相続した不動産はどう運用した方が良い? お金をかけずに処分する方法は?

Q. 相続した不動産を運用したい。運用が無理な場合は、お金をかけずに処分したいが、その方法を教えてほしい(60代/男性)

親の持ち家を相続。不動産をどう運用する?

不動産を相続されたということですが、筆者のもとにも、親の家を今後どうすればいいか? といった相談が舞い込むことがあります。お話をお聞きしてみると、親の土地家屋を相続したものの、どうしたらよいかわからず、ただ保有しているだけという人も多いようです。

相続した不動産をどうするかは、立地や不動産の性質、相続人の有無などで大きく異なるため、ここでは以下のような条件で考えていきましょう。

【前提条件】
相続人:息子である60代男性が単独で相続。相続人は別の土地にマイホームを所有している
相続する不動産:親の持ち家、築30年木造一戸建てとその土地
希望:不動産を運用、もしくは売却したい。ただし、借金はしたくない。また、処分の際もできるだけお金をかけたくない

大前提として「お金をかけたくない」という要望がありますね。その上で「運用」「売却」「処分」3つの選択肢をご紹介します。

アパート経営以外で、駐車場などの運用方法もある

不動産の活用というと賃貸物件を思い浮かべることが一般的かもしれません。実際に低金利の今、建築費や初期費用を借り入れて「アパート経営」を行う事例も多いです。

住宅ローン程ではありませんが、不動産投資ローンもかなり低い金利で借り入れできるようになっています。しかし、物件にそこまでの広さがない場合や、今回の相談者のように現金支出や借り入れに抵抗がある、という方はどうすればいいでしょうか。

そんなときには、次のような初期投資が比較的軽微な運用も視野に入れてみてはどうでしょうか。

・駐車場
・駐輪場やバイク専用駐車場
・レンタルコンテナ
・自動販売機

これらの選択肢は土地を更地にする費用は掛かりますが、事業自体の初期費用はかなり低くてすみます。また、構造物を建てるわけではないので、後で気が変わって土地の売却や不動産投資を始めるときにも方向変換しやすいです。

売るとしたらいくらくらいになりそうか?

まずは売却益が出るのか、売れる見込みがあるのかを知りたいところです。売却価格の相場を知るには、近隣の不動産物件の売値を見る、路線価を国税庁のサイトで調べるなどの方法があります。

より具体的に知りたい場合や、思ったより価格が低そうな場合は不動産会社に直接相談に行くといいでしょう。

一定の価格で売却できそうな場合には、以下のような制度や基礎知識を知っておきたいところです。

家付きで売るなら「住宅ローン控除」の適用要件に注意

以前は、売却時には更地にするのが一般的でしたが、近年は中古住宅を購入してリノベーションしたいという需要もあります。そこで、更地にする費用を抑えるために、「空き家付き」で売却することを考えてみましょう。

その場合、確認しておきたいのは、“売却する不動産が住宅ローン控除の適用条件を満たしているか“という点です。

そもそも、築20年以上の木造家屋は住宅ローン控除の適応を受けることができません。そのため、築20年以上の空き家を売却する場合は、売り主が解体することを見込んで、解体費用分だけ価格を抑えた売値を設定するか、多少諸経費が発生しても解体して更地で売りに出すかを選択することになります。自分の手間や資金と、買い手の需要を考えて決定しましょう。

ちなみに、解体費用の目安は床面積や地域によっても差がありますが、概ね坪単価で2〜4万円程度とされています。なお、解体費用は売却にかかる諸経費として扱われるため、譲渡益から差し引くことができます。

更地でも使える、「空き家に対する3,000万円特別控除」

もう1つ知っておきたいのが「空き家に対する3,000万円特別控除」です。

これは、相続発生から一定期間であれば、売却益から3,000万円を控除できるという特例です。マイホームではない不動産を売却したときは、譲渡益に対し15~30%の高い所得税率(保有期間により税率は異なります)が課されるため、この控除が適用されるかどうかは非常に重要です。

適用されるための主な条件は以下の通りです。

・相続日から起算して3年を経過する日の属する年の12月31日までの売却であること
・被相続人が居住していた家であること
・昭和56年5月31日以前に建築された家屋(区分所有建築物を除く)であること
・相続から売却の時までに、事業や賃貸などで利用していないこと
・空き家を売却する場合は耐震性を有すること(耐震性のない空き家の場合は耐震リフォームをすれば可能)

相続した日から売却するまでの期間に制限がかけられていますので、売却を検討している場合はタイムリミットを過ぎないように気をつけましょう。

また、一時的にでも事業や賃貸を行うと本特例は適用できません。期限内の売却を考えているならば、土地活用は避けた方がよさそうですね。

希望通りに売れそうに場合は?

売れる見込みがなさそうな場合や、想定される売却価格が予想以上に安い場合にはどうすればいいでしょうか。

その場合でも、不動産の所有権は放棄できないため、たとえ売却価格より諸経費が高くなってしまっても売ることをおすすめしたいです。自治体へ寄付をするという方法もありますが、これはあくまで自治体が寄付を受けいれてくれた時の話です。自治体としても土地は大事な税収源ですので、手放しに寄付を受け付けてくれるわけではありません。

たとえ売却価格が低くても、今後ずっと保有し続けるならば、固定資産税だけでも大きな負担になるでしょう。利益を出すことよりも、損を最小限に抑える方向で売却先を探してみましょう。

売却時に留意すべき点は多いですが、基本的に売却価格を吊りあげることは難しいところです。そのため、諸経費をどこまでかけるか、売却価格をいくらくらいに設定するか、といった収支の基準を設けておくことが大切と言えるでしょう。

この終始基準は、販売活動の状況を見ながら、不動産業者のアドバイスを受けながら、柔軟に変更することをおすすめします。場合によっては利益が出ないこともあるかもしれませんが、そういう時は保有コストも含め、「手放すメリット」も考慮してみてはいかがでしょう。

相続不動産は、マイホームを購入する時のように場所を選ぶことできません。限られた条件ではありますが、複数の運用手法を比較検討する、売却時の制度を利用するなどして、少しでも有意義に活用したいですね

(最終更新日:2019.10.05)
※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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