住宅ローンの担保って何? 抵当権はどうして必要なのかFPが解説

住宅ローンは非常に大きなお金を借りるものですから、個人の信用だけで融資を受けることはできません。そこで必要になるのが、「担保」と「抵当権」です。住宅ローンの契約を結ぶ際には、この2つについて金融機関からの説明があるはずですが、一般の人にとってはなかなか馴染みのない言葉ではないでしょうか。住宅ローンに対する理解を深めるためにも、担保と抵当権について理解しておきましょう。

住宅ローンの担保とは?

住宅ローンを借りる時に必要になるのが「担保」です。「担保とは何か?」と聞かれた時、何となくわかっているけれど、うまく説明できないという人もいらっしゃるでしょう。

「担保」を辞書で引いてみると、『債務者が債務を履行しない場合に備えて債権者に提供され、債権の弁済を確保する手段となるもの。物的担保と人的担保とがある』(デジタル大辞泉)とあります。

これを住宅ローンに当てはめてみましょう。「債務者」とは、住宅ローンを借りた人のことで、「債権者」とは住宅ローンを貸し出す金融機関です。また債権とは簡単に言えば借金のことで、ここでは住宅ローンを指します。

つまり、担保とは、「住宅ローンを組んで住宅を購入した人が、ローンを返済できなくなった場合に住宅購入者の代わりにローン返済をするための手段として、あらかじめ金融機関に提供されるもので、物的担保と人的担保のふたつがある」ということになります。

人的担保、物的担保とは?

まだ分かりにくいと思うので、もう少し具体的に見てみましょう。

【人的担保】

まずは、「人的担保」です。これは、住宅ローンを借りた人(債務者)がローンを返済できなくなった場合に備えて、あらかじめ特定の第3者に、代わりに返済することを保証させる制度です。

人的担保には、「保証人」「連帯保証人」「連帯債務者」の3種類があり、それぞれ責任の度合いは違っていますが、いずれにしろ、債務者本人の返済が滞ると、金融機関はこの人たちに返済請求を行います。

「保証人」は返済請求に応じる義務はありませんが、「連帯保証人」「連帯債務者」は「保証人」より強い返済義務があり、債務者に変わってお金を返していくことになります。

保証人になってくれる人がいない場合は、保証料を支払うことによって、保証会社が連帯保証人になる制度があります。

なお、【フラット35】では、保証人は必要ありません。

【物的担保】

次に「物的担保」について見てみましょう。

これは、債務者がローンを返済できなくなった場合に備えて、金融機関が融資を回収できるように、融資の対象となった不動産(土地や建物)を返済の手段として確保しておくものです。もし、返済ができなくなった場合は、担保となっている不動産を競売にかけ、融資した額を回収することになります。

なお、「人的担保」では、その保証人の職歴や収入・勤続年数や資産などが、また「物的担保」では、その不動産物件の価値が、住宅ローンの審査の対象となり、融資額を決める参考になります。

抵当権とは何か、なぜ必要なのか?

不動産を担保にする場合、「この不動産を担保にします」と宣言するだけでは認められません。担保にする証しとして、金融機関はその不動産に「抵当権」というものを設定します。抵当権とは、債務者が住宅ローンを返済できなくなった時に、担保となっている不動産を売却して融資したお金を返してもらえる権利のことです。

担保となる不動産に抵当権を設定するためには、「抵当権設定契約」を結んで、法務局で抵当権設定登記を行う必要があります。抵当権設定契約は、住宅ローンを借りるために、金融機関と「金銭消費貸借契約」を結ぶ時に同時に結びます。

ちなみに抵当権は、1つの不動産に1件しか設定できないわけではありません。担保としての価値が認められれば、抵当権は重ねて設定することができます。ただし、その場合、抵当権には順位がつけられます。

先ほどお話したように、ローン返済ができなくなった場合には、担保となった不動産を競売にかけて、その代金をローン返済にあてるのですが、複数の抵当権が設定されている場合、順位がついていないと混乱が生じてしまいます。他の人の借金を返すために、自分が担保にしている不動産を売られてしまうわけですから、混乱が生じてしまうのは当然ですね。

そこで、複数の抵当権を設定する場合には、抵当権を登記した順に、第1順位、第2順位と順番がつけられるのです。仮に、不動産が競売にかけられた場合には、第1順位の抵当権を設定している人の借金から優先的に弁済されます。そのため、金融機関によっては、第1順位でないと融資をしないところもあります。

住宅ローンの他に借り入れが必要になったら?

