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念願のマイホームを手に入れたと思ったのもつかの間、転勤が決まって「さあ、どうしよう!」と悩む方も多いようです。住宅購入時のご相談では「転勤になったら貸すなり売るなりその時考えるから大丈夫です。」とおっしゃる方が多いのですが、いざ転勤が決まると住宅ローンの仕組みもよくわからず途方にくれてまたご相談に来る方もいらっしゃいます。 今回は住宅ローンを組んでから転勤が決まった時に、困らないための対処法について考えてみたいと思います。

思わぬ転勤の辞令。“単身赴任”か“家族全員で引っ越すか”

転勤が決まった時まず悩むのは、“単身赴任”か“家族全員で引っ越すか”の選択でしょう。一般的には子どもが小中学生の時は「家族全員で引っ越す」というご希望が多いように思います。しかし、ご夫婦共働きである、子どもが私立学校に通っているなど、ご家庭の事情によっては、家族全員で引っ越すという選択肢が難しい場合もあります。

単身赴任などで本人以外の家族は引き続き家に住み続ける場合と、家族全員で引っ越す場合で「家」をどうするか、対処法を考えてみましょう。

“単身赴任”で、家族は家に住み続ける場合

家族が住み続けますので、自宅を売却することも賃貸に出すこともありません。家はそのままなので特に何もしなくてよい気がしますが、年末に住宅ローンの残高の1%が払った税金から戻ってくる住宅ローン減税については注意が必要です。

住宅ローン減税は住宅ローンの契約者本人が住んでいることで受けられる減税です。しかし、転勤などやむを得ない事情で本人が引っ越し、配偶者や子どもなどが自宅に住み続けている場合は、引き続き減税を受けられます。確定申告で住宅ローン減税を受ける場合は、自宅の所在地に配偶者など家族の名前が入っている住民票を税務署に提出して、住んでいることを証明します。会社員の場合は購入後2年目からは年末調整で住宅ローン控除の手続きができますので、会社の手続きに従ってください。

ただし、海外転勤で単身赴任する場合は家族が自宅に住み続けていても住宅ローン減税を受けることができません。住宅ローン減税は減税を受ける年の12月31日に日本に住んでいることが要件となっています。しかし、平成28年4月1日以降に住宅を取得した方は、海外転勤した場合でも住宅ローン減税を受けられるように改正されています。

また、住宅ローン減税の残りの期間があるうちに日本に戻ってきた場合は、再度住宅ローン減税を受けられます。必ず赴任時と帰国時に税務署に所定の書類を提出しておきましょう。詳しくは国税庁のホームページで確認してください。

参照:国税庁HP No1234 転勤と住宅借入金等特別控除等

家族も一緒に引っ越しをする場合はどうなる?

家族全員で引っ越すことに決めた場合、自宅をどうするか悩ましい問題です。売却するのか、賃貸に出すのか、それとも戻るまで時々管理しながら空き家にするのか、数年後の家族を想像しながら決断しなければなりません。

自宅を売却する場合

転勤が長引きそうな場合や子どもの年齢等によってもう今の自宅に戻らない、という場合はせっかくのマイホームですが、「売却」という決断もあります。

しかし、100%住宅ローンで購入、または諸費用分も住宅ローンで今の自宅を購入した人は要注意です。売却価格が住宅ローンの残高を下回ってしまった場合、売却しても住宅ローンを完済することができません。住宅ローンの残高を一括で支払わないと売却そのものができなくなってしまいます。まずは住宅ローン付きで売却できるのかどうかを仲介業者に相談してみましょう。

また、売却するにも仲介手数料等の諸費用が掛かりますし、転勤先の住居のためのお金もかかります。お子さんの転校により新たに準備したくてはならない制服やかばんなど学校まわりのお金も必要になります。そうした諸費用も忘れずに売却、住み替えの資金を考えておきましょう。

自宅を賃貸に出す場合

自宅に戻るかもしれない、収益物件として収入を得たい、といった場合は「売却」ではなく「賃貸」に出すことも考えられます。賃貸に出す場合、まず注意したいのが住宅ローンです。

