して暮らせますし、家族が増えたり、お子様が独立したり、ライフステージが変わるごとに手を加えながら長く住み続けることができます。こうした「住教育」を継続し、1人でも多くの方にリノベーションの魅力を感じていただきたいですね。

リノベーションによって、新築よりも抑えた価格で自分らしく、愛着を持って、長く暮らせる家づくりができます。また、新築マンションは購入した瞬間に「中古物件」となって資産価値が下がります。その点、既に価格が落ち着いている中古住宅を購入してリノベーションを行えば、物件の価値を高めることができます。

住宅購入の賢い選択肢として、リノベーションを検討してみてはいかがでしょうか?

取材協力:一般社団法人 リノベーション住宅推進協議会事務局

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この記事の筆者
斎藤若菜 住宅ライター

ラジオパーソナリティを経てフリーライターに。住宅・インテリア・不動産分野を中心として、介護・グルメ・トラベルなどのジャンルでも執筆。リフォームや注文住宅関連の住宅情報誌をはじめ、雑誌、書籍、新聞、インターネットなどのさまざまな媒体で取材・執筆を手掛けている。ARUHIマガジンでは、「住宅購入者ストーリー」などを担当中。

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