トラブルを未然に防ぐ!悪徳不動産業者の見分け方と土地・建物購入時の注意点

不動産会社は日本全国に星の数ほどありますが、架空の物件を掲載する「おとり広告」による客寄せや詐欺を働くような悪徳業者は、そのうちのほんの数パーセントに過ぎません。悪徳業者の特徴や傾向を知ったうえで不動産会社を選べば、悪徳業者に騙されて粗悪な物件を購入してしまう可能性を軽減できるはず。不動産業者と消費者の公正な取引を支える組織「不動産協会・不動産保証協会」に在籍していた経験をもつ業界関係者に、悪徳業者の見分け方を教えていただきました。(不動産保証協会は不動産協会に併設された組織です)

はじめに店内を見回して、雰囲気をチェック

――まずは、ご自身が在籍していた「不動産協会・不動産保証協会」について教えて下さい。

不動産会社を開業するにあたり、宅地建物取引業法の取り決めで、1,000万円の営業保証金を供託することが義務付けられています。不動産取引で購入者が損失を受けた時に損失を弁済できるよう、消費者保護のために定められた決まりです。しかし、不動産会社にとって、1,000万円もの大金を準備するのは大変です。そこで登場するのが、「不動産保証協会」。「全日本不動産協会」と「全国宅地建物取引業協会」のおおよそ2つ協会があり、いずれかの不動産保証協会に加入すれば、弁済業務保証金の分担金60万円の納付で、営業保証金の代わりとすることができます。消費者から見れば、不動産会社に前払いした申込金や手付金、仲介手数料などを請求できる「一般保証制度」や、住宅購入時にトラブルが生じた際の「弁済制度」を適用するための窓口となるのが、不動産保証協会です。取引していた不動産会社が倒産してしまった場合も、1社につき最大1,000万円まで、被害額の払い渡しを受けることができます。

――たくさんの不動産会社と関わってきた経験から、信頼できる不動産会社を見極めるポイントがあれば教えて下さい。

気になる不動産会社を訪れたら、まずは店内を見回して下さい。従業員の服装や言葉遣い、室内の整頓状況など、もし何か引っかかるところを感じたら、直感を信じて取引を見送る勇気を持ちましょう。不動産の購入に関しては、疑り深いくらいがちょうど良いのです。

また、「宅地建物取引業者票」と報酬額の掲示を義務付けられていますので、合わせて確認します。免許証番号は「〇〇知事(数字)第〇〇〇〇号」と記載されており、カッコ内の数字は、5年が経過するごとに更新され、数字が増えていきますから、不動産業務歴を見る一つの目安になります。複数の都道府県に店舗を構えている場合は、国土交通大臣の免許となります。

宅地建物取引業者の情報は、都市整備局などで照会できる

――店内を見回す以外にも、判断材料はありますか?

念を入れるならば、県庁の不動産関係部署(東京都の場合は都市整備局)へ足を運び、業者名簿を見せてもらい、免許状況や懲罰履歴、設立年月日、代表者名、専任の宅地建物取引士の名前を確認しましょう。

不動産業を営む条件として、従業員5人に1名以上の割合で専任の宅地建物取引士を置く必要があります。5人未満の不動産会社でしたら、代表者が資格を持っていることが多いようです。まずは名刺に資格が明記されているかチェックしましょう。実際には勤めていない資格者の名義を借りて登録しているケースなど、宅地建物取引業法に違反している悪質な不動産会社もまれに存在しますので注意しましょう。

契約前に確認したい、要注意な土地・建物の特徴

購入する土地・建物が決まってからも、気を抜くことはできません。契約までに確認しておきたい事項をピックアップしました。

<重要事項説明義務違反>

意外と多いのが、重要事項説明義務違反です。人の死亡に関わる事件があった事故物件の場合、契約前に告知をする義務があります。中には「家賃が安ければ事故物件でも気にしない」という方を1~2年程度住まわせ、更にひどい場合は口止め料も支払い、事故物件であることを隠避する悪質な不動産業者も存在しますので注意しましょう。ちなみに、近所の人に話しかけて情報収集する事も大事です。過去に事件や事故があったとか、トラブルを抱えている、非常識な行動をする人が住んでいるといったような情報を得られるかも知れません。

