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住宅ローンを賢く返済するためには、「繰り上げ返済」を上手に活用することが大切です。とはいえ、“たまたまボーナスが多かったから”、”少しお金が溜まったから”と無計画に繰り上げ返済をすることはおすすめできません。繰り上げ返済にもリスクがあるからです。リスクを避けて、繰り上げ返済を有効に活用しながら、賢く住宅ローンを返済していくための考え方と、具体的な返済計画の立て方をご説明します。

金利負担がもったいない? 繰り上げ返済は本当に賢い返済方法?

住宅ローンの融資を受ければ、契約に決められた利率で返済をしていかなければなりません。現在、住宅ローンの金利は日本国内で、自動車ローンや教育ローンなどのさまざまなローンと比べても、最も低い金利が適用されているといっていいでしょう。

住宅ローンというと、金利の話以外にも繰り上げ返済が話題になることがよくあります。借金がなくなることは、一見、家計にとっては良いことのように思えますし、借金がなくなれば精神的な不安も減りますから、余計な金利を負担しないために、繰り上げ返済をして、できるだけ早く住宅ローンを完済するというのは、正しい考え方のように思えます。

ですが、本当に繰り上げ返済は家計にとっていいことなのでしょうか。実は、お金の有効な使い方や家計の安定といった視点で考えると、違った答えが見えてきます。

(参考記事:賢く返済! 繰り上げ返済を上手に行う方法とは?

繰り上げ返済をすると損するケースもある

繰り上げ返済をするということは、“手元の現金が減ってしまう”ということです。繰り上げ返済をしても、まだまだ手元に十分な現金が残っているというのであればいいのですが、早く借金を返したいあまりに、手元の現金のほとんどを繰り上げ返済に充ててしまったらどうなるでしょうか。

もし、そんなときに自分や家族の誰かが病気になってしまったり、思うように貯金ができないまま子どもの教育費が多くかかる時期になってしまったりしたらどうでしょう。手元に現金がないからと、新たなローンを組むことになってしまうことも十分に考えられます。

前述した通り、あらゆるローン商品の中で、住宅ローンは最も金利の低いローンです。その住宅ローンを繰り上げ返済したことで、より金利の高いローンを借りなければならないということもあり得るのです。

もちろん、住宅ローンを繰り上げ返済することで軽減された利息額と、たとえば教育ローンを借りて支払う利息額を比べた場合、どちらが有利なのかは、そのケースごとにシミュレーションをしてみないと判断はできません。

しかし、これまで私が実際に見てきたケースや、シミュレーションしてきたケースを考えると、多くの場合は、教育ローンを短期間で完済できる場合を除いて、手元にまとまった現金があっても、住宅ローンを繰り上げ返済せずに、そのお金を教育資金に使ったほうがいいようです。

繰り上げ返済のタイミングも含めた返済計画を立てておく

繰り上げ返済にもリスクがあること理解いただけたかと思います。リスクを避けて、繰り上げ返済を有効に活用しながら、賢く住宅ローンを返済していくためには、「毎月の返済の他にしっかりと貯蓄をしていくこと」が必要です。そして、繰り上げ返済のタイミングも含めて、「しっかりとした返済計画を立てること」が大切です。

具体的にどのような計画を立てておくといいのか、ここで、夫婦と子ども二人の4人家族のAさんが立てた住宅ローンの返済計画を見てみましょう。

<Aさん(4人家族:夫婦と子ども二人)の住宅ローン返済計画>

Aさんは、全期間固定金利型の【フラット35】で3,000万円を、年利1.36%、35年返済で借りることとし、毎月返済額は8万9,812円になります。

また、住宅ローンの返済以外に、毎月4万円ずつ定期積み立てをしていくこととします。ボーナス返済はなしとし、手数料などは考慮しないこととします。

Aさんの年収が600万円とすると、10年間の住宅ローン控除額が合計260万円くらいとなります。この金額は家計支出に計画的に組み込んでおきます。

<シミュレーション例>

Aさん(4人家族:夫婦と子ども二人)の住宅ローン返済計画
住宅ローン 商品 全期間固定型【フラット35】
借入金額 3,000万円
金利 1.36%
返済期間 35年
毎月返済金額 8万9,812円
ボーナス返済 なし
住宅ローン控除額 約260万円(10年間合計)※年収600万円の場合
定期積み立て 毎月4万円

 

繰り上げ返済については、住宅ローン控除が受けられる10年間は行わず、返済11年目末の(132回)と21年目末(252回)に300万円ずつ期間短縮型の繰り上げ返済をして、28年と2ヶ月で完済し、約143万円の利息額を軽減します。

<繰り上げ返済の効果>

 繰り上げ返済の有無  返済回数(返済期間)  利息額  利息額の差
 なし  420回(35年間)  772万992円  143万1,001円
 あり  338回(25年2ヶ月間)  628万9,991円

繰り上げ返済の資金は、もちろん毎月4万円ずつの積立金です。

貯蓄額は10年目末で480万円になり、そのうちの300万円を11年目で繰り上げ返済に使いますが、この年も毎月の積み立てがあるので貯蓄額は228万円となります。さらに、20年目で660万円、21年目末に11年目と同様に300万円繰り上げ返済をしますが、この年も毎月の積み立てがあり、貯蓄額は408万円になります。

