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世界一の人口(※1)を誇る大国、中国。隣の国ではありますが、日本と住宅事情は大きく異なり「持ち家がなければ結婚できない」なんて話も耳にします。日本人に比べ、中国人はマイホームへのこだわりがあるようです。また、住居形態の傾向や住宅価格、住宅ローンの借り入れはどうしているかなど、中国にまつわる、様々な住宅事情を探ります。

※1 世界保健統計2016:世界保健機関(WHO)による

中国の住宅事情は、経済政策を通じて状況が一変

中国の住宅事情を知るために、まずは中国の歴史的背景を抑えておきましょう。

かつて、中国の企業は原則国営で、経済活動は国が全てコントロールしていました。努力をしてもしなくても給料はほとんど同じ。私有財産は認められず、国営企業の従業員は勤務先から福利厚生として、住宅を提供される「住宅分配制度」が採用されていました。

状況が変わったのは1978年、鄧小平の指導体制の下「改革開放」と呼ばれる経済政策を打ち出したことがきっかけでした。以降、中国経済は飛躍的な発展を遂げ、住宅に関しても各地で住宅取得に関するルール変更が行われ、個人間売買が認められ始めました。

1998年の「住宅制度改革」により、都市部の住宅は個人間で自由に売買できるようになり、現在では住宅分配制度は完全に廃止されています。

中国都市部で以前から暮らす住民は、ほとんどがマイホームを所有

それでは、現在の住宅事情はどのようになっているのでしょうか。中国の中でも、北京市、上海市、天津市、広州市、深セン市といったエリアは大都市として知られ、教育環境が整い、金融機関や政府機関が集まっているため、居住地としてはとても人気があります。

そうしたエリアで以前から暮らしてきた人々の大半が、マイホームを所有しています。仕事などのために都市部へ来ている方は家を借りることになりますが、中国には賃貸専用の物件が存在せず、日本のように不動産会社が賃貸契約を仲介することもありません。その代わりに、物件の所有者から直接、物件を借りるのです。

中国に根強く残る、農村と都会の戸籍格差

中国人は結婚するにあたって「顔よりもマイホームを重視する 」と言われています。

実際に、マイホームとマイカーがないと結婚できないという認識が一般的です。「夫婦共同で費用を負担する」という考えは少なく、男性はマイホームを購入して初めて「結婚準備ができた」と認められるのです。

こうした考えの背景には、何百年も前から続くマイホーム志向に加え、中国独自の戸籍事情があります。中国には「都市戸籍」と「農村戸籍」があり、「都市戸籍」の方が、社会保障サービスなどが圧倒的に充実しています。

日本のように好きな場所へ引っ越しをすることは許されず、地方から都市部へ働きに出る場合も戸籍は「農村戸籍」のままです。

<中国独自の戸籍事情>

  都市戸籍 農村戸籍
違い もともと都市に住む限られた人たちのもの。社会保障サービスなどが充実 好きな場所へ引っ越しをすることは許されておらず、都市部へ働きに出ても戸籍は変わらない

都市戸籍の有無が、大学進学や就職に大きく影響する

「都市戸籍」は、あらゆる場面で優遇されます。

例えば、北京には北京大学や清華大学といったエリート大学がありますが、単純にテストの点数が高い順に合否を決める訳ではなく、地域格差があります。

北京出身者が6割、その他のエリアが残りの4割といった割合が決められているため、北京以外に住む学生はより高い得点を求められ、高いハードルが課せられます。

高い教育水準の大学に行かせたければ、都市部に住むことが一番の近道なのです。また、就職の際も「都市戸籍」があることを応募条件とする企業が多く、農村出身者にとっては狭き門です。

地方出身者も、北京や天津といった都市部に住む人と結婚すれば、北京や天津の戸籍に登録することができ、もちろん、生まれてくる子どもの戸籍も同様です。そのため、中国人にとってマイホームは特別な意味を持ちます。

中国都市部の平均年収は日本の4分の1以下だが、住宅価格は日本の首都圏と同水準

それでは、中国の都市部ではどんな住宅が購入されているのでしょうか?

