子育て目的の引っ越しの落とし穴。待機児童数だけじゃ分からない実態とは

日本では少子高齢化が進んでいるにもかかわらず、年功序列型の賃金体系の崩壊、非正規雇用者の増加を背景に共働き世帯が増加していることなどから待機児童は増え続けています。実際、厚生労働省が2017年3月に発表した待機児童数状況の途中報告によると、2016年10月1日までの統計は4万7,738人で、2015年10月の待機児童数よりも2,423人も増加しています。こういったことを背景に、待機児童が少ない地域に引っ越すことを考える共働き世帯の方もいるようですが、公表されている待機児童数と実態には差があるケースもあるので注意が必要です。

そもそも待機児童とはどういう定義?

待機児童数は「認可保育施設に利用申請しても入所の順番待ちで預けられていない子どもの数」をカウントしたものです。これまでは、「親が育休中の場合」や「預け先が見つからずに、育児休業を延長して入所待ちをしている場合」「認可保育所に入れなかったために認可外の保育施設を利用している場合」は国の待機児童数には含まれておらず、待機児童に含めるか含めないかは自治体の判断に任されておりました。結果、いわゆる大量の「隠れ待機児童」が存在していたわけです。

実は、政府はこの「隠れ待機児童問題」を解消すべく待機児童の定義を改正。新しい定義では、隠れ待機児童の
【1】保護者が育休中
【2】求職活動を休止
【3】特定の施設のみを希望
【4】自治体が独自で財政支援する施設に入所
という4項目のうち、【1】の「保護者が育休中」の児童も保護者に復職の意思がある場合には、待機児童に含めることとしました。

同時に、預け先が見つからずに育児休業を延長した場合も待機児童として扱うことに変更されました。自治体は2017年4月の待機児童数調査から新基準を順次適用していこととなり、全自治体が新定義を適用するのは18年度からです。その他の【2】~【4】については今後も対象外です。

現状では各自治体が公表する待機児童数は旧基準と新基準とが混在する!

新基準は旧基準よりも厳しくなるので、全体的には待機児童数は増加すると考えられますが(実際に2017年4月時点で定義変更により東京都の待機児童は120人増加しました)、現時点では自治体ごとに順次新基準が適用されていくため、しばらくは新基準でカウントしている自治体と旧基準でカウントしている自治体が混在することになります。つまり、例えば同じ都内でも区によって基準が異なったり、同じ県内でも新基準の市と旧基準の市が混在している可能性があるので要注意ですね。

入園決定率や自治体独自の子育て支援サービスもチェックする!

現状では自治体によって児童数にかなりの差があるので、実際には待機児童数がゼロでも認可保育所に入れない可能性はありますし、逆に待機児童数が多くても入所できる可能性もあるなど、待機児童数だけではその地域の実情はわかりません。

では、何を参考にしたら良いのでしょうか? ひとつは「入園決定率」です。入園決定率は、「新規入園が決定した子どもの数/新規入園を申し込んだ子どもの数」で計算され、どれくらいの割合で認可保育所に入れたのかを把握できます。

たとえ待機児童数がゼロでも入園決定率が低い場合には、もしかすると多くの方が認可保育所に入れずに費用が高い認可外の保育所に入所して認可保育所の空きを待っている状態も考えられますので、しっかりチェックをしたいものですね。

また、「自治体独自で行っている子育て支援サービス」をチェックすることも大切です。 自治体によっては「子どもの医療費助成が高校3年生まで受けられる」、「認可外保育施設や私立幼稚園への入園の補助が受けられる」、「一時保育、子育て相談、子育て講座などの有料の子育て支援サービスに利用できる『子育て応援券』が配布される」など、さまざまなサービスを提供しているところもあります。

認可保育所に入れることももちろん重要ですが、その後も経済的に安心して子育てがしやすい環境にあることを考慮して総合的に住む場所を選ぶことをおすすめします。

(最終更新日:2019.10.05)
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