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住民票は、その人が実際に住んでいる住所が記載されています。しかし、住宅ローンを借りる場合、まだ住んでいない新居の住民票が必要になる場合があります。なぜ新居の住民票が必要になるのか、また実際に住んでいない住所に住民票を移すことができるのでしょうか。なお、「マイナンバーカード」で住民票の異動手続きができるようになりましたが、ここでは役所の窓口での手続きをご説明します。

住宅ローンを借りるには、新住所の住民票が必要

住宅ローンの審査が通って、実際に融資を受ける際には、ローンを申し込んだ人と金融機関との間で金銭消費貸借契約(金消契約)を結びます。

そして、契約時の必要書類として、金融機関から「新住所での住民票」が求められることをご存知でしょうか。

金融機関ではさまざまな融資(ローン)商品を扱っていますが、なかでも住宅ローンは、他のローンと比べると最も金利が低い商品と言われています。

住宅ローンの金利が低い理由は、「居住用」、つまり融資を申し込む本人が住む住宅を購入するためのローンとして優遇されているからです。

そのため、金融機関はその住宅にローン申し込み者本人が住むことを確認する目的で、新住所での住民票を求めてきます。

したがって、改築や建て替えのために現住所で融資を受けない限り、今住んでいるところとは別の住宅ローンを借りる新住所の住民票が必要となるわけです。

住民票を異動させるタイミングはいつ?

住宅ローンの審査が通ると、金融機関から金消契約の案内が届きます。

ローンの申し込み者は、その案内にしたがって必要書類の準備をするのですが、その必要書類の中には、

・「新」住所の住民票
・「新」住所での印鑑証明書

が含まれています。(すべての金融機関が、新住所での住民票を求めるわけではなく、現住所 の住民票でも手続きができるところもあります)

ですから、住宅ローンの融資を受けるためには、金消契約を結ぶ前に新住所に住民票を異動させなければなりません。

ちなみに、印鑑証明書には住所が記載されていますので、住民票を新住所に異動するのと同時に印鑑証明書についても住所変更の手続きが必要です。

なぜ新住所での住民票が必要なのか?

とはいえ、まだ引っ越していない新住所に住民票を異動することはできるのか、疑問に感じられた方もいらっしゃるでしょう。

それについては後述することとして、なぜ金消契約を結ぶ際に新住所の住民票が必要なのか、もう少し詳しく見てみましょう。

具体的な理由は、次の3つです。

1.住宅ローンの申し込み者本人が居住することの証明
2.登記にかかる手間と費用を減らすことができる
3.登録免許税の軽減措置を受けることができる

(1)については、冒頭でご説明したように、住宅ローンは申し込み者本人が居住する住宅に対して行うものであるため、居住の証明として住民票が必要になります。

また、購入者つまり住宅ローンの申し込み者にとっても、新住所で金消契約を行った方が、現住所のままで融資を受けるより、手続きの手間や費用面で有利になります。

それが、(2)登記にかかる手間と費用を減らせる、(3) 登録免許税の軽減措置を受けられる、という2点なのです。

登記にかかる手間と費用を減らすことができる

金消契約を結び、金融機関から融資が実行されて住宅の購入費の決済が終わると、購入者に住宅が引き渡され、所有権の移転登記が行われます。

たとえば、不動産会社が売り主の場合、住宅の所有権は不動産会社が持っています。そこで、その所有権を不動産会社から住宅購入者に移す「所有権移転登記」が必要になります。

所有権利の移転登記を行う際に、すでに住民票が新住所になっていれば、新住所での登記を行うことになります。そして、登記完了後に自宅に「登記識別情報通知書」が届き、その記載内容に間違いがなければ完了です。登記を行うのは1回ですみます。

ところが、旧住所(住宅購入前の住所)のままで、「所有権移転登記」を行うと、どうなるでしょうか。その場合の登記の流れは、次のa~dのようになります。

  • a.旧住所の住民票の提出
  • b.旧住所での「所有権移転登記」
  • c.新住所へ住民票の異動
  • d.住宅の登記情報の新住所へ「登記名義人表示変更登記」

このように、登記がbとdの2回必要になります。不動産の登記を行う際には、登録免許税という税金がかかりますから、旧住所で所有権移転登記を行うと手間もお金も余計にかかることになってしまうのです。

ちなみに、住所変更の登記を行う場合、1000円の登録免許税がかかります。また、登記手続きを司法書士に依頼した場合には、司法書士へ支払う報酬(1〜2万円程度)も必要です。

旧住所の住民票だと登録免許税の軽減措置が受けられない?