「戸建て」と「マンション」を比較すると、圧倒的にマンション購入者が多く、戸建ては富裕層が別荘やセカンドハウスとして買うケースがわずかにある程度です。

中国国家統計局によると、都市部で働く人々の平均年収は日本円で103万円程度(※2)。日本人の平均年収は422万円(※3)ですから、収入は4分の1以下という計算になります。

<年収比較> ※中国国家統計局による

  中国都市部で働く方 日本人
平均年収 約103万円 約422万円

対して大都市にあるファミリータイプのマンションは、不動産バブルと言える状況で価格が高騰しており、約5,000万円前後(※4)。日本の首都圏にあるマンションと同程度で、立地によってはより高額な物件も少なくありません。若いうちにそれだけの財産を築くことは難しく、多くの方が両親に購入してもらいます。

※2 中国国家統計局の2016年のデータ / 2017年天津市薪资水平報告
※3 国税庁の2016年の民間給与実態統計調査 P16
※4 (㈱不動産経済研究所『首都圏のマンション市場動向』

中国で住宅ローン契約を結ぶ場合、購入金額の2.5割以上の頭金が必要!

日本の住宅は借地権が設定されていない限り、土地の所有権とともに購入することになります。

しかし、中国では土地の所有を認められておらず、70年の使用権を認められるのみ。土地は国から借りていることになります。にも拘わらず、物件価格は高騰を続けています。

現金で購入する方も多いのですが、大金を準備できなければ住宅ローンを組むことになります。しかし、銀行で融資を受ける際、これまでは最低3割の頭金が必要でした。

2015年に、住宅支援を目的として2.5割に引き下げられたものの、日本と比べてまとまった現金がないと家を買うことができない状況に変わりはありません。働いていれば、企業と個人がそれぞれ給与の一部を積み立てる「住宅積立金」に加入することで、まとまった頭金を準備することができます。住宅ローンの借り入れは最長20年で、金利は日本よりも高く4.5%程度(※5)です。

※5 2017最新住房贷款利率

日本のマンションと中国のマンションの違い

ここまで、中国特有の住宅事情に触れてきました。都市部ではマンションの購入が活発ですが、建物にはどんな特徴があるのでしょうか? 主だった点を挙げてみましょう。

購入したマンションの仕上げは個別に行う
日本の集合住宅はRC造(鉄筋コンクリート造)が主流ですが、中国では地震が少ないため、ブロックを積み重ねただけの建物も多くみられます。各住戸は間仕切りのない、スケルトン状態で販売されるので、そこから注文住宅のように、思い思いのデザイン・間取りに仕上げることができます。

日本のマンションよりも広め
中国人一人当たりの住宅面積は平均40平米程度。夫婦+子ども1人で90平米(3LDK程度)と、60~70平米程度台が主流の日本よりもやや広めです。

トイレと一体のシャワールームが主流
浴室は、トイレとシャワーが一体となった簡易的なスペース。体を洗う時はトイレのサンダルを履いてシャワーを浴びます。中国のトイレは公共施設では和式が主流ですが、個人住宅ではほとんどが洋式です。トイレは水洗式ですが、トイレットペーパーを流すとすぐに詰まってしまうため、流さずゴミ箱に捨てます。

電気・ガス代は先払い
日本では、電気代やガス代は使った分だけ後で支払いますが、中国では先払い式です(賃貸の場合は大家が前払いし、後日清算するケースもあります)。事前にプリペイドカードへ入金しておき、電気代は玄関外の機械に、ガス代はキッチン下部の挿入口にカードを差し込みます。残金が少なくなってくるとアラームが鳴るため、再びカードにチャージして挿入します。

ビニール製の配水管も現存
日本の排水管は金属製が当たり前ですが、中国にはビニール製の排水管も存在します。金属製と比べて壊れやすく、ゴミが詰まると水が通らずに溢れてしまうことも。また、熱い油を流すと穴が開き、汚水の原因となります。ただし、最近建てられた物件の排水管は、大抵金属製です。

ベランダにキッチンがある!?
日本よりも強い火力で料理を作るため、ガスコンロは換気がしやすい窓側に設置するのが一般的。ベランダに設置すると聞くと驚いてしまいますが、理に適っています。

このように、日本と中国では住宅に対する価値観が大きく異なります。高騰する住宅価格や潤沢な頭金が必要な状況を見ると、住宅購入のハードルが高い印象も受けますし、親に買ってもらうケースが多いという事実に、羨ましく感じる方もいるでしょう。中国の過熱した住宅市場が今後どのような方向に向かうのか、私たちも目が離せませんね。

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この記事の筆者
斎藤若菜 住宅ライター

ラジオパーソナリティを経てフリーライターに。住宅・インテリア・不動産分野を中心として、介護・グルメ・トラベルなどのジャンルでも執筆。リフォームや注文住宅関連の住宅情報誌をはじめ、雑誌、書籍、新聞、インターネットなどのさまざまな媒体で取材・執筆を手掛けている。ARUHIマガジンでは、「住宅購入者ストーリー」などを担当中。

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