住宅ローンは本人が住む家を購入することを条件に、低金利など有利に借りられるローンです。家族が引っ越して家賃収入を得ると住宅ローンの条件から外れてしまいます。

金融機関によっては「住宅ローンからアパートローンという少し金利が高いローンに借り換えてください」と言われる可能性もあります。

また、条件によっては銀行以外のノンバンクなどのローンを紹介され借り換えをしなくてはならない場合もあります。どちらにしても借りている金融機関の判断になりますので、契約中の金融機関に賃貸することを相談し、対応策を考えてみてください。

また、賃貸にしてもマンションであれば管理費や修繕積立金は家主負担となります。固定資産税や修繕費もかかり、空室が発生する可能性もあります。「住宅ローン分の家賃が入ればいい」ということではなく、こうした経費を差し引いても長期的に見て家賃収入を得ることが利益につながるのか、熟慮したうえで決断しましょう。

賃貸に出した場合、ローン契約者や家族が住んでいないため、住宅ローン減税は使えなくなります。

空き家として管理する場合

「将来戻るかもしれないが、人に貸すのはいやだ」、または「人に貸して家を汚されたりクレームを受けたりしていやになった」などの理由で空き家のまま管理している人もいます。空き家になると家が荒れますし、防犯上も近隣の人に迷惑がかかる場合があります。しっかりと管理するためには業者を頼むなど余分なコストがかかります。

また、人が住んでいない家に住宅用の火災保険を付けるのは難しいため、火災保険料が高くなったり、そもそも加入しにくくなったりします。

また、ローン契約者が住んでいないため金融機関によってはノンバンクなどの不動産担保ローンへの借り換えや一括返済を打診されることもあります。金融機関には事前に相談しておきましょう。

空き家でも固定資産税などのコストはかかり、管理も大変です。漫然と空き家にしておく、ということではなく、空き家になっている理由を明確にして、できれば賃貸や売却など活用を考えましょう。また、近いうちに戻るのであれば定期的な管理をしっかりとしておきましょう。

<転勤決定後の対処法4パターン>

  単身赴任 賃貸 売却 空き家
選択の理由 子どもの学校や共働きなど いずれは自宅に戻る・収益を得る 自宅に戻らない・終の棲家を別に考える 近いうちに戻る・賃貸に出して家を汚された、クレームが多かったなど
住宅ローン減税 契約者が居住者であれば受けられる 受けられない 受けられない 受けられない
住宅ローン そのまま借り続けられる 金融機関によって扱いが異なる。要相談 売却価格以上のローンが残っていると売却できないこともある 金融機関によって扱いが異なる。要相談
コスト 赴任先の住居のコストがかかる 固定資産税・修繕費・管理費など 仲介手数料や登記・印紙代など 固定資産税・管理費・火災保険
リスク 海外赴任の場合ローン減税が受けられないリスク 空室リスク・家賃値下がりリスク 売却価格により住宅ローンが完済できないリスク 防災・防犯上のリスク

家族のライフプランから対処法の選択を!

上記図では、住宅ローンを組んでから転勤が決まった場合の対処法について、単身赴任と家族全員で引っ越す場合に分けて4つのパターンで考えてみました。いずれの選択をしてもコストもリスクもゼロになるものはありません。

住宅購入時には想像がむずかしいかもしれませんが、転勤の可能性があるならある程度どのような対処法を取るかを知っておくことも大切です。そのうえで実際に転勤が決まった時には、子どもの年齢や夫婦の働き方など5年先の生活まで想像してライフプランを立て、対処法を決めましょう。

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この記事の筆者
有田美津子 ファイナンシャル・プランナー

ファイナンシャル・プランナー(CFP)、1級FP技能士、住宅ローンアドバイザー、相続診断士
銀行での住宅ローン相談、住宅販売、損保会社を経て独立。現在は人生と仕事の実務経験を活かし、子育て世代の住宅購入とシニア世代の住替え相談を行う。ライフプランに沿った資金計画から物件の引き渡しまで一貫したサポートが好評。共著・監修に「トクする住宅ローンはこう借りる」(自由国民社)。

50代からの住まい専門FP

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