次に、登録免許税の軽減措置について見てみましょう。
まず、もう少し詳しく登記についてお話ししますと、住宅購入時に必要な登記は次の4つです。

  • ・土地の所有権移転登記
  • ・建物の所有権移転登記
  • ・建物の所有権保存登記(新築の場合)
  • ・抵当権設定登記

所有権移転登記は、土地と建物について個別で行います。新築の場合には「建物の所有権保存登記」も必要です。

また、住宅ローンは住宅を担保に融資されるものなので、金融機関の抵当権設定登記も行われます。

これらの登記にかかる登録免許税について、自身が住居するために土地や家屋を購入した場合には、広さなど一定の条件を満たしている場合には軽減される制度が、登録免許税の軽減措置です。

この軽減措置を受けるには、購入者自身の居住するための住宅であることを証明しなければなりません。そして、その証明のために新住所の市区町村で「住宅用家屋証明書」を発行してもらう必要があります。

また、この住宅用家屋証明書に記載された住所が、登記をしたことを証明する法務局発行の「登記事項証明書」に記載された住所と合致していなければなりません。

なお、住民票を新住所に移さなくても「申立書」を添付することによって、「住宅用家屋証明書」を発行してくれる市区町村もあるようですので、現住所で登記をしたい方は、事前に市区町村の担当窓口に問い合わせてみてください。

<参考>
「土地の売買等に係る登録免許税の特例」(財務省のHPより抜粋)
平成29年3月31日までの時限措置として、土地の売買による所有権の移転登記係る登録免許税の税率について、次のとおり軽減。

登記の種類 本則の税率 特例

土地の売買による所有権の移転

2.0% 1.5%

「住宅に係る登録免許税の軽減措置」(財務省のHPよりより抜粋)
自己の居住の用に供する家屋について、その家屋を新築・取得した場合における所有権の保存・移転登記又はその家屋の取得資金の貸付け等を受けた場合における抵当権の設定登記に係る登録免許税については、平成29年3月31日までの措置として、次のとおり軽減。

登記の種類  本則税率  住宅に係る特例  
対象住宅 特例税率
所有権の保存登記 0.4% 個人の住宅の用に供される床面積50㎡以上の家屋 0.15%
所有権の移転登記 2.0%

・個人の住宅の用に供される床面積50㎡以上の家屋
・中古住宅の場合は、築後25年以内(木造は20年以内)のもの又は一定の耐震基準に適合するもの 

0.3%
抵当権の設置登記 0.4% 0.1%

※土地の特例・住宅の軽減措置の制度とも、平成29年(本年)の4月以降延長の予定です。

引っ越し前に住民票を異動することはできるの?

ではここで改めて、まだ引っ越していない新住所に住民票を異動することができるかどうかについて見てみましょう。

結論から申しますと、まだ住んでいない住所に住民票を異動することは、住民基本台帳法違反になりますが、慣例として行われているのが実態です。

金消契約を結んだ後、速やかに新居に入居するのが一般的であり、新住所に住民票を異動した後、何カ月もの間、引っ越しをしないままでいるというケースは、まずないため、黙認されているのではないかと考えられます。

ただし、市区町村の住民票の窓口で、「まだ引っ越しはしていませんが、住民票を新居に異動します」と正直に言って手続きをしようとすれば、窓口の職員はその届けを受けつけてくれないでしょう。

また、異動の手続き後、自治体からの郵便物は新居に配達されますので、新居に引っ越すまでは旧住所への配達してもらうよう、郵便局に依頼する手続きをとっておきましょう。

以上のように、住宅ローンの契約にあたっては、新住所に住民票を異動してから手続きをしたほうが、住宅購入者にとって手間や費用の面でメリットがあります。

金融機関によっては、金消契約の必要書類として、単に「住民票」「印鑑登録証明書」とだけ案内される場合もありますので、新住所で手続きすることのメリットについて知っておいていただくといいのではないでしょうか。 

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この記事の筆者
牧野寿和 ファイナンシャル・プランナー

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、日本FP協会CFP(R)認定者
「人生の添乗員(R)」を名乗り、住宅取得計画やローンプラン、相続などの相談業務の他、不動産投資、賃貸経営のアドバイスも行っている。著書に「銀行も不動産屋も絶対教えてくれない! 頭金ゼロでムリなく家を買う方法」(河出書房新社)がある。

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