二度の繰り上げ返済で、上記のように28年と2ヶ月で完済しますので、返済期間も当初より6年以上の短縮できるということです。

また住宅ローンを借り入れた時から始めた月4万円の積み立ては、30年目で約1,046万円になります。積み立てには保険商品などの金融商品を利用すれは、もっと積立額は増えるかもしれません。

<住宅ローン返済と並行して貯蓄をすると?>

 貯蓄年数(返済回数)  毎月の積立残高  繰り上げ返済の額  備考
 1年目末(12回)  48万円  0円  
 10年目末(120回)  480万円  0円  
 11年目末(132回)  228万円  300万円  貯蓄額528万円から300万円を支出
 20年目末(240回)  660万円  0円  
 21年目末(252回)  408万円  300万円  貯蓄額708万円から300万円を支出
 30年目末(360回)  1046万円  0円  住宅ローンの返済は28年2ヶ月で終了

繰り上げ返済はタイミングが大切

このように、住宅ローン返済だけでなく、積み立てができる余裕を持って住宅ローンを借りれば、子どもの教育資金がかかる時期など、現金が必要な時は数年間、一時的に積立額を減らす調整をしたり、サラリーマンの人で、退職金一時金や公的または私的な年金の受給額がわかれば、それに応じて積立額を増減したりすることもできます。

順調に積立金額が増えれば、予定外の住宅ローンの一部繰り上げ返済や、完済時期の前倒しも現実的なものとなるでしょう。

ただし、繰り上げ返済の効果はシミュレーションをしてタイミングを見極めることが必要です。仮に、住宅ローンの金利より高い利回りで金融商品を運用できる知識があれば、手元の現金を繰り上げ返済よりその金融商品の運用に回した方がよいかもしれません。

つまり、住宅ローンを借りる前から将来の家計の収支をシミュレーションして、タイミングを見計らって繰り上げ返済を実行すれば、有効な繰り上げ返済が実行できるのです。

効果のある繰り上げ返済、効果のない繰り上げ返済

繰り上げ返済は、たまたまボーナスが多かったからとか、少しお金が貯まったとか、無計画に行ってもあまり意味はありません。 たとえば、上で見たAさんが、返済開始後5年目、返済60回目に50万円を繰り上げ返済したとします。すると総利息額は約25万円減額され返済期間は8ヶ月短縮されます。

少し話はそれますが、繰り上げ返済は、返済時期の早い段階で行ったほうが効果があると言われています。たとえば500万円を5年目の最後60回目に繰り上げ返済をしたとします。すると利息は約219万円減額されます。返済期間は28年と4ヶ月になる効果があります。

一方、効果の小さい例もあげておきます。同様に、25年目の最後である返済300回目に500万円を繰り上げ返済した場合、利息は約53万円減額されます。返済期間は29年と11ヶ月に短縮されますが、同じ金額を繰り上げ返済に使ってもやはり早い時期に行ったほうが効果は大きいことがご理解いただけるでしょう。

<繰り上げ返済のタイミングと効果>

 繰り上げ返済の時期  繰り上げ返済額  軽減利息額  返済短縮期間
 しない  0円  0円  
 5年後(60回目)  50万円  24万8,599円  8ヶ月(8回)
 5年後(60回目)  500万円  218万5,876円  6年8ヶ月(80回)
 25年後(300回目)  500万円  53万3,542円  5年1ヶ月(61回)

退職金での一括返済はおすすめできない

繰り上げ返済をする場合、返済時期の早い段階で行ったほうが効果があることをご理解いただくために上記のような例を出しましたが、たとえば、返済開始から5年で500万円も繰り上げ返済できる資金を持っているならば、融資を受ける当初から融資額を減らしておいたほうが、利息の支払額も減るのではないでしょうか。

ここでも住宅ローンを借りるには計画が必要だということを理解していただけるでしょう。

なお、退職金は老後の生活資金であり、現役中の借金の返済に使うお金ではないと考えるべきで、退職金での住宅ローン一括返済は基本的にはおすすめしません。

(参考記事:住宅ローンを退職金で繰り上げ返済しようとしている方の注意点

すでに返済中の人はどうする?

繰り上げ返済の仕方に正解はありません。家計収支が違う環境で、誰しもが同じ方法でできるわけではないからです。

繰り返しになりますが、繰り上げ返済をするには住宅ローンを借りる前から、毎月の住宅ローンの返済計画の他に、繰り上げ返済用の資金積立実行計画も作っておかないと、その時はよくても、後になって教育資金や老後の生活費などに困ってしまうことになりません。

すでに住宅ローン返済中の人は、まずはこれから生涯の家計収支をシミュレーションしてみて、今後、住宅ローンの返済とともにいくらくらいの定額の積み立てができるかをまず算出してみてください。

その上で、無理のない繰り上げ返済計画を立てて実行してみることをおすすめします。

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この記事の筆者
牧野寿和 ファイナンシャル・プランナー

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、日本FP協会CFP(R)認定者
「人生の添乗員(R)」を名乗り、住宅取得計画やローンプラン、相続などの相談業務の他、不動産投資、賃貸経営のアドバイスも行っている。著書に「銀行も不動産屋も絶対教えてくれない! 頭金ゼロでムリなく家を買う方法」(河出書房新社)がある。

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