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子育て世代の住宅ローンは、一般的に10年後から返済がきつくなると言われています。子どもの教育費がだんだんと増えていく一方で、「住宅ローン控除の還付金」や「児童手当 給付金」といった税控除や給付金制度が終了することが原因の一つです。住宅購入時に「まだ子どもが生まれていない」「まだ乳幼児だ」というご家庭は要注意。子育て世代の正しい住宅ローンの借り方をお伝えします。

間違った予算決めに要注意!「現在の家賃=住宅ローン返済額」は危険!

住宅購入を検討し始めた時に、多くの人が最初に起こす行動は、“モデルルームに行き物件を見てみること”です。不動産会社の営業担当者に初めて「返済シミュレーション」をしてもらい、そこで自分のおおよその「予算」をイメージするのではないでしょうか?

返済シミュレーションをする時には、現在の「支払家賃」と「貯蓄額」をベースに借入可能額を試算するケースが多くなっています。例えば、毎月の支払家賃が10万円、1回のボーナスで貯蓄している金額からローンの返済に充てられる金額が20万円というのであれば、これから借りる住宅ローンの返済額は、「(月々返済額)10万円、(ボーナス時加算額)20万円」におさまるように借入額を計算するのです。この時に金利を何%で計算するかが重要ですが、仮に金利1.4%(全期間固定)、返済期間35年・元利均等返済で計算すると、借入可能額はおよそ4,400万円となります。

<月々返済額10万円、ボーナス時加算額20万円におさまる借入額の目安>

 借入額  金利  返済期間・返済方法  月々返済額  ボーナス加算額
 4,400万円  1.4%  35年・元利均等返済  99,432円  199,313円

注意が必要なのは、多くの人が「住宅購入後に増える支出」を考慮せずに、今の家計支出だけで返済可能かどうか判断してしまっている点です。

住宅購入後は、「固定資産税・都市計画税」や「火災・地震保険料」の支払いが新たに発生します。マンションであれば毎月「管理費」「修繕積立金」の他、車に乗る人ならば「駐車場代」の支払いも必要でしょう。子どもが生まれれば、乳幼児の頃はさほどかからなくても、保育園や幼稚園に入園した後は、高校まで公立に進学したとしても、子ども一人あたり毎月3~4万円の教育費がかかります(※1)。

家賃を支払った後に、毎月数万円~十万円以上の貯蓄ができているという人であれば心配は要りませんが、賃貸住まいの今ですら貯蓄が出来ていないという人は「支払家賃=ローン返済額」で試算するのは危険です。

(※1)文部科学省「平成26年度子供の学習費調査」より 私立幼稚園・公立小学校・公立中学校・公立高校の年間平均額を12ヵ月でわると月額3~4万円となる。

購入後10年間は家計収支が黒字と錯覚しやすい危険な落とし穴

厄介なのは、実態は赤字でも、住宅購入後10年間は「住宅ローン控除の還付金」や「児童手当 給付金」といった税控除や給付金により、なんとか家計をやりくりできてしまう家庭も多い点でしょう。

現行の住宅ローン控除制度では、一般住宅を購入する場合、「年間最大40万円、10年間で合計400万円」の税還付が受けられます(※2)。夫婦で4,000万円超をづつ合計8,000万円の借り入れを行い、年収が700万円をそれぞれ超えていれば、夫婦二人で最大80万円の税金を取り戻すことも可能です。

また、子どもがいる家庭では、児童1人あたり毎月1万円、年間12万円の児童手当が受給されています(※3)。

住宅ローン控除で戻ってくる税金と児童手当の給付金を併せると、年間50万円程度の臨時収入が10年間続くケースも珍しくありません。実際に住宅購入した人から、「住宅ローン控除還付金を『固定資産税・都市計画税』や『火災・地震保険の更新料』の支払いに充てている」というのはよく聞く話です。

(※2)国税庁「住宅借入金等特別控除」長期優良住宅の場合は、年間50万円、10年間で最大500万円

(※3)【児童手当支給額】0歳~2歳:月額1万5千円 3歳~中学3年生:月額1万円 ※一定の所得金額を超える世帯は、0歳~中学3年生まで一律月額5千円 詳細は各市町村の児童給付手当をご確認ください

<正しく借りるステップ1>購入後に必要な住居維持費を見込む

住宅ローン控除還付金や児童手当は、できれば将来の為に貯蓄に回したいもの。10年後に支払いがきつくなり、「こんなはずじゃなかった」と後悔しないために、3つのステップで返済可能額を算出してみましょう。

まず、住居維持費については、以下の支出を考慮に入れ、返済可能額を割り出してみてください。

(1)固定資産税・都市計画税
土地と建物の評価額に対して課税されるため、土地の所在地や面積、建物の築年数・構造・面積などにより税額は異なります。世田谷区の駅徒歩10分、土地30坪、延床面積100㎡・築6年の戸建ての例をご紹介すると、固定資産税・都市計画税は年間で約25万円。 新築住宅であれば、戸建ての場合は新築後3年間、マンションの場合は新築後5年間、建物の固定資産税が1/2に軽減されます(※4)。 物件を検討する際には、契約前に固定資産税・都市計画税の金額も確認しておきたいところですが、新築住宅の場合には軽減措置が終了した場合の金額も確認しておくようにしましょう。

