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債務整理とは、合法的に借金の額を減らすことができる手段で、「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3つの方法があります。もし、住宅ローンの返済中に債務整理をしなければならなくなった場合、住宅ローンの返済に影響はあるのでしょうか。また、マイホームはどうなるのでしょうか。ここでは、それぞれの債務整理の手続き・内容と、実際に債務整理した場合の住宅ローンの取り扱いについてご説明します。

債務整理とは“合法的に借金を減らす手段”のこと

住宅ローン以外にも借り入れが増えてしまい、住宅ローンの返済を続けることがむずかしくなったという話を聞くことがあります。そもそも住宅ローン返済中に債務整理が必要になるのは、収入に見合わない無理な返済額で住宅ローンを借りてしまい、消費者金融などにも手を出してしまうような場合が多いようです。

いきなり厳しいことを申し上げるようですが、ファイナンシャル・プランナーとして、私は、なぜそのような状況になってしまったのか、その原因をご自身が理解しておかないと、一時的に家計を立て直すことができたとしても、将来また同じような状況に陥ってしまう可能性が少なからずあると考えています。

また、すべてのケースにあてはまるわけではありませんが、そのような状況に陥ってしまった場合、無理をして返済を続けようとするよりも、弁護士や司法書士に相談して債務整理の手続きを取ったほうが、再起を考える上ではよいのではないかと思います。

ここで申し上げた債務整理とは、“借金がかさんでしまい、返済の見込みが立たなくなった場合に、合法的に借金の額を減らす手段”です。債務整理には、「任意整理」、「個人再生」、「自己破産」の3つの方法があります。債務整理の手続きを取った場合、住宅ローンはどうなるのか、また、債務整理をしても家を残せるのかどうかに、ご説明しておきましょう。

任意整理した場合の住宅ローンの扱いは?

まずは「任意整理」についてです。実は、債務整理の手続きのうち、最もよく利用されるのがこの任意整理です。 任意整理は、“裁判所が関与しない債務整理の手続き”です。弁護士や司法書士などに依頼して、債権者と返済方法や返済額について交渉し、返済を続けることが可能になるように返済計画を見直す方法になります。

任意整理をした後の住宅ローンと家の取り扱いについてですが、住宅ローンは任意整理の対象となっていませんので、これまで通りに滞りなく返済をしていけば、住宅ローンの返済条件が変わることも、家を失うこともありません。 もっとも、任意整理をしても、住宅ローンの返済が厳しいのであれば、早急に、融資を受けている金融機関に相談して、住宅ローン返済の返済期間を延ばしてもらうなど、善後策を検討してもらうことが必要です。

任意整理のデメリットとしては、信用情報(いわゆるブラックリスト)に載ってしまうので、7年から10年間は新たな借り入れができなくなります。また、あくまでも債権者との交渉なので、応じてもらえない場合もあります。

個人再生しても家を手放さずにすむ?

個人再生」とは、一言で言えば、“裁判所に申し立てを行うことで、債務を減額してもらう手続き”です。住宅ローンを除く債務の総額が5,000万円以下で、将来にわたって継続的に収入を得る見込みがあることなどを条件として、債務額を5分の1(下限100万円)に減額(圧縮)することが認められています。

具体的には、“債務を5分の1にして、それを3年で返済する”という再生計画を裁判所に提出し、それが認められれば、債務が計画書通りに減額されます。任意整理と同様、家は手放さなくてもいいのですが、住宅ローンについては減額されませんので、従来通りに返済をしていかなくてはなりません。とはいえ、住宅ローンの返済は、毎月まとまったお金が家計から支出していくものですから、再生するために、できれば住宅ローンの返済負担を軽減したいという場合もあるでしょう。その場合、次の条件を満たせば、「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」を利用して、返済期間を延長するなど、返済負担を軽減することができます。

(住宅資金特別条項の適用条件)
 ・住宅資金貸付債権、つまり住宅ローン商品で現在融資を受けていること
 ・個人再生の申立人が所有している住宅であること
 ・個人再生の申立人が居住用に利用している住宅であること
 ・床面積の2分の1以上が居住用に利用されている住宅であること

ただし、住宅ローン以外の融資を受けていて、自宅にその抵当権が設定されている場合は、この住宅ローン特則を使うことはできません。なお、個人再生をすると官報に掲載されてしまいます。また信用情報(ブラックリスト)にも5年から10年載ると言われています。

自己破産したら住宅ローンと家はどうなる?

3つ目の方法が「自己破産」です。

自己破産とは、裁判所に「破産申立書」を提出して、破産者と認定されれば、借金の返済義務が全額免除される制度です。自己破産が認められるかどうかは、負債額、収入、資産の額などから総合的に判断されます。

自己破産は、すべての借金が免除されるため、住宅ローンも返済する必要がなくなります。しかし、原則20万円以上の資産はすべて手放さなければならず、当然ながら家も手放さなければなりません。手放した資産は、売却されるなどして換金され、債権者に分配されます。

自己破産した後、家は競売にかけられますが、競売で売られると市場相場の半額から7割くらいになってしまうことがほとんどです。しかし、早めに任意売却をすれば、市場価格に近い相場で売れることや、また引越し費用や退去猶予期間ももらえることもあります。そのため、自己破産しなくてはならない状況になったら、家については、早めに任意売却の手続きをしたほうがよいかもしれません。

なお、自己破産をすると個人再生と同じように、官報に掲載され、また信用情報(ブラックリスト)にも5年から10年載ると言われています

債務整理したら住宅ローンは組めなくなるの?

任意整理、個人再生、自己破産といった債務整理の方法と住宅ローンの関係について見てきました。

簡単に整理しておくと、「任意整理」、「個人再生」であれば住宅ローンに影響はないので家を手放す必要はありません。また、「個人再生」の場合は、住宅ローンの返済計画を見直して返済負担を軽減できる場合もあります。

新規に住宅ローンを借り入れる場合については、上述した通り、債務整理をしてブラックリストに名前が載ると、債務整理後、7年から10年経過するまでは住宅ローンを組むことはむずかしいでしょう。

債務整理後、7年から10年経過すれば個人信用情報からキズが消えて、ブラックリストではなくなるので、その後は、クレジットカードを始めとする新規の借入れができるようになりますし、住宅ローンの申し込みも可能になります。

ただ、冒頭でも申し上げたように、なぜ債務整理をしなければならない状況に陥ってしまったのか、ご自身がその原因をしっかり理解しておかなければ、たとえ住宅ローンの融資が通ったとしても、同じことを繰り返してしまうことになりかねません。このことは十分、認識しておいていただきたいところです。

なお、債務整理の手続きは簡単ではありませんし、その人の債務や収入、資産の状況によって選択すべき方法も違うと思われます。実際の手続きにあたっては、司法書士や弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

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この記事の筆者
牧野寿和 ファイナンシャル・プランナー

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、日本FP協会CFP(R)認定者
「人生の添乗員(R)」を名乗り、住宅取得計画やローンプラン、相続などの相談業務の他、不動産投資、賃貸経営のアドバイスも行っている。著書に「銀行も不動産屋も絶対教えてくれない! 頭金ゼロでムリなく家を買う方法」(河出書房新社)がある。

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