<瑕疵担保責任を負うケース、負わないケース>

引き渡し後、大雨による浸水や地震による損傷、白アリ被害など、隠れたる瑕疵(欠陥)が見つかった場合、引き渡しから2年間は瑕疵担保責任を負うことが義務付けられています。ただし、個人間売買の場合は「売主は瑕疵担保責任を負わない」という特約も有効です。

【ケース1】瑕疵担保責任でトラブル
中古物件を購入後、近隣の人から過去に火事になったという話を聞きつけ壁を剥いでみたところ、実際に火事を起こしていたことが発覚。調査を進めたところ、新築時の所有者が火事を起こし、告知せずに売却。次の所有者は知らずに購入し、現在の所有者へ売却する際も気づいていませんでした。直接取引をした売主は火事があった事実を知らなかったこと、最初の所有者を突き止め裁判を起こすとなると時間もお金もかかるため、結果的に泣き寝入りするしかありませんでした。

築年数が経った中古住宅を購入する場合は、「売主は瑕疵担保責任を負わない」特約が付いているケースが多いので、契約書類を注意深く読みましょう。また、契約前に建物を入念にチェックすることも大切です。素人では判断が難しいと思ったら、ホームインスペクション(住宅診断)を依頼し、プロに確認してもらうのも手です。

<市街化調整区域>

市街化調整区域には原則として新築住宅を建てることができません。購入したい土地が市街化調整区域の場合は、通常の土地以上に注意をする必要があります。「市街化区域になる予定の土地だから」「今は地価の2分の1だけれども、将来は倍になるから」といった甘い言葉には乗らないようにしましょう。どうしても購入したければ、市街化計画が本当にあるのか、確認が必要です。

<契約前に手付金を要求>

通常、仲介業者を通じて土地・建物を購入する際は、まず契約をしてから手付金を支払います。所有者と買主を会わせないまま、買主に手付金を請求するようなことがあれば、どんなに魅力的な条件であっても取引を考え直した方が良いかもしれません。

【ケース2】土地購入の手付金や、注文住宅の着手金・中間金を着服
とある悪徳不動産業者のケースです。契約前に手付金を要求され支払ったものの、いつまで経っても契約できない買主が相次ぎました。所有者に直接掛け合ったところ、所有者は何も知らされておらず、勝手に売却しようとしていたことが発覚。不動産会社に問いただしても「売主がとぼけているのでは?」と反論し、1年以上経っても手付金は戻らず、土地契約も結ぶことができませんでした。 また、この不動産会社は建築業でも悪行を働いていました。注文住宅を建てる契約を結び、施主から着手金や中間金を受領したものの、一向に工事を進めません。不動産協会に申し立てを行って問いただしても「資材が届かない」「人が足りない」など言い訳を続けるばかりで返金はされず。十数軒が同様の被害に遭い、この不動産会社の代表者は後日、逮捕されました。

今回のケースの被害者は当然、不動産保証協会による損失補填の対象となりますが、1,000万円の範囲内で行われるため、はじめに申し出た1~2人程度の費用しか賄えませんでした。どんなに魅力的な土地でも、契約書のないまま手付金を支払ってしまうことのないようにしましょう。契約を急がせる業者には契約を急いだほうがいい理由を尋ねるなどして不動産業者に問題がないか判断をするようにしましょう。