住宅ローン以外にも、不動産を担保にして借りることのできるローンがあります。それが、「不動産担保ローン」です。自宅や投資用物件、本人だけでなく配偶者や実父母などが所有している不動産を担保にして、「不動産担保ローン」を借りることができる金融機関もあります。

住宅ローンは自分が住むための住宅を購入する目的でしか利用できませんが、「不動産担保ローン」は、原則、使い道が限定されません。たとえば、教育資金や家族の病気や介護などの費用に幅広く利用できるものです。

不動産が担保のため、金利は低めで、返済期間も15年から35年と長めに借りることができます。借り入れ限度額は、担保となる不動産の評価額の6~7割程度となっています。

ただし、不動産を担保にするために、抵当権の設定費用や事務手数料などの諸経費がかかったり、保証料や団体生命保険に加入が必要になったりするケースもあります。これらの規定は金融機関によって対応が異なっていますので、実際に借り入れをする際には金融機関に直接確認をしてください。

住宅ローンを利用している物件でも担保にできる?

担保にする不動産が自宅以外にない場合、まだ住宅ローンの返済が残っていれば、住宅ローンを借り入れした金融機関の抵当権が残っています。その場合、不動産担保ローンを借りることはできるのでしょうか。

この場合、金融機関によっては、不動産に第2順位で抵当権を設定することで融資をしてくれるところがあります。ただし、その場合でも担保に余力があることが必要になります。

担保となる不動産の価値は有限です。ですから、金融機関はその不動産の価値を査定評価して、融資の上限額を決めるのです。

たとえば、Aさんの自宅を査定したところ、融資の上限額が1,500万円と判断されたとしましょう。この場合、Aさんが返済中の住宅ローンの残債も1,500万円であれば、担保に余力がないということで、新たに不動産担保ローンを利用することはできない場合もあります。

逆に、不動産の価値が高いと評価されれば、持ち主の返済能力を超えた額を借り入れすることができる場合もあります。住宅ローンは、融資を受ける人の返済能力を超える金額を借り入れることはできませんので、ここは大きな違いといえるでしょう。

とはいえ、貸してもらえるからといって返済能力を超えた額を借り入れするべきではないのは、改めて言うまでもないでしょう。

無担保ローンとは? どんな目的に利用できるの?

住宅ローンにしろ、不動産担保ローンにしろ、融資を受けるには「担保」が必要なローンです。しかし、「無担保ローン」は文字通り担保なしで融資を受けることのできるローンです。

無担保ローンの代表的なものとしては、利用限度額内で借り入れや使い道も自由な銀行のカードローン、消費者金融のキャッシングやカードローン、クレジットカードのキャッシングなどがあります。また、住宅関連の無担保ローンを扱っている金融機関もあります。

では、なぜ無担保でお金を借りることができるのでしょう。この場合に金融機関が担保としているのは、融資を受ける人の「返済能力」と「信用」です。したがって、借りる人の職業、勤続年数、持ち家の有無、さらには信用情報機関でいわゆる「ブラックリスト」に載っていないかどうかを調べます。そして、その人を信用してもよいか、いくらまでならお金を貸してもよいかを判断して融資の可否を決めているのです。

この無担保ローンのメリットは、審査と融資までのスピードが速く、最短即日で融資を実行する会社もあることです。

一方、デメリットとしては、担保がない分、最大で年利18%と金利が高いことですし、返済ができなくなった時には、不動産などの「物」で差し出す担保がないため、自己破産を余儀なくされることです。

ここで、無担保住宅ローンの融資条件について見てみましょう。融資の限度額は1,000万〜2,000万円、返済期間は15〜20年、また、金利も変動、固定金利ともに通常の住宅ローンより0.7から1.7%くらい高めの金利が設定されています。

先ほど、住宅関連の無担保ローンを扱っている金融機関もあるとお話ししましたが、通常の住宅ローンは組めない別荘などのセカンドハウスや、住宅のリフォーム、中古物件の取得や住宅ローンの借り換えを検討している方向けのローンといえます。

なお、借入額や諸経費によっては、不動産ローンよりも無担保ローンの方が条件がよい場合もありますので、まずは比較検討することをおすすめします。

担保が必要なローンであっても、無担保ローンであっても、融資を受ける前には、完済できるかどうかシミュレーションをすることが必須です。そして、少しでも返済が難しいと思った場合には、融資を受けずにすむ方法を考えることが得策といえるでしょう。

最新金利での住宅ローンシミュレーション【無料】はこちら>>

(最終更新日:2019.10.09)
※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
~こんな記事も読まれています~

この記事が気に入ったらシェア