この記事は、約5分で読めます

子どもや孫のために少しでも役立つ資金を援助したいと思っても、「せっかくの資金に贈与税がかかったらもったいない」と踏み切れない方も多いのではないでしょうか? 次の世代に上手に資産を移すために、住宅購入時は贈与を受ける最大のチャンスです。シニア世代の資産を若い世代のために有効活用でき、相続対策にもなる住宅購入時の贈与税の制度についてご案内いたします。

住宅購入時の「贈与税」3つの制度

住宅購入時に使える贈与税の制度として「暦年課税」「相続時精算課税制度」「住宅取得資金の非課税贈与」の3つがあげられます。

1.暦年課税

暦年課税は、住宅資金に限らず一人の人が1月1日から12月31日までに110万円を超えて個人から財産をもらった時にかかる贈与税です。これは夫婦間や親子間であっても基本的には変わりません。たとえば、不動産の名義を金銭の授受なしに親から子どもに変更したり、祖母のお金で孫名義の預金をしたりすることも基本的には贈与の対象となるため安易な名義変更はやめましょう。

住宅購入時にも暦年課税を利用すると、110万円までは非課税で贈与を受けられます。110万円を超えて贈与を受けた時の暦年課税の税率は以下の通りです。

<贈与税(暦年課税)の税率>

基礎控除後の課税価格 一般税率(一般贈与財産) 特例税率(特例贈与財産)
~200万円以下 10% 10%
200万円超~300万円以下 15%-10万円 15%-10万円
300万円超~400万円以下 20%-25万円 15%-10万円
400万円超~600万円以下 30%-65万円 20%-30万円
600万円超~1,000万円以下 40%-125万円 30%-90万円
1,000万円超~1,500万円以下 45%-175万円 40%-190万円
1,500万円超~3,000万円以下 50%-250万円 45%-265万円
3,000万円超~4,500万円以下 55%-400万円 50%-415万円
4,500万円超 55%-400万円 55%-640万円

※特例税率:直系尊属(父母や祖父母など)から贈与を受けた人が、財産の贈与を受けた年の1月1日において20歳以上だった場合、特例税率で計算します。

2.相続時精算課税制度

相続時精算課税制度とは、原則として60歳以上の父母または祖父母から財産の贈与受けた時に選択できる贈与税の制度です。相続時精算課税制度を選択したことを申告すると、複数年にわたって2,500万円まで非課税で贈与を受けることができます。そして相続が発生した時に贈与時の時価で相続財産に加え、相続税を計算します。

父母や祖父母の資産を相続が発生する前に非課税で贈与できるため、若い世代が資産を有効活用できます。ただし、相続発生時には相続財産に加えられるため、税金の先延ばしとなることに注意が必要です。

3.住宅取得資金の非課税贈与

自宅を購入または増改築するときに、父母や祖父母など直系尊属から金銭で贈与を受けた場合に一定の要件を満たすと適用される制度です。住宅の契約日(年ごと)、住宅の性能、消費税率によって非課税の金額が異なります。平成29年度の非課税限度額は以下の通りです。

<平成29年度 住宅取得資金の非課税限度額>

消費税率 住宅取得契約の締結日 省エネ等住宅 左記以外の住宅
8%

平成28年1月1日~平成32年3月31日

1,200万円 700万円
10%

平成31年4月1日~平成32年3月31日

3,000万円 2,500万円

※国税庁HP No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税より

以上3つの贈与税の制度のうち、「暦年課税」と「住宅取得資金の非課税贈与」は併用できますが、「相続時精算課税制度」と「暦年課税」は併用できません。制度の適用が受けられるかどうかも細かく要件が定められています。

贈与税の申告をしたのに非課税にならないことも?

自分の思い込みで非課税になると思っていたのに実は適用外だった、ということがないように、制度の利用を考えたら細かい要件までチェックをしておきましょう。

ここでは、「住宅取得資金の非課税贈与」の要件について確認しておきます。

受贈者(贈与を受けた者)の要件

【1】直系尊属からの贈与であること
【2】贈与を受けた者が1月1日時点で20歳以上であること
【3】贈与を受けた年の課税所得が2,000万円以下であること
【4】平成21年から26年までの間に「住宅取得資金非課税」の適用を受けていないこと
【5】親族などから取得した自宅ではないこと
【6】贈与を受けた年の翌年の3月15日までに全額を充てて住宅を取得すること
【7】贈与を受けた時に日本国内に住所を有していること
【8】贈与を受けた翌年の3月15日までにその家屋に入居することが確実であること

