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この記事は、金融機関で10年以上債権回収業務に携わっている担当者が、住宅ローンを組んだ後、返済できなくなってしまった方の経緯を紹介する全2回の連載コラムです。

夢のマイホームを手に入れた方のほとんどが、住宅ローンを借り入れ、毎月返済を行っています。しかし、中には返済が滞り、マイホームを失ってしまったり、借金地獄に陥ったり、その結果自己破産してしまうケースもあるのだとか。

今回は、金融機関の債権回収業務に10年以上従事する担当者に、住宅ローンの借り入れ後、返済を継続できなくなってしまった方々のエピソードをお聞きしました。

住宅ローンの延滞者になるのはどんな人?

――今回は、「住宅ローンの延滞者」についてお話を伺いますが、ほとんどの方にとって未知なる世界の話だと思います。

はじめに声を大にして言いたいのが、住宅ローンの借り入れをした多くの債務者は、延滞することなく返済を続けています。今からお話しするのは、一部の方のことだということを念頭に置いて下さい。

――延滞者となってしまうのは、どんな方なのでしょうか?

多いのは、“ローンを組んだ当時の仕事を続けられなくなってしまった方”ですね。病気やケガを理由としている人もいらっしゃいますし、不況の折に解雇されてしまい、再就職先が見つからない方、見つかったものの前職からの収入減により延滞してしまう方も多いです。リーマンショックの影響で延滞が発生するケースもありました。

【ケース1】1,000万円もの繰り上げ返済をしていたのに、離婚で債務不履行に

具体的には、どのような事例があるのでしょうか。まずは、離婚が原因で返済不能になったケースからご紹介します。

結婚後、都内のマンションを購入し、夫婦で連帯債務契約として7,000万円程度借り入れ。順調に返済が続き、半年後には1,000万円の繰り上げ返済を実行していました。しかし、5年ほど経つと延滞が始まりました。奥様と電話が繋がり、家庭内別居状態であることが判明。奥様によると、ご主人がお金を管理しているものの、ルーズで困っているとのこと。結局、奥様が弁護士に債務整理を依頼。物件は競売によって処分されました。競売での売却代金では清算しきれなかったため、残債を返済する必要があり、現在も返済中です。

【ケース2】所有権を夫に移しても、連帯債務の責任は消えない

続いて、連帯債務で借り入れていた夫婦のケースです。

埼玉県の中古住宅を購入し、夫婦で連帯債務契約として1,400万円ほど借り入れ。契約面談時にはご夫婦で来店し、1歳になるお子様のことを嬉しそうに話す姿が印象的でした。その後、時々延滞をしながらも何とか返済を続けていた様子でしたが、8年ほど経つと延滞が目立ち始めました。督促のため電話をするも、なかなか連絡がとれませんでしたが、やっと奥様と電話が繋がりました。聞けば、離婚調停の結果、住宅ローンはご主人が支払うことになっているとのこと。奥様の持分はご主人に移し、奥様は既に家を出ているので「自分はもう支払わなくて良いはず、夫が払うべき」と主張されていました。しかし、持分を移しても返済義務は残ります。結局、ご主人も返済不能に陥り、現在は任意売却に向けて手続き中。残債次第では破産を検討するとのことです。

【ケース3】夫の失業~離婚の末、マイホームは任意売却に

ケース3はご主人の失業が原因によるエピソードです。

20代半ばのご夫婦が、富山県で戸建てを購入。2,400万円の借り入れをしたものの、2年後にご主人が失業してしまいました。奥様曰く、就職活動はしているものの働く意欲が見られないとのこと。奥様は離婚してご自身でローンを払う覚悟でしたが、なかなか離婚に応じてくれないとのこと。結局は、ご主人が家を出て行き離婚。しかし、やがて奥様1人でローンを支払うのは難しくなり、元ご主人は返済意識に欠けるため、物件は任意売却で処分することになりました。任意売却は債務者全員の書面での同意がないとできないため、非協力的なご主人の同意を取るのになかなか苦労したようです。結果、任意売却は成立、残債務をかなり減らすことができました。

【ケース4】住宅ローンの延滞は一切ないものの、税金の滞納で自宅を処分

続いては、住宅ローンを一度も滞納したことがない方の、レアケースです。

とある県で住宅を購入し、5,500万円を借り入れ、月々の住宅ローン返済額は20万円超で高額でしたが、延滞は一度もなく支払を行っている方でした。ある日、税金を長期間滞納していたことが原因で、その回収のために自宅を「公売」にかけるという通知が市から届きました。税金の支払は放置していたわけではなく、滞納分の支払方法については税務署と話がついていたそうなので、市とはかなり揉めたようですが、市に押し切られてしまった形。公売代金により滞納税金が支払われた後の、当社での債権回収額はでたった1,800万円でした。当然、高額な残債があり、賃貸住宅に引っ越してからも、毎月お支払いいただいております。

(続き)住宅ローン延滞者の転落人生・後編「ずさんな返済計画と不誠実な対応が引き起こす!」はこちら

<連載>幸せ家族が手に入れたマイホームからの“転落人生”
前編:金融機関担当者が目の当たりにした! 住宅ローン延滞者の転落人生1
後編:ずさんな返済計画と不誠実な対応が引き起こす! 住宅ローン延滞者の転落人生2

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この記事の筆者
斎藤若菜 住宅ライター

ラジオパーソナリティを経てフリーライターに。住宅・インテリア・不動産分野を中心として、介護・グルメ・トラベルなどのジャンルでも執筆。リフォームや注文住宅関連の住宅情報誌をはじめ、雑誌、書籍、新聞、インターネットなどのさまざまな媒体で取材・執筆を手掛けている。ARUHIマガジンでは、「住宅購入者ストーリー」などを担当中。

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