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Q. 自営業の夫と2人の息子(幼稚園児)と暮らす専業主婦です。夫が死亡したら、遺族年金はどれくらいもらえるのでしょうか? 数年前に夫を亡くし、子どもの2人いる従姉は、160万円くらいもらっているというのですが・・・(30代 女性)

●ファイナンシャル・プランナー大林香世さんによる解説

A.遺族基礎年金の年金額は、配偶者と子2人の場合は約120万円。受給できる期間は限られており、年金だけでは生活費や教育費をまかなえないので、生命保険等で備えておくことも大切です。

受給できる遺族年金の種類と死亡一時金・寡婦年金について

小さなお子さんがいると妻がフルタイムで働くのは難しい場合もあり、働き手である夫に万一のことがあった場合が心配になりますよね。遺族年金の制度を確認して万一に備えておきましょう。

下記表1のように、亡くなられた方の働き方や加入していた年金制度によって、受給できる遺族年金の種類は違います。自営業者(国民年金の第一号被保険者。自ら国民年金保険料を支払っている人)が亡くなって、「子」のある配偶者が残された場合には、「遺族基礎年金」が受給できます。ご相談者の場合のように、配偶者と子2人が残された場合には、要件を満たしていれば、受給額は年額で1,227,900円(平成29年度)です。

厚生年金の被保険者(会社員等)が亡くなった場合には、遺族基礎年金に加えて遺族厚生年金も受給できるのに比べると、自営業者が亡くなった場合は、年金額は少なく、受給期間も限られます。年間160万円受給しているという従姉さんの亡くなったご主人は、厚生年金に加入されていたのでしょう。加入していた年金制度が違うと、体験談が参考にできない場合もあるので注意しましょう。

<表1:遺族年金等の種類>

亡くなった人 年金を受け取る人 受給できる年金等の種類
自営業者等
(国民年金の第1号被保険者:国民年金保険料を払っていた人)
18歳未満の子のある配偶者 遺族基礎年金
子のいない配偶者 死亡一時金
寡婦年金
会社員・公務員等
(国民年金の第2号被保険者。給料等から厚生年金保険料を天引きされていた人)
18歳未満の子のある配偶者 遺族基礎年金
遺族厚生年金
子のいない配偶者(40歳未満) 遺族厚生年金
中高齢寡婦加算

なお、自営業者等が亡くなって、子がいない配偶者が遺族となった場合には、一定条件を満たせば、死亡一時金もしくは寡婦年金が受け取れる場合も あります。

<表2:死亡一時金・寡婦年金>

死亡 一時金 国民年金の第1号被保険者として保険料を納めた月数が36月以上ある人が、老齢基礎年金・障害基礎年金を受けることなく亡くなったときに、その人と生計を同じくしていた遺族(1配偶者2子3父母4孫5祖父母6兄弟姉妹の中で優先順位が高い人)が受けられる。死亡一時金の額は、保険料を納めた月数に応じて120,000円~320,000円。
寡婦 年金 国民年金の第1号被保険者として保険料を納めた期間(免除期間を含む)が25年以上ある夫が亡くなったときに、10年以上継続して婚姻関係にあり、生計維持されていた妻が60歳から65歳になるまでの間受給できる。年金額は、夫の第1号被保険者期間だけで計算した老齢基礎年金額の4分の3。

遺族基礎年金の受給要件

遺族基礎年金が受給できるのは、被保険者または老齢基礎年金の資格期間を満たした方が亡くなられた場合です。被保険者が亡くなった場合は、保険料納付済み期間(保険料免除期間を含む)が加入期間の3分の2以上なければなりません。ただし、平成38年3月末日までは、亡くなられた方が65歳未満であれば、「死亡日を含む月の前々月までの直近1年間に保険料の滞納がないという条件を満たせばよいとされています。

つまり、「保険料の滞納」がないことがポイントです。家計が苦しく、保険料を払うのが難しいときには、保険料免除や納付猶予を検討してみてください。保険料を払っていなくても、手続きをして保険料免除・納付猶予になっている期間中に、ケガや病気で障害や死亡といった不慮の事態が発生した場合には、障害年金や遺族年金を受け取ることができます。

<表3:国民年金保険料の免除と猶予>

保険料免除制度 所得が少なく本人・世帯主・配偶者の前年所得(1月から6月までに申請される場合は前々年所得)が一定額以下の場合や失業した場合など、国民年金保険料を納めることが経済的に困難な場合は、本人が申請書を提出し、申請後に承認されると保険料の納付が免除になる。免除される額は、全額、4分の3、半額、4分の1の4種類。
保険料納付猶予制度 20歳から50歳未満で、本人・配偶者の前年所得(1月から6月までに申請される場合は前々年所得)が一定額以下の場合には、本人が申請書を提出し、申請後に承認されると保険料の納付が猶予される。
学生納付特例制度 本人の所得が一定以下の場合、申請により在学中の保険料の納付が猶予される制度。家族の方の所得の多寡は問われない。

遺族基礎年金は、「子のある配偶者」あるいは「子」が対象

遺族基礎年金の支給を受けられるのは、亡くなった方と生計を同一にしていた「子のある配偶者」もしくは「子」です。支給額は、子が何人いるかで決まります。なお、この場合の「子」とは、「18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子」または「20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級に該当する子」を指します。

<表4:遺族基礎年金の年金額(平成29年度) 子のある配偶者が受け取る場合>

779,300円+子の加算額
子の加算額

第1子・第2子 各224,300円
第3子以降 各74,800円

「子」がいなくなると、遺族基礎年金は受けられない

遺族基礎年金は「子」が年齢条件を満たさなくなると受けられなくなります。 ご相談者のようにお子さんが2人いる場合には、第1子が18歳の年度末を迎えるまでは年額1,227,900円受給し、その後は「子1人」なので、1,003,600円を第2子が18歳の年度末を迎えるまで受給できます(平成29年度価格)。その後、配偶者が公的な年金を受け取れるのは、障害年金を受給することにならなければ、自分自身の老齢基礎年金や老齢厚生年金の受給が始まる65歳以降ということになります。  

このように、自営業者の方が亡くなった場合、「子」のある配偶者は遺族基礎年金を受給できますが、その金額は、夫亡き後の生活費や教育費等をまかなうのに十分な額ではなく、受給できる期間も限られています。万一の際の資金不足を、生命保険等で補えるか、確認しておきましょう。

また、資金不足は、働いて収入を得ることでもカバーできます。子育てが一段落したら、あるいは、万一のことがあったら、どんな働き方ができ、どれくらい収入が得られるかを考えておくことも、万一の際への備えになります。

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この記事の筆者
大林香世 ファイナンシャル・プランナー

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、日本FP協会CFP(R)認定者

ライフプランから見て無理のない住宅購入計画やローンプラン、保険や相続、資産運用などの相談支援業務を行っている。各種セミナー講師、新聞・Webサイト等へのコラム執筆でも活動中。

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