新築または取得の条件

【1】登記簿上の面積が50平米以上240平米以下かつ2分の1以上が居住用であること
【2】取得した住宅が建築後使用されたことがない住宅、または築20年以内(耐火建築の場合は築25年以内)
【3】中古住宅の場合は耐震基準を満たしていることを一定の書類で証明できること
【4】上記【2】及び【3】に当てはまらない中古住宅の場合は改修後、贈与を受けた次の年の3月15日までに耐震基準を満たすことを一定の書類で証明できること

増改築等の要件

【1】登記簿上の面積が50平米以上240平米以下かつ2分の1以上が居住用であること
【2】自分が所有し居住している家屋について該当する工事が行われたことを一定の書面で証明されたものであること
【3】工事費用が100万円以上であること

自宅を建てるために先行して購入する土地の分も一緒に贈与を受けることができますが、申告期限である翌年の3月15日までに新築の家屋が建てられていることが要件となります。マンションの場合は引き渡しを受けていることが必要です。

また、登記簿上の床面積が50平米以上240平米以下が要件となります。マンションのパンフレット上の面積は壁の内側の長さで計算しますが、登記簿上の面積は壁と壁の中心の長さから面積を計算します。パンフレットの面積が50平米を超えていても、登記簿上は50平米未満になることもあります。事前に登記簿上の面積をしっかりと確認しておきましょう。

そのほかにも贈与された資金をローンの返済や自宅の名義を親族間で変更するためには使えず、贈与されたお金で住宅を買うことが要件となります。

住宅ローン控除と併用の注意点は?

次に「住宅取得資金の非課税贈与」や「相続時精算課税制度」と住宅ローン控除を併用するときの注意点をおさえておきましょう。

住宅ローン控除は年末のローン残高の1%が払った税金から戻ってくる制度です。高性能の住宅であれば10年間で最高500万円の税金が戻ってきます。しかし、住宅ローンの借入額と「住宅取得資金の贈与額」の合計額が住宅の購入価格を上回ってしまうと、上回った部分について住宅ローン控除を使えなくなってしまいます。

<住宅ローン控除の注意点概念図>

住宅ローン控除の適用は、「住宅ローン借入額+贈与額≧住宅購入価格」となります。

・住宅ローン借入額(このケースでは3,000万円)
・住宅購入価額(3,800万円)から贈与金額(1,000万円)を差し引いた金額(このケースでは2,800万円)

のいすれか低い金額で、且つオーバーしている200万円には住宅ローン控除が適用されません。(上図参照)

「住宅取得資金の非課税贈与」や「相続時精算課税制度」を使った場合、住宅購入価格から贈与の額を差し引いたのちのローン残高に住宅ローン控除が使えます。そのため、事例では3,800万円から1,000万円を差し引いた2,800万円に対して住宅ローン控除が適用されることになります。

まとめ

住宅購入時は贈与を受けるチャンスです。しかし、「暦年課税」と「住宅取得資金の非課税贈与」は併用できますが、「相続時精算課税制度」を使うと「暦年課税」は使えなくなるなどの注意が必要です。また、「住宅取得資金の非課税贈与」と「相続時精算課税制度」は併用できますが、住宅ローン控除はこれらの贈与を差し引いた、残りのローン残高にしか適用できなくなります。

また制度を利用するためには一定の書類を添付して申告が必要で、さらに様々な要件を満たす必要があります。安易に制度を利用できると自己判断せず、住宅購入を考え始めたらまずは資金計画とともに贈与の制度が使えるかどうかを専門家に相談しましょう。

関連記事

住宅ローン情報

住宅ローンをご検討中の方

この記事の筆者
有田美津子 ファイナンシャル・プランナー

ファイナンシャル・プランナー(CFP)、1級FP技能士、住宅ローンアドバイザー、相続診断士
銀行での住宅ローン相談、住宅販売、損保会社を経て独立。現在は人生と仕事の実務経験を活かし、子育て世代の住宅購入とシニア世代の住替え相談を行う。ライフプランに沿った資金計画から物件の引き渡しまで一貫したサポートが好評。共著・監修に「トクする住宅ローンはこう借りる」(自由国民社)。

50代からの住まい専門FP

おすすめ記事