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銀行からノンバンクまで今や数多くの金融機関が、多種多様な商品をラインナップしている住宅ローン。一つの金融機関でも取り扱う商品は複数あり、借り方も「ペアローン」や「ミックスローン」など、実にバリエーション豊かです。今回は、そんな難解複雑な住宅ローンから、世界経済の先行きが不透明な今こそ人気の「ミックスローン」についてご紹介します。

変動金利?固定金利?住宅ローンの正解はどっち?

「変動金利にするべきか?それとも固定金利にするべきか?」住宅ローンを借りる人にとって永遠のテーマですが、正解はありません。なぜなら将来の金利は誰にも分からないからです。

現在、都市銀行の変動金利はおおむね0.625%(※1)ですが、35年固定は1.5%前後となっており、一般的に変動金利は固定金利よりも低い傾向にあります。今、住宅ローンを借りる人が、35年後に返済が終わった時に、金利が1.5%より上がっていなければ「変動金利で借りて正解だった」ということになりますが、1.5%を超えて2%や3%に上がっていれば「固定金利で借りておけばよかった」ということになります。

株価と同じで、今後の金利を予測することは難しく、後から振り返ってみて結果論でしか、正解は言えないのです。

変動金利と固定金利の選択割合は半々

住宅金融支援機構の調査によると、【フラット35】を含め民間の金融機関で新たに住宅ローンを借り入れしている人のうち、変動金利を選んでいる人は約48%、残る約52%は固定金利を選択しています(※2)。新築マンションのモデルルームに行くと、変動金利で試算する営業マンが多く、「みんな変動金利で借りてますよ」などとやたら変動金利をすすめてくる人もいるようです。実際には、マイナス金利導入後、歴史的低金利で借りることができる今、以前よりも固定金利を選ぶ人が増えているのです。

当初返済額が安くなる一方、将来の保証はない変動金利

営業マンの多くが変動金利でシミュレーションをする理由は、ずばり当初の返済額を少しでも安く見せることができるから。 5,000万円を35年・元利均等返済で借り入れする場合、変動金利0.625%で計算すると月々返済額は132.573円ですが、固定金利1.5%で計算すると153,0952円となります(ボーナス時加算は無しにした場合)。「15万円台は手が届かないけど、13万円台ならば自分達にも買えるかも」と考える人もいるでしょう。

確かに、当初の返済額を少なく抑えることができるのは変動金利の最大のメリットですが、将来の金利は保証されていません。もしかしたら10年後に4%に上がっているかもしれず、「絶対上がらない」などということはないのです。

変動金利「5年・125%ルール」は元金が減らないデメリットも

仮に、5,000万円借り入れし、10年後に金利が4%に上がると月々返済額は194,305円となり、0.625%の時と比較すると月々6万円以上も返済額が増えることになります。ところが、多くの金融機関では、変動金利の場合「5年・125%ルール」といって、5年間は返済額を据え置き、次の5年間でも最大1.25%までしか返済額が増えないように調整される仕組みが採用されています。先程の5,000万円を当初0.625%で借り入れし、10年後に4%に上がる例では、10年後の返済額は165,716円までしか上がらない仕組みです。ただし、10年後の金利としては4%が適用されているので、その分元金の減りが遅れているにすぎません。金利が上昇を続け、「5年・125%ルール」が適用され続けた結果、未払い利息や元金の残りが発生した場合は、最終返済時に一括返済することになるのです。実際に1990年のバブルの頃に未払い利息が発生し、返済困難に陥る人が続出しました。

「5年・125%ルール」は急激な返済増加を抑える為に考えられた措置ですが、金利が上昇し続ける局面では、注意が必要なルールです。短期的には金利上昇はないだろうと考えている人でも、長期的には金利がどうなるか予測できない以上、変動金利のこうしたデメリットは理解しておく必要があるでしょう。

参考:変動金利(半年型)の住宅ローンを選んでもいいのはどんな人?