<地面師の巧みな手口>

「地面師」とは、土地の所有者になりすまして詐欺を働く人たちのこと。他人の土地に「売り物件あり」と勝手に看板を立てるといった大胆さと、不動産業者役と弁護士役、所有者役も用意し、住民票や印鑑証明など必要書類を偽造する周到性を兼ね備えた集団組織です。不動産登記簿がコンピューター化される前に多く見られた詐欺ですが、相場よりも少し手頃な値段設定に惹かれ、騙されてしまう方が少なくありません。

最近、大手ハウスメーカーが63億円を騙し取られた事件が話題となりました。以前も著名なマラソンランナーが被害に遭いかけたことで知られていますが、不動産登記簿謄本を取得した際に「何かおかしい」と気づき、お金を騙し取られることを未然に防ぐことができたそうです。

<建築確認申請を無視した間取り>

注文住宅を建てる際には、事前に建築確認申請が必要です。提出した図面に沿った家を建てて、中間検査や完了検査も受ける必要がありますが、異なる間取りで建ててしまった建築会社も存在します。

【ケース3】購入した1年後に、建築確認申請が通っていない物件であることが発覚
北側に4メートル道路、南側には崖に面した広い道路という立地に数軒の建売住宅を新築。北側玄関で、建築確認申請を提出・受領されたものの、「崖に面した南道路の方が開けているから」と、本来はフェンスを設けることになっていた南側に許可なく玄関を配置し、竣工してしまいました。買主は、建築確認申請と異なる間取りであることを知らないまま購入し、住み始めて1年ほど経ったところで事態が発覚しました。 その後、買主のうちの2名が、「資産価値が著しく下がった」として裁判を提起。勝訴判決となり、不動産保証協会が保証金を支払うことで決着。1,000万円を2名で折半しました。

このケースの場合、中間検査や完了検査をせずに引き渡しをされていました。検査済証が交付されていない物件は手続き上、違反とみなされますので、購入しないようにしましょう。

土地建物購入時の注意ポイントまとめ

<不動産会社を見極める目安>
・従業員の服装や言葉遣い、室内の整頓状況など不動産会社の雰囲気をチェック
・宅地建物取引業者票の免許証番号を見て、業務実績を予測
・県庁の不動産関係部署へ行けば、懲罰履歴の有無を含めたより詳細な情報が分かる

<契約前に確認したいこと>
・極端に安い物件は事故物件かも?事前告知を怠る不動産会社に要注意
・売主の瑕疵担保責任を免除する特約がないか、契約書に目を通す
・市街化調整区域の場合は、市街化計画が進んでいるのか調査が必要
・契約前に手付金などを要求された場合は、正当な理由があるのかたずねる
・事前に不動産登記簿謄本を取得。気になる点がないかチェック
・建築基準法の規定による審査や検査を受けているか確認

「この物件しかない」という思い込みは危険のサイン!

――ここまで、様々な事例とともに悪徳業者や要注意の物件について伺いました。最後に、これから住宅購入を考えている方にアドバイスをお願いします。

物件に惚れこんでしまうと、見えるものも見えなくなり、誤った判断をしてしまいがちです。「これしかない」と思う気持ちを抑え、冷静に対応できるように心掛けましょう。不動産会社に関しても同様で、親しくなり過ぎて、言われるままにならないよう、自分の意思をしっかりと持ちましょう。そのためには、住宅情報誌などを読んで勉強すること、物件をたくさん見学すること、気になる物件を見つけたら朝・昼・晩と時間帯を変えて見学すること、隣近所の方々や、マンションの場合は管理組合に評判を聞くことも大切です。

万が一、悪徳業者に引っかかってしまった可能性がある場合は、一刻も早く対抗措置を取りましょう。不動産協会からの保証は1,000万円までで、申し出順に保証される「早い者勝ち」の仕組みだからです。もっとも、賃貸部門で定期的な現金収入がある不動産会社など、資金力がありしっかりとした会社であれば、トラブルに見舞われても金額を問わず弁済してもらえる可能性もあります。不動産会社の規模や事業内容にも注意して取引を進めると良いでしょう。

(最終更新日:2019.10.05)
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