 (※4)長期優良住宅の場合は、戸建ては5年間、マンションは7年間軽減される

(2)管理費・修繕積立金・駐車場代・その他共益費(マンションの場合)
特に修繕積立金の値上がりに注意が必要です。5年経過する毎に、2倍・3倍・4倍と値上がりし、20年後には修繕積立金が購入時の5倍になるマンションも珍しくありません。

A不動産のマンションの修繕積立金の推移

 修繕積立金/月額       修繕積立一時金/10年毎 
 1年目~  6年目~  11年目~  16年目~
 6,320円/月  15,710円/月  25,110円/月  30,430円/月  30万円/回

B不動産のマンションの修繕積立金の推移

 1年目~  6年目~  11年目~  16年目~  21年目~     10年毎
 5,770円/月  11,920円/月  19,840円/月  23,370円/月  28,680円/月  28万円/回

老後、年金暮らしとなった時に、高額の管理費・修繕積立金を支払い続けることが可能かもチェックしておくべきです。

(3)リフォーム費用
新築住宅でも入居から10年位経過すると、水道の蛇口やキッチンまわりの設備機器などが故障してきます。日本FP協会の試算では、木造戸建に30年居住した時にかかるリフォーム費用はおよそ690万円。マンションでも、修繕積立金で直してもらえるのは共用部分のみなので、専用部分のリフォーム費用は貯めておく必要があります。

私が普段キャッシュフロー表を作成する時には、10年に1回200万円のリフォーム費用を支出に計上しています。1年あたり20万円程度リフォーム貯金をしておくと急な出費に慌てずに済むでしょう。

<正しく借りるステップ2>今後かかる教育費を把握する

これから子どもが増えることを予定している人は、教育費がかかるようになっても無理なく返済できる金額を試算するようにしましょう。文部科学省が調査している全国の保護者が1年間に子どもにかける学習費の平均を参考に、毎月の支出に計上してみてください。

<進路別1年間の子どもの学習費総額> 単位:万円(円単位四捨五入)

 幼稚園  小学校  中学校  高校  大学
 公立  私立  公立  私立  公立  私立  公立  私立  公立  私立
 22万円  50万円  32万円 154万円  48万円 134万円  41万円  134万円  54万円  105万円

出所:文部科学省「平成26年度子供の学習費調査」「平成27年度私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額(定員1人当たり)の調査結果について」「国公立大学の授業料の推移」 ※学校内でかかる授業料・給食費・遠足代等の費用の他、学校外でかかる習い事・通信教育などの費用も含む。 ※大学は全学部の平均。私立の幼稚園~大学および国公立大学は初年度に別途入学金がかかる。

幼稚園は公立の数が少ないため、私立の場合で試算しておくのが無難です。小学校から高校まで公立の場合、年間学習費は30~40万円台となっており、幼稚園から高校までは子ども一人あたり月額3~4万円程度の教育費の支出を見込んでおくとよいでしょう。一方、大学費用は年収でまかなえない場合がほとんどであり、18歳までに子ども一人あたり400~500万円の大学資金を貯蓄しておくと理想です。

<正しく借りるステップ3>ローン完済後、老後に残る貯蓄を計算する

多くの人は最長の35年返済でローンを組んでいますが、定年退職時の残高を気にしている人はほとんどいません。

漠然と途中で繰り上げ返済すればどうにかなると思っている人が多いですが、実際は子どもができるとなかなか繰り上げ返済はできないものです。事実、住宅ローンを組んだ後、10年後に返済がきつくなって相談にやってくる人は多いですが、同じくらい多いのが定年後に多額のローンが残っている人からの相談です。

借入額を決める時には、必ず定年退職時の残高と退職金・年金見込み額を確認し、一生涯の家計収支の推移を予測したキャッシュフロー表を作成して、老後資金が確保されるか確認して下さい。

まとめ

いかがでしたか? 住宅ローンはおよそ30年という長きにわたり返済が続くものです。子育て世代が住宅ローンの返済で困らないようにするためには、一生涯という長期的な視野で返済が可能かどうかシミュレーションをするようにしてください。

今回ご紹介した教育費の数値はあくまでも全国平均の数値なので、希望するプランやエリアによっては修正が必要です。自分ではなかなか試算できないという人は、ファイナンシャルプランナーなど専門家に相談をしてみてはいかがでしょうか。

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この記事の筆者
平井美穂 ファイナンシャル・プランナー(CFP)

平井FP事務所代表

ファイナンシャルプランナー(CFP)、宅地建物取引士、証券外務員1種
不動産営業を経験後、金融機関に転職し、融資・資産運用相談業務に従事。現在は公正中立な独立系FPとしてコンサルタント・講師業務を中心に活動中。不動産・住宅ローン相談を専門に、家計診断・保険・税制・相続などFPならでは総合的な提案を得意とする。著書:「住宅ローン 借り方・返し方 得なのどっち?」河出書房新社

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