[FPが解説]自営業の夫、国民年金の支払いが滞るとどうなる?

Q.自営業の夫と、1歳の子どもとの3人家族です。家計が厳しく、国民年金の保険料支払いが滞りがちなのですが、まずいでしょうか?(30代前半/女性/専業主婦)

国民年金から給付されるのは「老齢年金」だけでなく、「障害年金」や「遺族年金」もあります。国民年金保険料を払っていないと、万一のときに、公的な年金を受給できない場合があります。

家計が厳しい場合には、保険料支払いの免除や猶予の制度の利用を検討してみてください。

日本年金機構 公的年金の種類と加入する制度

国民年金保険料に未納期間があると、年金が受け取れない可能性があります。老後の年金が受け取れない可能性はもちろん、いつ起こるかわからない“障害”や“死亡”といった万一の際に「公的年金」が受けられない可能性もあります。
「公的年金」は、老齢・障害・死亡の3つにまとめて備えられる制度。受給できる年金額や、受給するための保険料納付の条件、保険料納付が難しい場合に利用できる制度についても確認しておきましょう。

・日本年金機構 公的年金の種類と加入する制度
http://www.nenkin.go.jp/service/seidozenpan/shurui-seido/20140710.html

自営業者等の受給する公的年金

自営業者等の国民年金の第1号被保険者は、条件を満たせば、「障害基礎年金」「遺族基礎年金」「老齢基礎年金」などが受給できます。

表1のように、老齢基礎年金は保険料納付済み期間によって年金額が異なりますが、遺族基礎年金や障害基礎年金には、保険料納付済み期間による年金額の違いはありません。

<表1:年金等の種類と年金額>※金額は平成28年度価格

  年金額  
障害基礎年金 1級:97万5,125円
2級:78万100円
子※1の加算:2人目まで1人につき22万4,500円、
3人目以降7万4,800円を加算
一定の保険料納付要件を満たす人が、病気やけがで所定の障害状態になったとき
遺族基礎年金 配偶者が受給する場合:
子1人目100万4,600円
 2人目122万9,100円
   3人目以降1人につき7万4,800円加算
一定の保険料納付要件を満たす人が死亡し、生計を維持されていた、「子のいる配偶者」もしくは「子」が残されたとき 
子が受給する場合:
子1人目78万100円
 2人目122万9,100円
 3人目より1人につき7万4,800円加算
老齢基礎年金 20歳から60歳まで40年間保険料を納付した場合で78万100円。保険料納付済み期間に応じて減額される  25年(平成29年8月からは10年)以上の受給資格期間※3を満たす人が、65歳になったとき
寡婦年金※2 妻が60歳~65歳まで
夫の老齢基礎年金の3/4の額
婚姻期間10年以上の夫が死亡し、夫が老齢基礎年金を受け取れる条件を満たしていたとき
死亡一時金※2 一時金:
12万円~32万円
保険料を3年以上納めた人が年金を受け取らず死亡したとき

(※1 子・・・18歳になった後3月31日を経過していない子、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の子
(※2 遺族基礎年金を受けられない場合に受給できる。寡婦年金と死亡一時金のどちらも受給できる場合は選択制。
(※3 受給資格期間・・・「保険料納付済み期間」「保険料免除期間」「合算対象期間(任意加入できたのに任意加入しなかった期間などで、受給資格期間には反映されるが、年金額の計算には反映されない期間)」を合計した期間

障害基礎年金・遺族基礎年金の保険料納付要件

公的年金を受給するためには、保険料納付要件を満たす必要があります。
障害基礎年金と遺族基礎年金の保険料納付要件は、表2のように、ほぼ同様です。注目したいのは「保険料納付要件」といいつつ、「保険料免除期間」も対象となること。免除については後述しますが、同じ保険料を払わないとしても、「未納」と「免除」では大違いなのです。

<表2 障害基礎年金と遺族基礎年金の保険料の納付要件>

障害基礎年金 遺族基礎年金
・保険料納付済み期間と保険料免除期間が、保険料を納めていなければならない期間の3分の2以上あること。
もしくは
・初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと(初診日が平成38年3月31日までにあるとき)
・保険料納付済み期間と保険料免除期間が、保険料を納めていなければならない期間の3分の2以上あること。
もしくは
・死亡日において65歳未満であり、死亡日の属する月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと(平成38年3月31日までに死亡した場合)

家計が厳しければ「保険料免除」「保険料猶予」の手続きを

 国民年金保険料を払うのが難しい場合には、「免除」や「猶予」の制度が利用できないか検討しましょう。「免除」や「猶予」の手続きをしていれば、年金を受け取る権利は失われません。

また、免除や猶予を受けていて、家計に余裕ができたら、10年以内であれば「追納(後払い)」できます。追納した保険料納付期間は、老齢基礎年金の年金額の計算に反映されます。

なお、未納の場合も保険料をあとから支払えます。通常、年金保険料を納めることができる期間は2年ですが、平成30年9月までは、過去5年以内の未納期間について、保険料を納めることができます。

<保険料免除制度(申請免除)>

所得が少なく本人・世帯主・配偶者の前年所得(1月から6月までに申請される場合は前々年所得)が一定額以下の場合や失業した場合などで、国民年金保険料を納めることが経済的に困難な場合に、申請書を提出し、承認されれば保険料の納付が免除になります。

免除される額は、全額、4分の3、半額、4分の1の4種類があります。
保険料が免除された期間は、定められた割合で老齢基礎年金の年金額に反映されます。

<保険料猶予制度>

20歳から50歳未満の人で、本人・配偶者の前年所得(1月から6月までに申請される場合は前々年所得)が一定額以下の場合には、申請書を提出し、申請後に承認されると保険料の納付が猶予されます。学生の場合には、学生納付特例という制度もあります。
保険料が猶予された期間(かつ追納しなかった期間)は老齢基礎年金の年金額には反映されません。

公的年金は、老後の生活資金準備というだけでなく、障害や死亡といったいつ起こるかわからないリスクへの備えにもなります。家計が厳しい場合には、放っておいて「未納」にせずに、免除や猶予といった制度を活用しましょう。

(参考)日本年金機構 保険料を納めることが、経済的に難しいとき
http://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/menjo/20150428.html

(最終更新日:2019.10.05)
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