金利の先行きが読めない今、ミックスローンで借りるメリット

「将来の金利上昇はこわいけれど、当初の返済額をおさえられる変動金利は魅力」となかなか答えが出せない人が、最終的に落ち着くのがミックスローンでしょう。

例えば、5,000万円の借り入れをするのであれば、変動金利と固定金利とで2,500万円ずつ2本のローンを組む方法です。全額変動金利で借りるよりも将来の金利上昇に対するリスクを軽減でき、なおかつ全額固定金利で借りるよりも当初の返済額をおさえることができる、一挙両得の裏技です。

5,000万円を変動金利と固定金利で半分ずつミックスローンを利用した場合、当初返済額は月々142,832円となります。

<5,000万円を借り入れした場合の金利別当初返済額の比較シミュレーション>

 借入額:5,000万円  全額:変動金利0.625%  全額:全期間固定金利1.5%  ミックスローン:変動・固定半分ずつ
 月々返済額  132,573円  153,092円  142,832円
 年間返済額(千円単位四捨五入)  159万円  184万円  171万円

※いずれも35年・元利均等返済、ボーナス時加算なし

参考:住宅ローンを「ミックスローン」にするメリットや注意点は?

ミックスローンを利用できる金融機関とは?

ミックスローンを利用出来るのは、原則、変動金利と固定金利の両方の商品を取り扱っている金融機関の場合です。かつて、住宅金融公庫が主流だった時代は、ミックスローンは一般的でした。全期間固定の公庫に第1位の抵当権を譲り、後順位の抵当権で変動金利の住宅ローンを融資する金融機関は多かったのです。現在、他社に先順位の抵当権を譲ってまで住宅ローンの融資をしてくれる金融機関は少なくなっています。

具体的には、都市銀行をはじめ一般的な銀行は、変動金利と数種類の固定金利を取り扱っており、一つの銀行でミックスローンを利用することが可能です。一方、『ネット銀行Aからは借入額の半分を変動金利で融資を受け、残り半分は都市銀行Bから【フラット35】の融資を受ける』といった二つの金融機関を利用したミックスローンは出来ない場合が多いでしょう。【フラット35】と「変動金利商品」のミックスローンを希望する人は、両方の商品を取り扱う銀行やモーゲージバンクなど、一つの金融機関から両方を借りるようにしましょう。

「手数料」「繰り上げ返済」ミックスローンの場合はどうなる?

気になる手数料ですが、ミックスローンはローンの本数が2本以上になるため、1本で借りる場合よりも、印紙代・事務手数料・抵当権設定登記費用など合わせて数万円ほど諸費用が多くかかるケースが一般的です。ただし、最近ではミックスローンにしても印紙代・事務手数料ともに1本分の費用しかかからない銀行などがでてきており、金融機関によって取り扱いはまちまちです。

ミックスローンの利用を考えている人から良く聞かれる質問に、「繰り上げ返済はどちらからするべきか?」という質問があります。リスクのある変動金利から繰り上げ返済をして、固定金利はそのままにしておくという考えもあるでしょう。一方で、繰り上げ返済の利息削減効果は、より金利が高い方が効果が得られるため、金利が高い固定金利から繰り上げ返済するという考えもあります。人それぞれですが、私が金融機関に勤めていた時には、変動と固定金利の差が2%以上開いており、固定金利が今よりも高かったため、固定金利から繰り上げ返済をする人が多くいました。

まとめ

夫婦でローンを組む、注文住宅を建設するために「土地代」「建物代」それぞれに融資を受けるなど、元々ローンが2本以上になる方には相性の良い借り入れ方法です。一人でローンを借りる方も金額が多い場合には、ミックスローンで金利を分けておくと、固定・変動双方のメリットを活かすことができるのではないでしょうか。

(※1)店頭金利2.475%から▲1.85%の優遇を受けた最優遇金利の場合

(※2)出所:住宅金融支援機構「2016年度民間住宅ローン利用者の実態調査(第2回)」対象:2016年10月~2017年3月に借りた1,500件

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この記事の筆者
平井美穂 ファイナンシャル・プランナー(CFP)

平井FP事務所代表

ファイナンシャルプランナー(CFP)、宅地建物取引士、証券外務員1種
不動産営業を経験後、金融機関に転職し、融資・資産運用相談業務に従事。現在は公正中立な独立系FPとしてコンサルタント・講師業務を中心に活動中。不動産・住宅ローン相談を専門に、家計診断・保険・税制・相続などFPならでは総合的な提案を得意とする。著書:「住宅ローン 借り方・返し方 得なのどっち?」河出書房新社

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