この記事は3分で読めます

住宅ローンの利息負担を軽減するには、繰り上げ返済をうまく活用するのがひとつの効果的な方法ですが、どんなときでも繰り上げ返済を行えば有利、というわけではなさそうです。繰り上げ返済のメリット・デメリットについてみてみましょう。

  • 繰り上げ返済をすることで得られるメリット

繰り上げ返済とは、定期的な返済以外に、手元の資金で住宅ローンを返済することです。

返済資金はローン元金部分に充てられるので、それに対応する利息の負担がなくなり、結果、トータルの利息負担が軽減されるのです。

期間短縮型の繰り上げ返済の場合には、さらにローンの完済年齢時期が早くなるため、「ローンにかかる利息軽減効果」と「退職後のローン返済負担を軽減すること」が繰り上げ返済の主なメリットといえるでしょう。

実際に、期間短縮型の繰り上げ返済をした場合の効果を確認してみます。

<現在のローンの状況>

当初借入金額3,000万円 返済期間30年 全期間固定金利型 金利1.2% ボーナス返済なし

10年経過した時点で、約200万円の繰り上げ返済をする前提。繰り上げ返済手数料は無料。

<期間短縮型の繰り上げ返済を実施した場合>

当初借入金額 3,000万円
ローン残高
2,117万2,662円
残りの返済期間
20年
金利
1.2%
毎月の返済額
9万9,272円
当初残返済総額
2,392万5,334円
繰り上げ返済額
197万7,000円
繰り上げ返済効果
65万2,794円
繰り上げ後の残期間
17年11ヶ月

上記のシミュレーションの通り、繰り上げ返済をすることで確かに利息軽減の効果が得られることが分かります。

ただし、繰り上げ返済を実行すると手元資金が無くなりますし、期間短縮の繰り上げ返済では毎月の返済額が減るわけでもありません。

さらに、この効果を実感できるのは、住宅ローンを完済後、つまり約18年後となります。では仮に、繰り上げ返済資金の200万円を活用して18年間運用したらどうでしょうか?

運用することで軽減利息を上回る運用が可能であれば、繰り上げ返済をするよりも有利となります。もし、200万円を18年間運用したらどうなるのかも見てみましょう。

<200万円を18年間運用したらいくらになる?>

利回り
18年後の元利金合計
1%
239万2,000円
1.5
261万5,000円
2%
285万6,000円
2.5
311万9,000円

※税金や諸費用などは考慮せず。また、複利で運用したと仮定。

繰り上げ返済をした場合の効果が約65万円ですから、2%程度で運用ができれば繰り上げ返済に資金を回すよりも有効とも言えます。

現在のように金利水準が非常に低い状況下では、繰り上げ返済をした場合の効果も以前よりは少なくなるので、“最終的に手元資金が多くなるのはどのような方法か”を踏まえて繰り上げ返済計画も立てることが必要ですね。

  • 繰り上げ返済のデメリットは?

 次に、繰り上げ返済をするデメリットについても見てみます。

その1)繰り上げ返済した資金は返ってこない。

もちろん余裕資金で繰り上げ返済をするのであれば問題ありませんが、早く返そうと焦るあまりに生活資金や将来の教育資金となるべき貯蓄まで繰り上げ返済に回して、予想外の出費でお金が必要になったときに、使える資金が手元にないのでは困ります。

結果、教育ローンを利用したりするのでは本末転倒ですので、まず、しっかり将来のライフプランを明確にし、緊急予備資金・教育資金など手元に残しておくべき資金以外の余裕資金で繰り上げ返済をすることが大切です。

また、最近は手数料無料で少ない金額からいつでも繰り上げ返済できる金融機関が増えてきましたが、ネット以外の環境では手数料がかかるケースや変動金利型と固定金利型では手数料が変わるケース、金額によって手数料がかかるケースなど金融機関によってさまざまです。

こまめに実施して手数料がかかると、その分繰り上げ返済効果も減ってしまうので、コストとメリットの兼ね合いも考えて計画をたてましょう。

その2)団信の保障期間が短くなる、ローン控除が受けられなくなる可能性がある

住宅ローンを借り入れする際に団信に加入している場合(民間ローンでは必須、【フラット35では任意】)、期間短縮型の繰り上げ返済をすると、短縮された期間分だけ保障が受けられる期間も短くなります。

毎月少しずつ繰り上げ返済をしている場合には、あまり問題はないかもしれませんが、注意すべきは繰り上げ返済を使って「一括完済」したときです。

住宅ローンを組み、団信に加入したときに保険の見直しをしており、死亡保障を減らしていた場合などで、一括完済した後に契約者が死亡した場合、手元資金がないうえに十分な保障が得られず、残された家族が生活に困る可能性もあります。

万が一の場合、団信がなくても十分な生活資金が手元にあるか、という保障の観点からも考える必要がありますね。

また、住宅ローン控除を受けるには、返済期間が10年以上の住宅ローンであることが条件なため、期間短縮型の繰り上げ返済をして結果的に返済期間が10年未満になったケースでは、住宅ローン控除が受けられなくなるので注意が必要です。          

その3)退職金で一括完済する際の注意点 

定期的な収入がなくなった後も住宅ローンの返済が続くのは不安ですので、退職金で残りのローンを一括完済する人は非常に多くなっています。

もちろん、返済が続く不安から解放されるメリットはありますが、無理して退職金をつぎこんで繰り上げ返済をした場合、「病気やケガの場合の備えが減る」「団信の保障がなくなる」「もし、繰り上げ返済をした直後に契約者が死亡した場合に、残された家族の生活資金が少ない」というリスクもあります。

繰り上げ返済の効果は、借入当初早いうちに行うほど効果が大きく、残りの返済期間が短い時期に一括完済を行っても大きな利息軽減効果が得られません。

無理に退職金でローンを一括完済するよりも、手元に資金を残して返済を続ける方が効果的なケースもあるので、繰り上げ効果をきちんと明確にしたうえでどちらが有利か検討しましょう。

繰り上げ返済といえば有利な面だけがクローズアップされがちですが、現在の低金利時代で以前よりも繰り上げ効果が薄れている中では、必ずしも絶対的に効果的といえないケースも多くなっています。自分にとっては、繰り上げ返済が効果的なのか、そのほか有利な方法があるのか、いつどのように実行すると効果的か、リスクも踏まえて総合的に考えたいものですね。

●関連記事
住宅ローンの繰り上げ返済、そのお金はどこから出した?
賢く返済! 繰り上げ返済を上手に行う方法とは?
借り換えや繰り上げ返済をしたら、住宅ローン控除はどうなるの?

最新金利での住宅ローンシミュレーション【無料】はこちら>>

住宅ローン情報

この記事の筆者
金子千春 ファイナンシャル・プランナー

千春コンサルティング事務所 代表
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、1級ファイナンシャル技能士、宅地建物取引主任者、住宅ローンアドバイザー

新生銀行を経て2004年より独立。ライフプランや住宅ローンセミナー、個別相談、宅建講師、企業の従業員向け投資教育、小中学校や児童館での金銭教育など、「知らないで損をする」ことのないようにという観点から、講師や執筆を中心に活動中。

おすすめ記事
"